If 〜もしもの話〜ユリと〇〇〇
「ハクリ。今度の休みの日暇でしょ?」
1限が終わり、いつものように机に突っ伏していたハクリの元に、妖精族のユリ・クライヤが訪れ、唐突にそんな事を聞いてくる。何事かと思いながらも平常心を崩さず、ハクリは対応する。
「……なに?デートの誘い?」
「ち、違うわよっ!だ、だだ誰があんたなんかと!」
ちょっとからかっただけでこの対応…しかもハクリだけにしかこの対応を見せないところを見ると、かなり好かれているらしい……別の意味で。
「違うの?」
「違うわよっ!ただ……」
そこで何故か黙り込むユリ。不思議そうにその様子を眺めるが、一向に話す素振りを見せない。
「はぁ……言いたい事があるなら言えよ。伝わんないぞ?」
「そ、そんなの分かって…はぁ……」
顔を赤くしながらも、意を決したのかため息をこぼすユリ。そこまでして言うのだから余程大事な頼み事なのだろう…この時のハクリは思わず身構えてしまった。
「えっと…ね。その…買い物があって……それに付き合ってほしいというか……」
「なんだ。デートじゃないか」
「だから違うわよっ!お父さんの誕生日が近いからプレゼントを選びに行くだけ!アンタにはそれを手伝って欲しいって言ってるの!」
いや言ってないよね……。今の誘い方だと確かにデートの誘いだったよね。
「はぁ…そういう事なら良いぞ。どうせ暇だったしな」
「え?ほんと?」
「あぁ」
「き、決まりだからねっ!ドタキャンとかやめてよ?」
コイツ…俺のことそんなに信用してないのか……。
そんなことを思いながらも、ハクリは心中の中で留めておく。
「あ、あぁ大丈夫だ。だから心配するなよ」
ハクリがそう言うと、ユリは満足気に自分の席へと戻って行った。
父親のプレゼントを選ぶだけであんなにテンションが上がるものなのだろうか。そんな事を思いながら再び机に突っ伏そうとするとーー
「マスター…モテモテですね」
「今のどの状況を見てそう言えるんだよルリ」
今までどこかに行っていたルリが、そんなことを口走る。今の会話のどこにそんな要素が含まれているのか問いただすと、全部だそうだ。
「まぁマスターはそんな人ですしね。気づかないのも訳ありません」
「俺はどこかの鈍感主人公とは訳が違うぞ…今もこうして自分がいる………ないな」
「ほら、そこですよマスター」
何かこういう会話は嫌だなぁと思いつつ、ハクリはため息をこぼす。自分がモテようがモテまいが別に気にする事は無いこともないが、今の段階でモテているとはお世辞でも言えない……というのがハクリの意見である。
対してルリは何かある度にモテモテですねなどと言ってくるから、こっちが変に勘違いしてしまいそうで怖い。
「ユリさんとのデート頑張ってください!私は応援していますよ!」
「だからちげえっての…」
そして数日後、ルリ曰くユリとのデートが始まった。




