その実態…
対全種族反対主義。表では無差別に人を殺し回る恐るべき脅威と伝えられている。しかし、それは間違った知識だ。
ハクリが訪れた世界では、様々な種族が助け合いながら暮らしている……なのに、今まで種族同士の反乱や戦争が1度たりとも起こったことがない……なぜか?
簡潔に言えば、ある組織がそういう思想を持つものを殺しているからだ。
思想を持つものがいなければ、行動に移すものは当然いないわけで、そうやってこの世界の平和は保たれてきた。
そして、それを行っているのが対全種族反対主義である。
殺害した人物はデータ化され、この施設で足りないパーツを補われた後、人間として兵器利用される。
つまり、人間でありながら人間ではない者達が、対全種族反対主義の総員であり、リランはそれを従えている長という事だ。
機巧族と呼ばれる種族に生まれ変わった者達は、それぞれ武装技術というものを身につけ、世界に駆り出されていく…というのが対全種族反対主義……もといAIPという組織の全てである。
「……はぁ」
全ての真相を知ったハクリは、設けられた自室のベッドに横たわる。
まさかルリがそういう存在だったとは…という考えより、AIPの活動方針の全てを知ってしまい、どう対応したものかと思い悩んでいた。
「ハクリ…入るよ?」
確認を入れたリランが、ハクリの部屋へ入室する。
「君の所属するチームが決まったから案内するよ。付いてきて」
「…俺は人殺しなんかしないからな」
「大丈夫。君が受け持つチームは主に情報を得るためのチームだから」
受け持つ……という言葉にハクリは不審感を覚える。
「ちょっと待ってくれ…俺が受け持つってのは…まさかとは思うがーー」
ハクリがそう問いかけると、リランは不敵な笑みを浮かべる。
「もちろん。君がそのチームの隊長となるんだよ」
「……っ!」
ここでいくら突っ込んだ所で、リランという男は揺るがない。いちいち突っ込まない事にする。
「さ、ここが君のチームの部屋だ。後は任せたよ…ハクリ隊長」
「……」
リランと別れ、ハクリは一人扉の前で立ち止まる。
皆を守るために仕方が無いとはいえ、過激派組織の一員となる日が来るとは考えた事が無かった。
これからどんな事が起こるのか…それは定かではないが、今を進まなければきりがない。
そう思いながら扉を開けた。




