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欠忘症

作者: んたろう

ある時人は忘れることができなくなった

脳が記憶でパンクした人は発狂して自殺をするようになった

急を要した人々は、忘れるための技術を生み出した

人々は記憶を機械をつかって捨てなければならなくなった

街は人々が捨てたゴミで溢れかえった

ゴミを処理する仕事ができた

でも次第にゴミ処理場は飽和してきた

それでもゴミは増え続けた

ある科学者が論文を発表した

記憶は世代を超えて蓄積されることが判明した、と

人は元々忘れるという能力は持っていなかった

必要なくなった記憶は、脳の中のゴミ箱に捨てられているだけ、だという

そしてそのゴミ箱は後世に遺伝される

人類は一つの生物として、そのゴミ箱を絶滅するまで所持しなければならない

しかし、先代のゴミ箱の中の記憶データが全て遺伝されるわけではない

世代交代の際に、いくらかは処理される

遺伝されたゴミ箱には、一人の人間が一生を終えるのには十分な容量が残されるはずなのである

ではなぜ、このような事態に陥ってしまったのだろうか

それはひとえに現在の情報多寡社会が原因である

人類の進化が圧倒的な数の情報に追いつかなくなってしまったのだ

世代交代の際の処理では間に合わなくなってしまった

現在私たちが使用している、忘れるための機械は、この世代交代の際に用いられる遺伝因子を抽出して作り出したものである

しかし、この機械を用いてもゴミ箱を空っぽにはできなかった

科学の限界だった


人はそのゴミを有効活用できないか議論しだした

リサイクルできないか、なんて話も出た

けれどいったんゴミになってしまったそれには、有用性はなくなっていた

地球はゴミだめになってしまった

しかしその頃には、人は忘れるためにいちいち機械を使わなければならないことにうんざりしてきた

誰かが言い出した

新しくなにも知らなければ、忘れる必要は無くなる、と

ゴミも増えなくなるし、面倒ごともなくなるので、人々は賛成した

生きるために必要なもの以外の知識は捨てられていった

知に関することはどんどん廃れていった

科学は必要なくなった

情報という概念は、なくなった

人々は原始的な生活に戻っていった

言葉も失われた

喜怒哀楽以外の感情もなくなった

動物と見分けがつかなくなった

人類は完全に退化してしまった


何万年もの歳月が経った

人々が捨てた記憶という名のゴミは、古い昔の地層になり

新たな大地が生まれ、地球は緑で覆われ、まるで楽園のようになった

かつて人間と呼ばれた生き物は、今やケダモノと化した


そんな中、誰かが思い出した

「私は人間だ」


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