予告
「暇だな…」
「暇なのはいい事ですよ。それに、ここの趣旨を知らない人にとっては、この暇な時間は平和が保たれている時間と同じですから」
「その口ぶり…アオイさんは知ってるんだな」
この組織の趣旨…。種族同士の戦争を起こさないために、そういった思想を持つ者を片っ端から殺害する事。口外しようがしまいが殺し回るので、世間からは過激派組織として目を置かれている。その事実は特攻部隊という前線に所属するメンバーにしか教えられていないので、若いメンバーや前線に出ないメンバーは組織の趣旨は知っていても、具体的にどんな事をしているのかは知らない者が多い。
「私も以前は特攻部隊に所属していましたから。今はこうして、あなたの世話役を任されていますが…」
「……面目無い」
「別に不満なわけではありません。理由はどうであれあなたも戦わなくてはいけない身ですし、総司令官の命令でもあります」
「忠実だな…悪いとは言わないが」
「私とて総司令官の下で働くものである故、何事も総司令官の判断が正しいと思っていますから。それは、ここにいる人達全員が思っています」
それほどまでにリランは信用されているのか…。思わずハクリのリランに対する考えが改まった。
「そうか…そりゃ悪かったな」
「??なぜ謝るのです?」
「まぁいいさ。気にしなくてもどこか悪くなるわけじゃない」
ハクリの回答に、アオイはますます首を傾げる。
「そういえば、今日の訓練は何をするんだ?」
「本日はツバメさんとツバキさんを交えて実践練習です。2時間後…第5演習室にてお待ちしております」
「実践練習か…」
アオイのいう実践練習が何を指すかは知らないが、恐らく対人だろう。情報班とはいえ、襲撃にあった時の対策としての訓練という訳だろうか…。
「分かった。2時間後だな…」
「では、私は失礼します」
型にハマった礼をし、会議室を後にする。
訓練までには時間がある。ハクリは1度部屋に戻る事にした。




