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仮想世界の創造神  作者: カナメ
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第16話 転機

ご意見、ご感想があればください。

テコ入れする気はサラサラないですが参考にはしますので。

どうやら私の人生はここで終わりを迎えるみたいだ。



この魔法学院の理事長であるボルトアに雇われて早10年…警備員兼掃除屋として仕事をこなしてきたが後悔はない。



ある時は学生を殺した。

理由も知らず。

ある時は教員を殺した。

理由に興味などなかった。

ある時は……思い返してみると殺してばかりだな、私は。



ボルトアに命じられるがままに、私は作業のように人を殺した。

それらが殺される理由にも、何故殺す必要があったのかも私は一切知らない。

ただ殺す。



……私は楽しかったのだろうか?

人を殺す事が。

ある時、死体を処理する担当のドルイドが聞いてきた。



『人を殺す事に抵抗はないのか』



……それに私は答えられなかった。

何故?そんな事を考えたことすらないからだ。ドルイドも答えなど期待していなかったのか、話はそれで終わった。



だが今ならきっと即答できるだろう。



「抵抗などない。苦にもならない。いやむしろ……」



楽しかった…………かもしれない。



感覚という曖昧なものだが、私は嬉々として人を殺していたかもしれない。

ならば私はやはりどこか壊れているのだろう。



脳みそや身体をあちこち弄られた私を、その弄った張本人たるボルトアが呟いた言葉を私は今でも鮮明に覚えている。



『壊れたか。従順さを求めるあまり自我が崩壊……やはりここら辺のさじ加減が難しいな』



私は精神が崩壊したらしい。

ならば今こうやって思考しているのは誰だ?

私は私か?

私は……誰だ?



眼前で魔法学院の守護獣ガーゴイル数十体を相手に、鎧袖一触がいしゅういっしょくの強さを見せつける黒騎士に、私は私自身のことを聞きたい。



「ボルトアはどこだ?」



私とはまた違った意味で感情がこもっていない目が妙に気になる。

だが、考える前に身体が自然と動く。

黒騎士に槍の矛先を向ける。

誰が見ても明らかな私の敵対行動に、黒騎士は深々とため息を吐く。



「自我を崩壊させて忠実な人形を作るとは……ボルトアはオレの予測を悪い方向で上回っているな。システムのバグか?NPCの設定人格の暴走?または隠しパラメーターの『欲望値』が関係している?……やはりわからん」


黒騎士は剣を構えもしない。

ただ一人でブツブツと意味不明なことを口走っている。

そんな一人の世界に没入している黒騎士に私は構わずに問う。



「私は……私か?この心は私だけのものか?この肉体は本当に私のものか?」



黒騎士に負けず劣らずに意味不明な事を一方的に問う私を、しかし黒騎士は真剣に受け止めた。



「まるで哲学だな、その問いは。私は誰か?深いようで浅い、浅いようで深いな。さて、肝心の答えだが簡単だ」



「……教えてくれ。その答えで私にも何かきっかけがつかめれば」



「自分で決めろ」



私に最後まで言わせず黒騎士が告げた言葉に、私は唖然とした。



「自分で……?」



「あぁ。自分のことは自分しか分からない。他人がどうこう言おうがアンタはアンタだ。自分で自分が分からない?いや、それは分かろうとしていないだけさ。自分自身と逃げずに向き合えばあっさり解決、おめでとう」



「…………そうか。随分と簡単なことだったんだな」



「あぁ、難しく考えがちなもんだが簡単さ。昔の偉人も言ってたぞ、自分にとって最大の敵も味方も自分自身だってな」


……真理だな。

ならば今やりたいことを自分で決めるとしよう。

私はあらんかぎりの意思をこめて自分自身の身体のコントロールを奪い返す。



そして改めて、黒騎士に槍を構えた。



「…それはアンタが自分自身で決めたことか?」



「あぁ、私はお前を殺したい。言われるがままに殺してきた私が初めて自分から他人を殺したいんだ。これは……これだけは間違いなく私自身の意思だ」



「…………そうか。ならばお相手しよう。オレも黙って殺される程お人好しじゃないからな」



だが言葉とは裏腹に黒騎士は剣を構えもしない。

ただその場に棒立ちしているようにしか私には見えない。



だが決してナメられているわけではないと、私は直感で悟った。

これが……これこそが黒騎士にとっては自然な型なのだ。

迂闊に間合いに踏み込めば即座に私の首は切り落とされるだろう。



だが武器の間合いは私の方が広い。

黒騎士の間合いの外から一方的に攻めれば……!



