とある少女との出会い
「どこ行ったんだ…」
ユアを探し始めてとにかく走りまくった。しかし、ユアの姿は一向に見つかる気配がない。この広い街の中で人一人見つけ出す難易度はMaxに等しいだろう。現に今もこうして目を皿にして探しているが見つかっていないわけで…。
「建物の中に隠れてるとなると余計に見つけるのは難しいな。どうしたものか…」
ただ闇雲に探したところで相手は考えも移動することもできる。すれ違いという事も十分にあり得るのだ。だからと言って考える時間はない。
「あーもうっ!どうしろって言うんだよ!」
「何やらお困りのようですね」
声がした方に振り返るハクリ。そしてその容姿に絶句せざるをえなかった。
ボロボロの洋服に身を包んだ少女。盲目をあらわにする包帯が目に巻きつかれている。周りからの痛々しい視線を感じ、ハクリは咄嗟に少女の腕を掴んで走り出した。
「……ここまで来れば」
「あの…手を」
「あ、ごめん。咄嗟の事だったからつい」
今まで掴んでいた手を離し、気恥ずかしそうに後ろ頭を掻くハクリ。その姿を見て少女の口元が緩む。
「面白い方ですね。こんな私に謝るなんて」
「俺に非があるんだし当たり前だろう。強引な真似をしてごめん」
「謝ることはありません。あなたにも立場というものがありますから。私のような者と一緒にいるところを見られて不都合な立場に陥ってはたまりませんよね…」
少女の言葉に、ハクリは反論が出来ない。少なからずハクリにもそんな考えはあったのだ。しかし、100%そ考えによる行動と言われればそうではない。歯がゆさを顔に出し、ハクリは黙ることしかできなかった。
そんなハクリに対して批判的な表情や言葉を出す事もなく、少女は未だ笑みを浮かべている。
「気にしないでください。突然話しかけた私が悪いのですから」
「君は…なんで俺に声を?」
「あなたから困ったような空気が漂っていましたから…困っている人を助けるのは、人として普通のことでしょう?」
ある疑問がハクリの脳内に浮かぶが、今はそれを問いかける空気ではない。盲目の少女はハクリの顔に手を伸ばし、ペタペタと触り始める。
「…………」
「えっと……何してんのかな?」
「お兄さん…結構私の好みの顔してますね。お嫁さんにしてください」
「触っただけで分かるのか…もうちょっと経ったら考えるよ」
「これでも私は14ですよ?本気にしますよ?」
二人は同時に笑い合う。今の会話のおかげでだいぶ緊張がほぐれた。互いの距離も近くなった気がする。
「実は……女の子に逃げられてさ。その子を探してたんだ」
「お兄さんには既に心に決めた人がいらっしゃるんですか…イヨ、ショックです」
「そういうわけじゃないんだ。まぁ、一緒に働く仲間かな」
「ならイヨにもチャンスはありますね。安心しました」
自らをイヨと名乗る少女は、ホッと一安心するようにそう語る。そして、数秒間黙った後に再度口を開いた。
「お兄さんは今すぐにでもそのお方を見つけたいんですよね?」
「うん。あまり心配したくはないからね」
ハクリがそう答えると少女は一歩距離を詰める。ハクリの胸に手を当て、額が触れる。
「お兄さんの名前をお聞きしてもいいですか?」
「名前?ハクリだけど……どうしたの?急にーー」
「ハクリさん…分かりました」
ハクリの名前を確認した少女は不意に振り返り、立ち去ろうとする。去り際に、こんなことを呟いた。
「イヨはイヨと言います…お兄さんの探している人は、お兄さんの考えが間違っていない限り、必ず見つける事が出来るはずです…どうか諦めないで」
「イヨ…きみはーー」
ハクリの言葉に振り返る事もなく、イヨはハクリの目前から姿を消した。




