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If.七種目の召喚者(イレギュラー)  作者: 石原レノ
全てが変わる日…変えようと誓った日
144/313

イヨと過ごす夜

手に持った道具を巧みに使い、ハクリは料理を作る。すぐ横ではイヨが椅子に座りながら鼻歌を歌っている。

「イヨっていつもご飯とかどうしてるんだ?」

「本当ならこの家に他の子も住んでいます。その子に作ってもらうのが普通です」

「……でも今いないよな?どこかに出掛けているとか?」

「はい。たまにこういう日があるんです。その時はご飯作っておいてくれるんですけど…今日はありませんね」

目が見えないせいで気配を感じとったり、耳が敏感なイヨ。手で触ることで相手の顔さえもイメージしてしまうところを見ると、その才能は凄いようだ。そして、イヨが言うもう一人の存在…。それがハクリは気になったが、今は置いておく。

「まぁ今は俺が作ってるし、いいだろう。あと少し待ってて」

「はいお兄さん。ふふっ。楽しみです」

「そんなに期待しないでほしいな。あんまり凝ったものは出来ないから」

「はい!期待しないように期待してますね!」

そう言い残すと、イヨは食器を並べ始める。手で触れた感触で食器の用途を導き出し、使うものだけを器用に仕分けする。そして、ハクリが料理を盛り付け、晩御飯には少し多すぎる位の量が完成した。

「わぁ…いい匂いです!美味しそうです!」

「少し不慣れなところもあるけど、美味しいと思うよ」

「あ、あの……お兄さん。料理の場所が分からないので教えてもらえませんか?」

箸を持ちはしているものの、オドオドしているイヨ。どうやら料理の場所までは分からないらしい。

まぁ、流石に料理を素手で触ることはマナー違反だよな。

「えーっと、これがーー」

「えっと……私の手、握ってもらえませんか?どこにあるのか私の手を動かしながら教えてもらえると嬉しいです…」

…………それはつまり手を握りながら料理の場所を教えろと?

「う、うん…分かった」

イヨの頼み事を断るわけにもいかず、ハクリはイヨの後ろに腰掛け、箸を持ったイヨの手を握る。暖かく小さな手は、ハクリの手で簡単に収まりきってしまった。柔らかい肌が自分の手の中に収まり、イヨの背中にはハクリの胸が当たり、お互いの心臓の鼓動が直に伝わる。

「なんだか恥ずかしいです」

「ま、まぁこうしないとイヨも食べられないからな…じゃあ、いくよ?」

たまにイヨの髪がハクリの鼻にあたったり、それでなくても華やかな香りが鼻腔をくすぐる。イヨもイヨで自分よりはるかに大きいハクリの体を直に実感し、赤面する顔を抑えられなかった。

「…………こんなところかな。どう?食べられそう?」

「は、はひ…………あ、ありがとうございますまひゅ……」

全ての料理の場所を教え終わり、イヨの顔を見ると、そこには真っ赤になった顔があった。呼吸心拍数ともに上げに上がったイヨを目前に、ハクリの焦りは収まらない。

「ちょ、イヨ!?大丈夫!?」

「だ、大丈夫れふ…ちょっと…緊張しただけですから……」

すぐさま辺りの水を見つけ出し、一気に飲み干すイヨ。記憶力も相当なものらしい。クールダウンをしたイヨは、1度息を吐くと、未だに頬をほのかに染めながらハクリの方に顔を向けた。

「さ、食べましょう。せっかくお兄さんが作ってくれたお料理が冷めてしまいます」

「…そうだね。食べよう」

イヨのそばから離れ、今度は対面するように座る。互いに箸を取り、食事を始めた。途中イヨが困ってそうなところは、ハクリがカバーしたり、普段とは違う食事がいやに楽しかった。

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