渡されたものの意味
「出発する前にこれを渡しておくよ」
そう言ってリランはハクリにハンドガンを2丁差し出す。
「…これは?」
「組織が開発した特殊なハンドガンだよ。前に僕が使っていたものを改良したものだ」
そう言われても、ハクリが見た限りどこから見ても普通のハンドガンにしか見えない。舐めまわすように見ているハクリを見て、リランは薄く微笑む。
「ロッドAタイプII。このハンドガンの名前さ。連射速度、装弾速度に長けていて、魔力を使った魔弾も生成できる」
「魔弾か…どうやってやるんだ?」
「弾丸を使い切った状態で念じれば、自然に魔弾が装填されるよ。でも気をつけて、本物の弾より威力が低い分、対象を怯ませるには何発か打ち込まなければならないよ」
「魔弾ってのは俺にも作れるものなのか?」
「ハクリでも作れるようにしたからタイプIIなんだよ」
あ…………(察し)
「…その……ありがとう」
「いいよ。こっちは協力してもらってるんだ。このくらいの事はさせてくれ」
ハクリが申し訳なさそうに詫びると、リランは優しく微笑み返した。
「それが総司令官がお渡しになった隊長の武器ですか?」
ハクリがまじまじと見つめていると、隣のアオイがそう問いかけてくる。支給されたのはハンドガン2丁と弾丸数十発程。ハクリが手にしているのはそのうちの1丁だ。
「うん。リラン曰く俺でも扱えるようにはなっているみたいだけど…俺拳銃とか持ったことないからな…」
「総司令官がそう言うんです。なら、大丈夫でしょう」
アオイはそう言うが、ハクリは未だ半信半疑である。何分夢見たものの手に取れるような代物ではなかったために夢見で終わっていたものだ。それが突然自分の手上に渡されれば戸惑うのも致し方ない。
そして実の話、理由はもう一つ存在する。
「これを渡されたってことは…俺もやらなきゃいけないってことだよな」
ハクリがそう問いかけると、アオイは言葉を詰まらせる。ハンドガンはもちろん殺傷目当てで作られた兵器の一つだ。それを渡されたと言うことは自分もいつか人を殺さなければならないと言うことである。
「やらなきゃやられるような仕事です…私達がやられていては、世界の調和など達成されません。つまり、やらないといけないんです」
「そうだよな……」
自然と殺人に対する抵抗はなかった。しかし、それが本当に正しいことなのかについてはまだ結論が出せていない。そんな感じだ。
今はまだ大丈夫。心を落ち着かせ、いつもの調子を取り戻す。
「それはそうと、アオイさん。俺たちの目的は同じだが、やり方は違う…そうだよな?」
悪戯っぽく笑いかけるハクリにアオイは表には出ないように薄く口角を上げる。
「えぇ分かっています。私達は犠牲を出さないやり方で任務を遂行します……しかし、そのためにはーー」
「一度対立しなければならないということか…」
「私達はあくまで情報を取りに行っている立場で、本来の仕事をするのは前線…もとい特攻部隊です。私達なりのやり方を遂行するためには、まず特攻部隊を差し押さえするひつようがあります。今から行ってすぐに反種族主義思想保持者と和解できれば問題ないのですが、事は現実、そうはいきません」
「つまり、これからの俺の仕事次第でーー」
「最悪血を見ることになります」




