If ~もしもの話~ユリと〇〇〇その2
「へぇ…でっかいなぁ」
「凄いでしょ!ここら辺じゃ有名な所なのよ!」
約束の日にちになった。いつもよりテンションが高いユリは、集合してからというものずっとソワソワしている。ハクリ達が来たのはとある大きな市場。雑貨から日用品。食材から飲食店まで立ち並ぶこの市場には既に多くの人で賑わっていた。どこから回ったものかと辺りを見回すと、不意に袖を引っ張られる。
「ほらハクリ!行きましょ!」
「あ、あぁ分かった」
何でこいつこんなにテンション高いんだ?なんかいつもより……その…可愛いし…。
今のユリの格好はもちろん私服で、季節に合った半袖を見事に着こなしている。フリフリのついた衣服がいやに似合うユリに、自然とハクリの目線は向いた。
「どこから回ろっかなぁ〜…あ!見て見てあそこ!」
「あれは…ネックレスか?」
ユリが指さした店は、多種類のネックレスを扱った店だった。珍しい宝石から一般的な宝石を扱っている親しみやすい店だった。
「いらっしゃい!お望みのものはあるかい?」
気の良さそうな店員のおじさんにそう言われ、ユリは興味津々に並ばれた品物に目を通す。そういうおしゃれ系のものに疎いハクリでも、この店の商品の良さが分かる気がした。
「んーこれなんてどうかしら?」
そう言って見せてきたのは、緑色の宝石がハマっているネックレス。エルフ=緑色と思っているハクリからしてみれば、十分合っていると思った。
「良いんじゃないか?似合ってると思うぞ」
「なんかイマイチ信用しないわね…本当にそう思ってる?」
ユリはユリで、ハクリの対応がご不満な様だ。しつこく問いかけてくる。
「本当に思ってるよ。どこからどう見ても似合ってるじゃないか」
「むー……」
何が気に入らないのか、ジト目でハクリを見つめるユリ。こればっかりは疎いハクリに問いかけても困る……自身でそう思う今日このごろ……。
「お嬢ちゃん。それ、買うかい?」
店員にそう問いかけられ、少しの間悩むユリだったが……
「ごめんねおじさん。今はいいや」
「そうかい…また気が向いたら寄ってな!」
気前のいいおじさんに別れを告げ、ユリは次なる目的地へと向けて歩み出す。いやに機嫌がいいユリを見てハクリも内心楽しみながらも、表には表さなかった。
「私の顔に何かついてる?」
「……いや、別に」
いつの間にかユリの顔をじっと見つめていたようだ。問いかけられてハッとしてしまう。
どこかいつもと違うユリを見たせいか、それともデートという初体験に酔ったのかは分からないが、今日のユリはどこか可愛らしい。女の子らしく買い物を楽しみ、女の子らしく振る舞うその姿は、いつも学園で見るユリとは違った。
「いや、何でもない」
「?」
そんなハクリの対応を見て、ユリは疑問を浮かべたような顔をする。
「…さ、行くぞ」
「え?あぁちょっとーー」
たくさんの人が行き交う人混みの中、ハクリはユリの手を取り、先導を行く。抵抗するわけでもなく、ユリは仄かに頬を赤く染めながら、ハクリの背中を見る。
「……」
「……」
気まずい空気が二人の間に流れる。賑やかな周りの人間たちに対し、ハクリとユリだけが孤立したような感覚…。
「ねぇ…ハクリ」
「ん?」
不意に立ち止まったユリ。そんなユリの方を、ハクリは何気なく振り返るがーー
「……あのねーー」
いじらしく…しおらしくなったユリがそこに立っていた。二の腕のところを逆の手で抑え、何やら顔を赤く染めているユリ。言葉が出ないハクリは、ただ呆然としたまま見つめる事しか出来ない。
何か言いたそうにしているが、言葉に出来ない様子である。
「…き、今日は……その……」
「??言いたい事があるならハッキリ言ーー」
「ありがとう」
お礼を言われた……今日のお礼を…耳元で。
「……っ!?」
驚きのあまり顔を赤く染めたハクリ。ユリは恥ずかしいのか目線を合わせようとしない。
「お、おま…今ーー」
「なによ。別にいいじゃない……」
「あ、おいユリ!」
ユリとのデ……買い物はまだ終わりそうにない




