アンドロイドは感情を持つか
そんなことを考えていると少女が俺の目の前に立っていた。
「あなたは誰?あ、私は吉田 花蓮」
礼儀だから仕方ないよな。あまり外では言いたくないんだが。
「俺は一 果因」
「ぷぷっ」
「人の名前で笑うなよ!」
こいつ、仏頂面をしている割に感情豊かだな!そして失礼だわ。
「私が、笑うことは滅多にない。誇ってもいい」
「そして、偉そうだな!?」
「私は大魔王の子孫だから、当然」
えっへん、とした面持ちをしながらも、特徴的な平坦な声で言い放った。
「流石に大魔王の子孫っていうのは胡散臭すぎだよ」
「嘘じゃない。大魔法使いの子孫」
「王はどっから来たんだよ!」
「そんな文字、知らない」
何故かドヤ顔で言う彼女はどこか楽しそうだ。無表情といってもやはり感情がないわけではないのか。
むしろ、豊かな方だと言えるだろうな。
「また、明日ね」
「ああ、また明日」
俺は小さく手を振ってくる彼女にそう返して手を振りかえした。あ、そういえば本当はどういうルーツなんだろうか。
本当はというか、大魔法使いがルーツだなんて抽象的すぎる。それに、魔法士は開発されたのだから、旧いところで言う魔力が高いものからの遺伝子を受け継がせるのは当たり前だ。
実質俺は名前以外の情報を知れなかったのである。まあ、俺も名前しか名乗っていないしそういう意味ではお互い様か。
それに、明日から何回でも会うのだ。これから互いに知っていけばいい。こんなこというと恋人同士みたいだな。
「どう?彼女出来た?」
「出来てないよ!こんな早々に告白されるわけだないだろ!」
「まあ、それもそうね。あ、もうこんな時間。仕事があるから」
「母さんの仕事は期限制の在宅ワークでしょ!?」
「一度やってみたかったの」
ドヤ顔で母は言う。なんか、吉田さんは母さんに似ているかもな。自由奔放というか、なんというかそういう所が。
「それだけかよ!」
「じゃあね~」
「そして本当に帰るの!?」