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If.七種目の召喚者(イレギュラー)  作者: 石原レノ
全てが変わる日…変えようと誓った日
135/313

自身の目的を……

「それで戦ったわけですか…」

「………」

「いくら頭に血が上ったからといって戦う事は良いことではありません。私達は何をしにここに来ているのか、もう一度自覚してください」

アオイにこれでもかと言うほど注意を受け、ハクリは不満な顔をしながら聞いていた。あの後、血走った空気の中アオイの非殺傷武器が火を吹いた。気を失っているユアとハクリ以外の当事者を片隅に避け、アオイの説教を受ける。

今のアオイはいつもの姿とは明らかに異なっていた。背中から生えた美しい翼は、あたかも彼女が天人族ディバイアントであるようだった。

現時点で確認されている間人族ニュートルの人数は二人。ユアとハクリが間人族ニュートルという事がバレてしまった以上、残るアオイとツバメ、ツバキがバレてしまっては辻褄が合わない。そう思った末の【変装】だそうだ。組織の支給品である戦闘服に備わっている機能に驚いた二度目である。

「今後このような事があれば捜査に支障が出ます。気をつけてください」

「あぁ…すまない。今後は出過ぎた行動は控えるよ」

ハクリがそう答えると、アオイはその場を後にする。今のハクリとユアの心情を察してくれての行動だろう。

ハクリの隣で黙ったままのユアは、未だ俯いたままだ。被害にあった少女はツバキとツバメに任せた。心配事は他にあるのだ。

「この国には、貧富の差があると聞きました。そのせいで幼い子供が働いているらしいです。あの男達のような愚劣な人達から暴力を受けることも珍しい話じゃない……そんなのっておかしくないですか?同じ人間なのに、ただ少し環境が違うだけで扱いを変えるなんて…そんなの……そんなの間違ってます」

涙を浮かべながら、ユアは思い思いの事葉を口にする。自分一人ではどうしようもない問題である事も、相談したところでどうこうなる問題ではないことも分かっている。今ここで言わないと、自分が何を正しいと思っているのか分からなくなるのだ。それが不安で、だからユアは無駄だと知っていながらも意思をあらわにする。

「俺たちの目的はなんだ?」

「……世界の調和を保つ事…」

「俺たちのやり方はなんだ?」

「誰一人傷つけずに目的を達成する事…」

一つ一つ、自分達のあるべき姿を再確認する。世界中の誰もが不幸にならないことなんて不可能な理想論でしかない。幸せな者がいて不幸な者がいる。世界はそうやって成り立って来た。誰かが幸せな分、誰かが苦しまなければ、人は真の幸せと不幸の区別さえ忘れてしまう。ユアの言い分もハクリは全て肯定できる。しかし、ハクリ自身が肯定したところで、世間の常識は覆せない。そういった歯がゆさを残しながら、生きていかなければいけないのだ。

「ユアが言う事は全て正しい。でも、今は目先のことに囚われるな。俺達は俺達の未来を見据えるんだ」

「たい……ちょぉ…」

溢れる涙をぬぐいながら、ユアは嗚咽を漏らす。今の自分には頭を撫でてやることしかできない。そんな未熟な自分を嫌悪しながらも、ハクリは再度自分が達成すべき目標を確認した。

「俺たちって、なんなんだろうな……神様よぉ…」

頬を伝う雫は、ハクリの心情を表した。悲しみよりも切なく、悔しさよりも苦しい何かが、また一つハクリという人間を成長させた。

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