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If.七種目の召喚者(イレギュラー)  作者: 石原レノ
全てが変わる日…変えようと誓った日
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お風呂♪

食事を終え、洗い物を済まし、夜のご家庭は多分これからお風呂だろう。家族で入浴する所もあれば、各個人別々で入る所もある。暖かく、心が和む数少ない憩いの場であるために、ハクリにとってお風呂はかけがえの無い存在だった。浴室で行われるミニリサイタルを懐かしく思う時も最近あるが、この世界に来てからはやったことが無い。

「ふぅ…湯船まであるのか…」

そんな中、ハクリは浴室の湯船に浸かり、一日の疲れを癒す。この家に泊まることは先程になってアオイに伝え、遠まわしに心配されている事を気付かされた。ユアとツバメが後ろで何やら騒いでいたが、特に気に止めることはしていない。多分自分の事でもめているのだろう。

疲れが取れたところで、現状の確認を行う。今こうしてイヨの家に泊まってはいるものの、イヨの考え自体は何も進歩していないように思える。焦ってはいけないと胸の内に刻み、慎重に二人の距離を詰めていく……多分詰めていっている……はず。

「……あの、イヨ?」

「はい。何でしょうかお兄さん」

自分の目の前にいるイヨに語りかけるハクリ。気に止める様子もなく、イヨは自分の頭を洗うハクリに答える。シャンプーハットを頭にはめ、体にまいた1枚の長いタオル、その下はもちろん素っ裸。これを目前にして、ハクリが戸惑いを隠せるわけがない。

「いや…何で俺イヨの頭洗ってるのかなぁって思ってさ」

「??さっきも言った通り、私は1人でお風呂に入れないのです。今日は丁度お兄さんがいるので……迷惑でした?」

「いや、俺は構わないんだけど、イヨはいいの?タオルで隠しているとはいえ…その……裸だし」

ハクリがそう言うと、何を思ったのかイヨは自分の成長しきれていない双丘をペタペタと触る。

「お兄さんは大きい方が好きですか?」

「そうじゃなくて!いや俺は別に気にしないけど!イヨは恥ずかしくないのかって事!」

「私は気にしませんよ?まぁ恥ずかしくないと言えば嘘になりますけど、お兄さんですし。未来の旦那様にはこれくらいしてもらわないと」

「いつそうなったっけ?」

「ふふっ。旦那様ぁ〜♪」

わしゃわしゃとイヨの頭を洗う。泡立った頭をシャワーで流し、ハクリの仕事は終了する……わけもなく、引き続き手伝いという形でイヨとのお風呂を共にする。ちなみにハクリの格好はパンツ一丁である。流石にこれは譲れなかった。なるべくイヨの方を見ないように、スポンジや石鹸なんかを渡す。今のハクリにはこれが精一杯だった。

「今日は本当に助かりました。お礼にイヨがお兄さんのお嫁さんになってあげます」

「そ、そう…そりゃ嬉しいな……うん」

「私は本気ですよ?14歳の女の子を舐めてもらっては困ります」

イマイチ本気かどうか分からなイヨの求婚発言。ハクリは苦笑するしか無かった。

「なら、イヨにはそれまで生きてもらわないとな……」

「……そうですね。私もそれまで生きて行かなければなりませんね」

「……考えは改まった?」

「………まだ分かりません。相変わらず嫌いなものは嫌いです。でも、お兄さんの側に私はいてみたい。そんな事も思っちゃったりします……でも、まだ分かりません」

「…………そっか。焦ることはないよ。まだ少し時間はあるから」

「はい。もう少し、もう少しだけイヨに時間を下さい……多分、(おの)ずと答えは出ると思います」

「……分かった。ならもう俺からは問いたださない。イヨの方から俺に伝えてくれ」

「はい!私はお兄さんのーー」

「ただいまイヨ!今日バイト先の先輩がまかないを…………」

小柄な少女が勢いよく浴室の扉を開く。多分この子がイヨを支えてくれている女の子なのだろう。食べ物を手に取り、目を輝かせながらイヨとハクリのいる浴室を見つめる……固まったまま。

「あ、フィーレちゃん。おかえりなさい。こちら、ハクリさんです」

「…あ、これはこれは初めまして。フィーレと申します……イヨがどうもお世話に……じゃなくて!!」

クワッと目を見開き、勢い余る大声でツッコミを入れるフィーレと名乗る少女。ハクリには現状の生理が追いついていない。唯一頭をよぎったのは、自分が連行されているシーンだ。

「何よこいつ!?何でイヨとお風呂に入っているわけ!?え!変態!?変質者!?」

「いえいえ違うのですよフィーレちゃん。お兄さんはイヨのお婿(むこ)さんです」

「いやいやいやお婿さんって、イヨまだ14でしょ!?そんなの早いって!」

「いえいえいえいえ、お兄さんはイヨのお婿さんです。その証拠に今日はご飯もお風呂も一緒です」

「いやいやいやいやいや!だからそんなのーー」

「ち、ちょっと待った!お、俺はその…イヨの……その……」

「変質者!変態!痴漢魔ぁ!!!!」

「だからお兄さんは私のーー」

「あーーーーー!!!!少し黙れっ!落ち着けってのっ!!!」

突然現れた、多分イヨと一緒に暮らしているだろうフィーレという少女。この少女に見覚えがある事を、ハクリはこの時気づかなかった。

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