過去
今から十数年前、既にこの頃の世界には対全種族反対主義の名は知れ渡っていた。数多もの反種族主義思想保持者を殺害し、恐るべき存在へと一気に上り詰めた彼らは今日、運命を迎える事となる。
「……ここか?」
「はい。本日排除する予定の反種族主義思想保持者の数は6名。ここから約500m先の教会内に位置しております」
手上に映し出されたビジョンからは、カグツチの言っている場所が表記されている。リランはそれを確認し、手に持った銃器を腰、背中に携えた。
「…ありがとうカグツチ。特攻部隊に告げる。ターゲットはここから焼く400m先の教会にいる。俺、カグツチが正面から、残る部隊は逃走を図った者達を殺れ…アウト」
「「「「了解」」」」
伝達を終えたリランはふとため息を零す。別にこんな事やりたくてやっている訳じゃない。世界を救う英雄になりたい…自分にもあった幼いころ、いつもそう思っていた。
それが今となって少しこじれただけだ…そう思い込む。そして何より…彼女が望んだ事だ。
着地に備え、リランとカグツチは扉を開ける。目も開けられないほどの風が当たり、髪がなびく。上空から眺めるこの街はあまり好きではない。そしてこの街の一部が、これから悲鳴と血で染上がるとなると、変な感情は持たない方がいい。無駄な感情を捨て、リランは飛び出す。
「全員作戦開始!カグツチ、行くぞ!」
「了解ですマスター。全てはあなたの目的の為、私を……お好きなように……」
上空からの突入。誰も扉から正面突破とは言っていない。しかし、このまま落ちるままではリランやカグツチはただでは済まない。そして、それを回避するための手段が、この世界には存在する。
「第二風系魔法」
リランの放った風の魔法。自身を含む対象に風の加護を与え、追い風、向かい風などをもたらす魔法。今回は減速のために向かい風を送る。
次第に遅くなっていく落下速度、この速度なら、地面に足をついても大丈夫そうだ。
「…よし」
「計画通り屋根上に着地しました。このまま突入しますか?」
「……そうだな。全員に告ぐ。俺とカグツチはこのまま突入。各自早々に持ち場につくように…アウト」
「「「「了解」」」」
「……さて、行こう」
「了解しました」




