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第1話 目覚め

初投稿です。稚拙な文章ですが完結を目標にがんばっていきます。

ひどい気分だ。


無重力空間に体が投げ出され、上も下もないまま体がゆっくりと回転している。

真っ暗な闇の中でぐるぐると視界が回っている。

朦朧とした意識の中でぼんやりと思う。

なんとか落ち着こうとじたばたと手足を動かし、意識の安定を保とうとするが、少し回復したかと思ったら誰かに頭を掴まれ激しく揺らされたような不快感が延々と続いている。

やめてくれと思う反面、この感情と付き合うことが最初にやるべきことだとわかり、少し安心もした。


ひどい気分だ。


初めての記憶は、最悪に近かった。






*********************************





「・・・・・・っ!」


どれほど不快感に絶え続けただろうか、何週間も耐え続けていたような気もするが数時間といわれても間違いではないように思えた。


(辛い時間は長く感じるというから、案外数時間しかたっていないのかもな。)


そんなことを思いながらゆっくりと意識が覚醒していく。

薄目を開けると、木造の天井が見えた。

板と板の間には隙間があり、土足で上がると土が下階に落ちる様が想像できる。粗雑な作りだ。

どうやら自分はベッドに寝転がっているのだろう。体ごと右を向こうと力を入れると背中に痛みが走った。


(いてぇ!背中の痛みか。神経が集まってて危険って話を聞いたことがあるな)


再び痛みを感じるのを恐れながらも、右手、左手と順に意識を傾けていく。

随分と筋肉が強張っている。だが骨折や怪我はしていないみたいだ。


(まずは一安心か。ここはどこだ?)


手足に力を入れては抜き、体をほぐしていく。


(とりあえず状況の把握からするべきだ)


しばらく体をほぐすと、再度体を右へ向ける。今度は痛みはなかった。

そこは6畳ほどの薄暗い部屋だった。木造の簡素なベッドがあるだけで、見渡す限り家具といったものはない。

木造のベッドはゴツゴツしており、シーツや毛布等はなく、藁のようなものをクッションにして掛け布団はない。

ひし形の窓からぼんやりと光が入っている。

外の景色を見たいと思い、ゆったりと体を起こす。足をベッドからおろすとザラとした感触がした。

何か履くものはないかと足元を探すと草履のようなサンダルを見つけた。

素早く履いた後、足に力を入れ、よろよろと何とか立ち上がる。


(体が動き方を忘れたみたいだ。どのくらい寝ていたんだ)


おぼつかない足取りで窓際までたどり着く。窓にはおそらくなにかの動物の皮が張ってあり、外開きの仕様であった。


(そういえば何も音がしない。人は近くで生活していないのか?)


窓へ手を伸ばし、開けることを躊躇する。


(もしかすると、窓の外には自分の全く知らない世界が広がっているんじゃないか。

いや、ここは俺が住んでいた場所じゃないだろう。そもそも日本なのか?ん?日本・・・日本かぁ)


詰まることなく日本という言葉が出てきたが、日本とはどういう意味だろうか。だが、意味はわからないはずなのになぜか涙腺が緩んできた。

数回瞬きをするが涙腺は緩んだままだった。


(なんだ?混乱して泣きそうなのか?・・・・・・だが今は周囲の確認をするべきだ)


この窓の外には自分の知らないものがあるだろう。なにがあるかはわからないが、ショックが強ければ瞳に溜まった涙がこぼれそうな気がした。

せめて涙はこぼさないでいようと思い、少し上を向く。

外の景色を見るのが怖いと思いながらゆっくりと窓を開く。


曇り空だ。雨が降っていたのであろう、空気が湿っている。

そのまま深呼吸し、新鮮な空気を取り入れると少しむせた。

目を閉じ、皮膚にまとまりつく空気の感触を確認する。


(知っている感覚だ。懐かしいというべきだろうか、梅雨が明ける前の様な、独特の感覚がする。)


目を開けた。雲が厚く、太陽の位置はわからない。おそらく朝か夕方だろう。

たとえ空気でも、自分の知っているものがあり安心した。

目線を下げると緑があった。窓を枠縁として一つの絵画のようであった。

奥に行くほど傾斜がつき、地面には草ともコケとも言えない植物が一面に生えている。

中央には人間2人が並んで歩けるほどの広さの道が手前から奥に蛇行している。道といっても、草を刈っただけの砂利道である。

左右には森だろうか、木々が生えており、10mも入れば日光が届かないほど深そうだ。

家や人工物はなく、軽くもやがかかっている。


(うん。見事なまでに知らない土地だ。そもそも俺は何をしていたんだ?)


思い出す。が、思い出そうとするとあの真っ暗の空間が出てきて脳をシェイクされていたことしか思い出せない。いやな記憶だ。

自分を見下ろすと、薄い緑の半そでに黒の長ズボンといった格好だった。

少し肌寒い気もしたが、動いていれば気にならない程度でそれほど的外れな衣装ではないと予想する。

そこで違和感に気付く。自分の腕はこんなに短かっただろうか?

身長は170cmを超えたぐらいだ。ついでに言えば、足は少し長いような気がする。全体的に筋肉質な体つきであり困惑はさらに強くなる。


(これは・・・・・・俺の体だよな?目線はもっと高かったような。目に見えるほど力瘤を作れたっけな)


自分の記憶ではもっと平凡というか、虚弱な体だった。


「俺は・・・・・・誰なんだ?」


初めて言葉にだした声は、思ったよりも大きなものであり、どこか自分のものとは思えず不安を掻き立てるだけだった。


およそ2100字でしたがどうでしょうか?感想を頂けると跳んで喜びます。

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