その先
左、右、右…凄まじい速さで繰り広げられる蹴りや殴り合いの数々。それをかわし、次の一手に繋ぐ両者の思考と動体視力はもはや常人のものではない。
「そらそら!だんだんと遅くなってるぞ!もっと!もっと早くだ!」
「…………っ」
アオイの捌きも、この巨体相手だと効率が悪い。軸がしっかりとしているためバランスを崩すことも難しく、今は捌きと言うより回避行動である。
「本気は出さないのか?」
両者が距離をとったところで、ヴェイダーがふとそんな事を問いかけてくる。
「あんたの武装技術を俺はまだ見ていない。とんだ拍子抜けた能力でも無けりゃ、まだ発動してないんだろう?」
「…本気…というのは、誰が決めるのでしょうか。あなたですか?私ですか?」
「それがあんたの答えというわけか……ならーー」
地面にめり込むほど踏み込んだヴェイダー。それに反応するようにアオイも再び捌きの構えをとる。
「この俺がアンタの本気を引き出してやんよ!」
「……っ!」
ヴェイダーの思い一撃がアオイ目掛けて伸びる。アオイもそれに伴い捌きによる回避行動を図ったが、その拳はアオイの腹部に到達してしまった。後方に飛ばされるアオイの肢体。地に手をつく事で減速し、その場に跪く。
「くっ……はぁ……はぁ」
「そろそろ良いだろう?早く本気を見せてくれよ」
「……先程も言ったはずです。本気というものは誰が決めるのかと…………でも、良いでしょう。そこまで言うなら……」
瞳を閉じ、自身の奥底にある力の定を外す。再び開かれた瞳の色は、青から赤へと豹変していた。
「これが私の力…明かしたくはなかったそれです……。後悔と言いましたね。それは、別の意味での後悔をあなたがするという意味ですか?」
挑発的な言葉に、ヴェイダーは鼻を鳴らす。
「ふん…こいよ。相手してやる」
戦いの第二幕は、今、幕を開けた。




