真実
「ふぅーん。ハクリ達はそうやって組織に参加するんだね」
「…止めないんだな」
作戦会議の後、ハクリはリランに呼び出された。どんな罰を受けるものかと思ったが、とんだ杞憂だったらしい。
ハクリが問いかけると、リランは薄く笑みを浮かべる。
「怒る事ではないからね。僕からしたら世界を救ってもらえれば、手段は問わない」
「それ、本気で言ってんのか?」
リランの言葉に、ハクリは苛立ちを覚えた。浅はかな受け止めだとは思うが、今のリランの言い方では、自分の目的さえ果たされれば、彼ら彼女達がどうなろうと構わない…。そんな言い方だと受け取れた。
ハクリが苛立ちを表した目線を送ると、リランはそれに応えるように目を細める。
どうやら、考えはあながち間違ってはいないようだ。
「彼らを生き返らせたのは僕だ。僕がどう思い、使おうと僕の勝手だし、君がどう言おうと関係ない」
「ーーっ!」
感情に任せて胸ぐらを掴んでいた。今にも手が出そうなほどの感情を押し込め、ハクリは何とか自我を保つ。
「お前がどう思おうと、ここにいる皆は人間だ。それはお前が言ったことだろう。その人間を、お前のいいように使うことなんて認められるわけがない」
「そうか…なら、君が言うクラスメイト………彼女達はどうなるのかな?」
「…………は?」
「ここにいる事で人間とみなされるのであれば、ここにいない彼女達は人間に値しないと……君はそう言うのかい?」
「ちょっと待て。なんでお前が知ってるんだ…それに、その言い方だと…」
おぞましい程の寒気が、ハクリの背筋に走る。冗談だと思いたいが、リランの真剣な表情を前にそんな考えも空を切っていった。
手が震える。リランの胸ぐらを掴んでいた手の力が抜け、後ずさりをする。恐怖というよりはとてつもない現実を突きつけられた時の絶望というものの方が大きい。
「…はぁ。この事は極力伝える事はしないと思ってたんだが…どうやら君には真実を伝えなければいけないらしい」
「……どういう事だ…俺の……ユリやシノア達がなんだって言うんだ…」
ハクリがそう問いかけると、リランは意を決したように立ち上がる。同じくらいの身長故に目と目が真っ直ぐに向き合い、難しい空気を醸し出す。
「よく聞くんだ。これは君にも関わる事だし、ルリやイタチ以上に重要なことだからね……」