そしていざ一歩踏み出さんとした私に、黒騎士が声をかける。



「死ぬ前にやりたい事を自分で見つけ、決められた事にまずは祝福を。そして、これはその景品だ」


黒騎士が目にも止まらぬ速さで剣を振り抜く!

残像すら残さないその圧倒的な速度に私は鳥肌がたった。



「あの世では好きに生きろよ」



「?……な…」



何を言っている?

そう口にしたはずが最後まで発せず視界が歪む。

いや、歪んでいるのは私自身か?

おかしい……体に力が…入ら……ない…


目も……霞ん…で…………?



わた…し……は…………もう…………殺さなくて……いいん…だ………な…?



あ…ぁ………あんたを……ころし……………………










首を胴体から断たれた名も知らぬ警備員の死体が、無造作に血を撒き散らしながらゆっくりと倒れる。

ひと足早く地面に転がっていった頭部の目に既に光はない。ただ開かれたままの二つの眼は虚空を映すのみ。



そしてオレが手にしていた剣もこれで役目を終えたと言い残すように、バラバラと無数の破片となって朽ちる。

一人の死を迎えたと同時に、一つの道具もまた死を迎えた。


「これで本日2本目か。やれやれ、これでボルトアを殺るつもりだったのに我ながら大盤振る舞いしちまったな」



頭部を完全に覆うフルフェイス型の兜。その出っ張り部分を左右同時に押して仮面状態にしてから頭をポリポリかく。



別に本当にかゆいわけではないのだが……なんとなく割にあわねぇというジェスチャーだ。

誰に対して?



決まってる。

自分自身に、だ。



あの『水龍』をも一刀両断した『神器級』の剣の名は《乾坤死至》(けんこんしし)。



『乾』は天を、『坤』は地を意味する。つまり天地すべてのあらゆる存在を死に至らしめる……という何かこう我ながら恥ずかしい設定にした使い捨ての武器だ。

1本につき1回しか使えない消耗品だが、その威力はただの一振りで龍をも殺す。


……名も知らぬ警備員に対する景品とは、つまりそういう意味だ。



「これのストックはもう残り少ないんだけどなぁ」



事実、アイテムボックスにある在庫はもはや一桁だ。

常日頃からストックに余裕をもつ性分のオレにしては心もとない状況。

まぁ元々から手に入りにくい『神器級』の中でもさらに貴重ともいえる武器だから仕方ないが。



「ボルトアは別の武器で始末するか」



敵の価値としてはボルトアなんぞよりあの警備員の方が価値はあったから言うほど後悔はしていない。

一刀両断とまではいかないが、あいつを殺すだけならいくらでも代わりの武器はあるのだから。



それからすぐにオレは理事長室に立て籠っていた理事長を難なく殺害した。

『水龍』の死は契約した本人ゆえにすでに知っていたはずだが、最後までその死を信じてはいなかった。

当然と言えば当然かな。



なんせこの世界で上位の龍殺しに成功したのは過去に二人しか存在しなかったのだから。

しかもあくまで遥か古代の伝説として。


確かに上位龍種は強いが、それはステータス的なものだけの事。

決してNPCに倒せない範疇ではないんだがこの世界では妙に神格化されすぎていて一線をひかれている。



オレにしてみれば龍といえども戦いやすい相手だ。

元々が強いから攻撃パターンが素直なのがその理由でもある。

しかしまぁ、ステータス値が高いオレが偉そうに自慢できる話でもないか。

勝って当然の相手。これで慢心することなく日々是精進!



そうしてオレは半ばアリアに関する八つ当たりを終えて血まみれの理事長室を後にした。

後に残るは残骸と化したガーゴイルと二つの血まみれ死体。


あとはまぁ、間の悪い事にその場に居合わせた生徒の悲鳴だけだった……。










黒騎士拠点の古城にて……。



深夜に四人の人間が奇襲を仕掛けた。

たかが人間。

しかしされど人間。



脆弱な種族である人間にも、しかし強者は確実に存在する。その数は全体から見ればほんの一握りにしかすぎないが、その一握りの人間がかの暴虐の限りを尽くした『魔神クロウリー』を討伐したのは記憶に新しい。



その『魔神殺し』を成し遂げた四人……《四聖》が黒騎士の拠点を蹂躙した。



抵抗する黒騎士も四人。



かくして人間と魔人の死闘が人知れず始まりを告げる。



時刻はアーシャがアークワンド魔法学院を去ろうとするタイミング。



古城は帰る場所ではなくなり、死闘の場へと変貌することをアーシャはまだ知らない。


さて、次話からは新展開突入……かもしれません。

作者自身も現段階では内容がまったくゼロです!

どんな内容になるかはお楽しみに~…………あまり過度な期待はしないでね(汗)

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