鼠のお守り
現代社会で疲れ果てた青年が体験した不思議な経験。
ほら、今日から都会で暮らすんだからこの御守り持って行きなさい!
いいよ、母さん。都会なんだから御守りとか似合わないよ。
5年後………
父さん、母さん、もう限界です。どうかこの親不孝者をお許しください…
メール送信…
この道は死者への道。
山道を歩いていると 変な看板が目に着いた。
【この道は死者への道】
山登りへ来たのは此れが初めてだ、なのでこういう看板があるのも当たり前なのだと思っていた。
この先は難所になってて、死人が沢山でているのだろう。
そう思いながら看板を越えて歩きだした。
不思議に思うだろう、この先死ぬかもしれない場所に自ら向かうのか…
しかし 何も不思議なことはない
何故なら死にに来たからだ。
私は都内の飲食店で5年間忙しく働いてきた、辛い事も耐え 歯を食いしばってきたが つい先日限界がきた。
上司との喧嘩だ、ケンカというには違う、一方的にやられたのだが…
上司とはソリが合わず5年間毎日怒鳴られていたし、殴られもした
それでもグッと耐えていた。
しかしその日は違った 出社そうそうイキナリ殴られた、理由を聞くと 私の顔を見ているとムカつくと言う
我慢の限界がきた私は反論した、それがまずかった
上司は社員を集めると集団でリンチをしたのだ
私は消え入りそうな意識のなか自分の情けなさと悔しい思いで震えた
暫くしてからアザだらけの体を起こし着の身着のまま電車に乗り今に至る…
看板を越え歩きに歩いた、しかし危険な場所など無い平坦な道だ
もう昼過ぎなのだが人がいない、いや、鳥の声さえ聞こえない。
おかしいと思いつつも歩き死ねる場所を探した。
ポポポポポポ、ポポポポポポ
変な鳴き声が聞こえた、そう思った次の瞬間 目の前を凄く細長い鳥が飛びさった。
私はビックリして尻もちを着いた。
暫く惚けていると後ろから声が聞こえた
もし、、もし、お若いの何処から来なさった?
ふと、振り向くと白髪の老婆が立っていた
あんた、この山に死ににきたんなゃろ?
余りにも唐突に聞かれ はい、と答えてしまった。
…なに 驚きなさんな、長年ここに生きてると あんたみたいのがチラホラ来るんなゃ
どれ、あたしゃの村まで付いてきなゃ、直ぐそこだで…
私は老婆に付いて村に向かった、無くすものは何も無い
そんな事を考えながら歩いた
暫く歩くと小さな集落が見えた。
着いたぞ、、
そう言うと村から人がチラホラ出てきた
不審がるでもなく私を見ていた。
ほれ、汚れてるでろ?風呂さはいってこい。
老婆の指さす方向に温泉がある、私は言われるがまま温泉に浸かった
温泉に入っていると死ぬ気が失せていく、、
風呂から上がると食事が用意されていた
何があったがしらねぇけど、おめぇみたいな若いのが死ぬのはもったうねぇ、 暫くこの村で養生しねぇ
老婆の持て成しに私は身も心も解されていった。
3日ぐらい経っただろうか村の人とも打ち解け満喫していた
しかし何もする事が無い私は村の探索をし始めた。
綺麗な川、清々しい木々。会社の事を忘れ楽しみ始めた
ん?アレは神社?興味を楚々られ神社に入った
すると境内に白装束をきた若く綺麗な巫女様がいた、ボーっと見ていた私に気ずいた巫女様は驚いた表情でスッと近づいて来た。
貴方なにをしているのです?
不審に思ったのだろうか、そう思った私は
いえ、最近この村にお世話になって、村の散策をしてまして、、、
私が言い終わるのも待たず巫女様は
早くこの村から立ち去りなさい!
凄い剣幕に驚き、老婆の家まで走って逃げ帰った。
老婆に神社の事を聞くと、その神社はネズミの神社だそうで巫女様は昔 頭を打ってどうかしてしまったらしい。
しかし、若く綺麗な巫女様に
また会いたくなった私は夜コッソリと神社に向かった。
貴方、まだ居たのですか⁈
わあっ!い、いや
そう私がしどろもどろしていると
ついて来なさい …
そう言い残し歩きだした、暫くすると明かりの漏れる小さな小屋の前に着いた。
明日は肉汁ー明日は肉汁ー!脳味噌豆腐ー!
ワハハハハアハハッ
中から老婆や村人達の声だ。
恐る恐るなかを覗くと、そこには猫や狸、熊や鹿、、動物が人みたいに立ち 包丁を持って踊っている。
私はそれを見た瞬間に血の気が引いた、、、後ずさりをした時
ドンッ
つまずいた
人間!暴露たぞ‼
捕まえて血祭りじゃー‼
恐怖で腰が抜けそうになった
その時 巫女様が手をパンッと叩くと強い風が吹き獣達が中を舞った。
早く此方へ来なさい‼
走る巫女様の後を追っていると、巫女様がどんどん小さく成っていき、白いネズミになっていった。
後ろから追って来る気配も消え街の灯りが見え国道に出た
目の前に駅がある 。ふと安堵し後を見ると白いネズミが此方を見ている
私が小さくお辞儀をするとスッと森に消えて行った。
方針状態になりながらも帰りの電車に乗った。
しばらく乗っていると
特急券お願いします。と車掌さんが来たので財布を出すと破れた御守りが落ちた、それを拾うと破れた白いネズミの絵が出て来た。
瞬時に今までの事が夢ではなかった事を理解した。
そして御守りを握り締め涙を流した。
電車は暗い夜を切り裂き街へ消えていった。
fin
この後、青年は 両親に感謝を伝えに 実家に帰省しました。