If ~もしもの話~シノアとハクリの薬物実験を経て
「はぁ~…私ったら本当にもう……」
「いつまで気にしてんだよ。あれは薬のせいなんだし、しょうがないじゃないか」
「そ、そんな事言っても私は気にするんです!それに私が作った薬なのに…………はぁ」
結果的に言うと、ハクリが飲んだ薬の作用は、シノアが作った薬により無くなった。周りにシノアしかいなかった事から二次災害もなく、多分平和的に事は終わりを迎えた。
しかし、シノアのショックが相当なもので、未だ立ち直っていないシノアはハクリの隣でうつ伏せている。
そんなに気にする事もないのに何故そこまで滅入るのか、ハクリには分からなかった。
「私もまだまだですね……うぅ」
「あのさシノア。そんなに思いつめても結果は変わらないぞ?やっちまったものはしょうがないさ……」
「慰めになってませんよ…あぁもう嫌だ……顔も見たくない」
「いや何でそこで俺が嫌われるわけ…」
茜色の光が差し込み、時刻が暮れ時だということを察する。そろそろ帰らないと……
「とりあえず今日は帰ろう。もう夜になるからさ」
「…………分かりました」
恥ずかしさ故に顔を赤く染めたシノアが帰り支度を始める。ハクリも自分の荷物をまとめ、シノアが出したビーカー等をかたし始めた。
「…ハクリ君」
「ん?どうかした?」
簡単な片付けが終盤に差し掛かり、不意にシノアから声がかかる。もじもじと指遊びをするシノア。勇気を出す程の言葉を言うのか、ハクリの緊張は自然と高まった。
「今日はその……ありがとうございました。ハクリ君のおかげで、色々と助かりました」
「あ、あぁ…そうか。それなら俺も付き合った甲斐があったかな……うん」
「そ、それでですね……その……もし良かったらなんですけど……」
「ん……ん。何でしょうか」
ハクリのこの緊張気味。やけに色っぽいシノアを見ていると、まだ薬の効果があるんじゃないかと不安になってきた。なんかその……女の子の顔をしている。
「こ、今度……お買い物とか……行きませんか?」
「お、お買い物……ですか」
「い、嫌ですか?」
「いやいや滅相もない!行かせてもらいます!」
「そ、そうですか……分かりました」
満面の笑みを浮かべるシノア。初めて自分が青春していると実感した瞬間だった。適当に帰り支度を済ませ、ひと足早くシノアが退出しようと扉に手をかける。
「……約束ですから!絶対ですよ?」
「う、うん……分かってる……」
「……では、私は帰りますね」
「お、おう」
シノアが大人の女性に見えたハクリだった。




