機巧族という者達
「はぁ…はぁ……」
「今日はこのくらいにしておきましょう。あまり厳しすぎると、お身体に触ります」
「そうだな…恩に着る」
ひと汗かいたハクリは、シャワーを浴びるために浴場へと足を運ぶ。支給された隊長服を持ち、歩くのだが、これがまた変に遠い。
階段を降りて別棟へ……そしてまた階段を上がり3階へ向かう。
相変わらず機密施設とは思えないほど光は差し込んでいて、学園のように人が行き交う。
過激は組織の面影は、施設からは感じられなかった。
「……ふぅ」
湯船につかり、溜まった疲れを呼吸とともに吐き出す。
正直アオイの訓練はキツかった。身体能力向上を目的とした訓練だったため、十中八九無駄ではなかった。しかしキツすぎる。
「本当に強くなれるのかね…」
「大丈夫大丈夫。ハクリならすぐに強くなるよ」
「っ!?」
1人だと思っていた浴場には、どうやら別の人が居たようだ…。そして、ハクリはこの男を知っている。
「リラン…」
「温泉で癒しを求めることは構わないが、君も男だろう?そんなにここの女性陣は君の趣味に合わないかい?」
「……俺はそんな事をしている暇はないし、第一ここの人達は皆お前が作ったロボットだろう。欲なんて出ねぇよ」
「…確かに作ったのは僕だ。でも、彼らの体の8割は人間そのものだし、ちゃんと彼らも自分の意志や心を持っている…作ったと言っても、僕はただ失った所を補ったに過ぎない…。彼らは君と同じ、人間だよ」
「…そうか……悪かったよ」
ハクリの考えを否定され、彼らがどういうものなのかを明確に説明された。自分の浅知恵のせいで、酷く勘違いをしていたようだ。
以後、気をつけることにする…。
湯船から上がり、風呂から出用とするハクリに、リランが一言。
「彼らは自分の考えや心、感情を持っているからね。恋もするし子供だって授かる事が出来る…。存分に楽しむ手もあるよ」
「っ!?そ、そんな事いきなり言うんじゃない!」
バタンっと勢い良く閉められた扉。リランはニヤニヤしながら湯船から見える外の景色を眺める。
今のハクリは自分にあぁやって接してくれているが、もし本当の事を全て知ったらどう思うのだろう。弱みに付け込んで無理矢理ハクリに協力させている状況で、二つの秘密を打ち明けたとしても、ハクリはきっとここに残る。でも、自分に、ここにいる人達に向ける目は絶対に変わるだろう。
一つ目、ペイスの事。アレを自分が企てた事だと知ったら殴られるだろう。
二つ目…………。
「やっぱり甘くなったかな。そんな事を考えてたら、真の平和は訪れないというのに…」
AIPの総司令官は今日もお悩み中である。




