代表挨拶
俺は壇上に立ち、礼をする。すると、けたたましい程の拍手の音が返ってきた。やっぱり、一の家の知名度って凄いな~と俺は内心苦笑する。
だが同時に高揚感も覚えていた。
新入生総代というのは俺の悲願への一歩になるからだ。魔力0の人でも最強の魔法士になれると示すその夢への。
俺は聴いてくれるみんなを惹きつけるために一拍置いて、記憶の中の原稿用紙を読み上げ始める。
「朗らかな春の季節、まるで太陽が歓迎しているかのような天気の中この国立第二等魔法士育成学園の入学式を執り行ってくれたことに多大な感謝を」俺は頭を下げる。
「国立第二等魔法士育成学園は魔獣から人々を守る防衛隊を育てるための魔法士を育てるという側面が強いです。実際に人々を守るためにこの学校に入学した人も大勢いるでしょう」
担任の教師の目が驚きで見開かれた。一応公式的には魔法士に魔法制御を学ばせるためだ。兵士として育てているつもりはないとしているため、消すように指示された部分だったからだ。
驚くのはこれだけじゃないぞ。さっきまではコソコソとしていたが、踏ん切りが着いた。こんなものはいらない!俺は勢いよく手袋を取り外す。
すると、今度は教師陣だけではなく、講堂全体に驚きが広がっていく。ざわざわと絶え間なく聞こえてきていた。手袋の下に隠されていたのはロボットのような手だったのだ。
「この手はなんなのか。私がサイボーグだったわけでは決してありません。これの下にはキチっと生身があります」
講堂が更にざわめきたった。じゃあ、なんだろうということだろう。教師が何かを言っているようだが、無視だ。
「なぜ、このような装置を着けているのか。それは俺がX粒子を放出できない体質だからだ!」
俺がそう言い放つと講堂が静まり返る。信じられないと思っているのかもしれない。まさしく絶句しているのだろう。
「この装置は擬似魔法発生装置。内部のX粒子の力を使ってX粒子の代わりとなるものを発生させています。この装置がなければ俺は魔法を使えない。でも、俺は最強の魔法士になります」
これらは完全なアドリブだ。新入生全員の代表の言葉ではないのはわかってる、どうしよう・・・・・・まあ、なりゆきに任せるしかない。
「そのため、一年生一同、国立第二等魔法士育成学園の生徒の名に恥じぬよう切磋琢磨していきたいと思います。成派三十年 四月 二日 十七期生」