野望
俺はそんなことを考えると教室へと入った。実はどんな視線にさらされるか不安で教室前で立ち止まっていたのだ。
だが、いつまでも立ち止まっているわけには行かない。俺は思いっきりセンサーにタッチした。思い切りセンサーに触ったからとはいえ、勢い良く開く訳ではない。むしろ、反対にいつもよりゆっくりと開いたような気がした。
俺は平静を装いつつ教室へと入る。教室へ入るとやはり視線を集めた。あれほどインパクトがあるスピーチをしたのだ。当たり前だろう。
透明化する魔法があったら今すぐにでも使いたいと思いながら俺は自席に座った。すると、見覚えのある少女が歩み寄って来る。
あの、先生立ってますけど!明らかに説明始めようとしていますけど!
彼女はまったくそんなことを気にも留めず俺へと話しかけてきた。
「君、同じクラスだったのか。いや~~実に面白い学校生活になりそうだよ」
当然、自分が説明し始めようとしたのにいきなり立ち上がり俺と話し始めたらいい気分はしないだろう。
「もうすぐ、これからの予定について話があるだろうから、座ってくれ。話はまた後でね」
「あ、本当だ。気づかなかったよ」
彼女はハッハハと豪快に笑いながら戻った。あんまり、刺激しないでくれ。新学期早々説教を見るとか嫌だぞ。説教を喰らうのも勿論嫌だが、見るのも好きじゃない。見ているだけでいやな気分になる。
「入学式お疲れ様でした。とりあえず、時間割と年間予定表を配布します」
配る際に前の人が若干好奇の視線で見てきたのを感じながら、紙を回し、受け取った紙を見てみる。
行事で特出事項があるとすれば、全魔法高校魔法戦闘大会だろう。俺と同じようにX粒子を放出できない体質の人でも、立派な魔法士になれることを証明するには重要なイベントである。
なにせ、ここで一位になれば魔法士としての実力でも劣らないという証左になる。そうしてこの機械が売り出されれば約30%の人が魔法を使えるようになるだろう。
それに、魔法士の家系に生まれながら魔法を使えないなんて苦痛を味あわせなくて済む。あんな思いをする人が居なくなる。
あ、つい熱が篭ってしまったな。もちろん、それだけではない。魔法系高校ならではの面白い行事がある。
それは魔法体育祭というものだ。字面から推測すると魔法を使って体育祭をやるのだろう。とんでもない記録が出そうだ。時期的にはコチラのほうが後になるな。
時間割だが、特殊な科目も勿論設けられている。魔法理論が一単位、魔法実践が二単位、対魔獣戦闘訓練が一単位だ。もちろん、この二魔学を卒業すると大学入試資格をもらえるようになっている。
特殊な科目が四単位もあるので時程的には大変なものとなっていた。具体的に言えば、七時限目まである日が二日あったり、土曜授業が設定されていることだ。
正直に言えば、みんな魔法士としてのキャリアを歩むのだから普通科目はそれほど要らない。普通科目を減らす代わりに休みが欲しいと思った。