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If.七種目の召喚者(イレギュラー)  作者: 石原レノ
全てが変わる日…変えようと誓った日
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If ~もしもの話~終わりの夕景

「ここからの夕景は綺麗なんだな」

「すごいでしょ。私の秘密の場所」

ほのかに頬を赤く染めながらそう言うユリ。何やかんやで根本的なら用事は済ませた。途中どこかしおらしいユリにドキッとしながらも何とか正気を保ってきた。全ての用事が終わり、帰ろうとしたところでユリについてくるよう言われ、今に至る。

「…ここにはよく来るのか?」

「うん。嫌な事があったりしたら毎回」

ユリの横顔を眺めながら夕日を浴びる。何処か充実したような感覚に見舞われるこの時間が、ハクリにとっては懐かしいものだった。

人とこんな風にロマンチックな場所に来るのは久しぶりな故、どんな言葉をかけたものかと思い悩む。

そんなハクリを気に止めることもなく、ユリは夕景を堪能しているようだった。

「………」

「なに?」

「い、いや何でもない。ユリもそんな顔するんだなって思ってただけだ」

「ふぅーん。私がこんな事してちゃおかしい?」

「いや全く。年頃の女の子なら誰しもそんな時はあるだろ」

ハクリがそう言ってもユリは未だ疑わしい目を向けてくる。目を逸らすように夕景に目線を向け、無心になろうと努力する。

「ねぇハクリ。あんた私のこと嫌い?」

「…別に」

「何よその曖昧な回答は…ハッキリ言ってよ。好きか嫌いか」

ユリのこの質問には流石にハクリも困り果てる。この回答どっちも斜め上をいくような気がする。しかし、ここで曖昧な回答を返し続けるわけには行かない。何故か今のユリ、めちゃくちゃ真剣な顔してる。

「………」

「さぁ、早く答えなさいよ」

真剣な眼差しでハクリを促すユリ。最悪の回答を予測しているのか、少々声が震え気味だった。

「…好きだよ」

「っ!?あ、あんた何言ってーー」

「友達としてだよっ!ってかお前好きか嫌いか言えって言っただろ!」

「そ、それでも普通…好きだなんて言わないわよ…」

「じゃあどうしろってんだ……」

言われてみればもっと他の言い方があったかも知れない。そう思うと自然と顔が熱くなってくる。そして何故か心が痛い。

「ま、まぁいいわ。聞きたいことも聞けたし……か、帰るわよ」

「お、おう。そうだな…」

夕景に背を向け、ハクリとユリは歩き出す。どことなぁ〜く無言の時間とともに足は1歩ずつ前に進み、次第に気まずいと実感していく2人。何を言うにも勇気を必要とし、無言を突き通すにも限度がある。

「…」

「……」

「今日は本当にありがとう」

学園の敷地に近づいてきたところで、ユリがそんな事を言う。少々戸惑いながらも、ハクリは口を開く。

「気にするな。俺は何も手伝っちゃいないからな。それに、暇だったし」

「……そうじゃなくて」

「ん?」

もじもじと指を絡めるユリ。何か言いたげだが、言葉に出来ない。そんな所だろうか。ゴクリと喉を鳴らすハクリに、ユリは意を決し、これ以上にない程の真剣な眼差しでハクリの目を見つめる。

「さっきの…私の事……好きって言ってくれたじゃない?あれ…嬉しかったから」

「っ!?」

「べ、別に勘違いしてる訳じゃないのよっ?あんたが言っている事の意味くらい分かってるんだから!……あぁもう私帰るっ!」

「え、お、おいユリ!」

恥ずかしさのあまり駆け抜けていったユリ。ここから学園までは近いから心配はないと思うが、気になるところは勿論そこではない。

「…あいつどうしたんだ?」

今日のユリはいつものユリより女の子だった。それは、ハクリがよく読んでいた本で言う『恋する女の子』なわけで…普段のユリからは想像もできない姿だった訳で……。

「……はぁ、何なんだよもう…」

モヤモヤする施行を抱えたまま、ハクリは自分の寮へと足を運んだ。


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