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彼女1
彼氏の部屋に遊びに来ている。
「ねえ、何してんの?」
綺麗な目があたしの顔を覗き込む。
「んー、音楽聴いてる」
「なんの?」
まだ引き下がらない。
声が聞き取りやすいように片耳のイヤホンを外した。
「たぶん知らないよ」
「いいよ教えて」
「……やだ」
恥ずかしい…かも。
「は?」
「あたしがどんな歌聴いてるかなんて興味ないでしょ」
あ、ちょっと冷たくしすぎたかも。
「ない、けど」
彼氏は何か考えてるみたい。
「けど?」
少しの反省も交えて次の言葉を促す。
「やっぱなんもない」
「……なにそれ」
また片方のイヤホンを付け直した。
彼氏に似ている男の人への片想いの歌を聴いていたなんて、言えない。