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If.七種目の召喚者(イレギュラー)  作者: 石原レノ
全てが変わる日…変えようと誓った日
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自己紹介

「…誰だ?」

自室でくつろいでいると、ノックが鳴り響く。腰掛けていた椅子から立ち上がり、扉の前まで向かう。

「隊長!私だよ!私!」

「つ、ツバメちゃん…そんな言い方じゃ隊長さん誰だか分からないよぉ…」

「この声…」

ハキハキとした元気のいい声。先ほどの会議の時に対面した、ツバメの声だった。そして、多分もう一人目は……。

「あ、た、隊長さん…えぇと…ツバキです…よ、よろしくお願いしますっ!」

ツバメとは違い、右目が赤く、左目を黒い眼帯で覆っているセミロングの少女。十中八九ツバメと姉妹なのだろう。

「私はツバメ!ツバキと姉妹なんだよ!よろしくね隊長!」

呆気に取られたハクリ。すぐに我に返り、言葉を交わす。

「あ、あぁ…よろしくな」

「それでさ隊長!」

軽い自己紹介を終え、早くもツバメが次の話題を切り出す。

「私達何もする事ないの?」

「特にこれと言って指示は受けていないな…まぁ待機で良いんじゃないのか?」

「えぇ〜私も特攻部隊みたいに任務したいなぁ…」

「し、仕方ないよツバメちゃん…私達、そんなに強くないんだし……」

この二人の会話に、ハクリは疑問を抱かずにはいられなかった。

「…2人はそんなに任務に出たいのか?」

「え?だってそうじゃないの?どんな事をしているのかは知らないけど、世界の人の役に立ってるんだよ?私だって役に立ちたいもん!」

「そうですね…いつも任務を終えてくる部隊の人たちは皆カッコイイです…あんなに傷だらけになっても任務を遂行してくるなんて…」

ーーこの言い方…まさかとは思うが実際に何をやっているかは知らない口だな…ーー

何も知らないとまでは行かないが、今のツバメとツバキの言い方では、実際に何をやっているか、詳しくは知らないようだ。

ハクリに衝撃が走った。この組織には、ツバメやツバメのように、組織の趣旨を知らない者が一体何人いるのだろうか…。そう考えると、ひどく寒気を感じる。

こんな小さな子供のような者でさえ組織の一員として駆り出される。無慈悲だと言えるが、彼らにはそれ相当の力が個々にある。

リラン曰く…種族同士の対立を作らないため……だそうだ。


自分には関係ない……自分の場所はここじゃない…そう言い聞かせる。


「そうだな。俺達も早く特攻部隊になれるように頑張っていこう」

「うんうん!隊長は分かってるよ!それじゃあ私達は行くね!」

「あ、ツバメちゃん待ってよぉ!た、隊長さん!失礼します!」

先に駆け抜けて行ったツバメ。ペコリと一礼してツバキが後に続く。それを見送ったハクリは、扉を閉め、ベッドに横になった。

ーー真実を言うべきか…。それを言ったら、彼女達はショックに思うのだろうか…世界の平和のためとはいえ、特攻部隊が人を殺して回る…自分がいる組織が過激派組織だなんて呼ばれている事を知ったら…彼女達はどう思うのだろうか…ーー

考えれば考えるほど、思いつめてしまうハクリ。ここに来て数日が経つが、まさか知らない者がいるとは考えてもいなかった。

「…俺は……ここに居ていいのか……」

天井に手を向け、そう呟く。真っ向から否定されているテロ組織に、思いはあれど所属している。周りには言えない秘密がまた一つ出来てしまった。

全てが終われば……自分が皆を助けることが出来れば…また、あの楽しかった日々にーー

「あの…隊長?」

「……っ!?」

突然聞こえた声に、ハクリは思わず飛び上がってしまう。こちらを不思議そうに見つめる少女。長い髪を布で額から後ろに通し結っている少女が、ハクリをじーっと見つめていた。

「ごめん隊長!何回呼んでも応答しなかったから勝手に入っちゃって…驚かせちゃったかな?」

「い、いや。少し考え事をしていただけだ…気にするな」

ハクリがそう伝えると、少女はホッと胸をなで下ろす。

「えっと…私はユアと言います……あと何か言うことは…ええと……」

モジモジと指を絡めるユア。ハクリは腰掛けていたベッドから立ち上がり、対面する。

自分の胸くらいまでの身長。へそくらいだったツバメやツバキと違い、幼さはあるものの、どこか凛とした顔立ち。

「……」

「隊長?」

「ん?あぁ悪い…」

いつの間にか見入ってしまったハクリ。ユアに名を呼ばれ、我に返る。

「…あ、隊長ってアオイ副隊長から訓練受けてたよね?もしかして戦闘技術不慣れだったり?」

痛いところを突かれたと後ろ頭をかくハクリ。その反応を見て、ユアはパアっと表情を明るくした。

「ならなら!これから一緒に訓練なんて……どう…かな?」

「ユアが俺に訓練してくれるのか?」

「私の戦闘スタイルが隊長に合うかは分からないけど…出来る限りのことはするよ!」

しばし考え込むハクリ。

アオイの訓練でかなり披露は溜まっている。

しかし、今自分がここにいる理由は、大事な人を助ける為…あの悲惨な出来事を無かったことにする為であり、一分一秒が惜しい。

……なら、無理はするものである。

「分かった。お願いするよ」

「え?ほんと?本当に私と訓練してくれるの?」

何故か嬉しそうなユア。特に断る理由もないので、頷くだけのハクリ。

そして、その反応を見て満面の笑みを浮かべるユア。

「言ったからね!30分後、第二訓練室だからね!」

それだけ言い残して走り去って行ったユアを見送り、ハクリは再び一人になる。

ここにいる意味を、理由を忘れないようにと…そう思いながら……。

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