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 これはいったいどういうわけか。


 俺、ノエル・ファン・エデイルは驚きのあまり声もでなかった。


 左胸を剣が貫いた感触は残っている。

自分の体から血が大量に吹き出し、視界が赤で染まったのも分かった。


 自分は絶対死んだと思っていた。



 だが、ふと気付くと誰かに抱えられているような感覚があった。


 まさか、俺は生きているのか?


 驚いて目を開けると、目の前にあったのは見知らぬ女性の顔で、目が合うと彼女はにっこり笑った。

俺はどういうわけか小柄な彼女の腕の中にすっぽりおさまっており、自分の身体を自由に動かせなかった。

 しゃべろうとしても、口から出るのはわけの分からん言葉だけ。

 どんな時でも冷静になれるというのが特技だったはずだが、さすがにこの状況で冷静にはなれない。


 どうやら俺は転生したらしい。


 視界に入った自分の手の小ささをみると、その事を認めざるをえなかった。




 俺は父親らしき人に手わたされた。

笑顔で俺を覗き込む彼は銀色の髪に真紅の瞳をした美男で、強大な魔力を感じた。

母親と思われる人は今まで見た事もないくらい美人で、ゆるくウェーブした金髪にサファイアのような瞳だった。


 はじめに俺を抱えていた女性は言動から推測するに産婆だろう。

産婆に視線を向けて、俺はある驚愕の事実に気がついた。

 産婆の頭には、なんとウサギの耳が生えていた!


 彼女は、もしかして獣人だろうか?


 伝説や、物語でしか出てこないような種族が目の前にいた。


 となると、ここは俺が元いた世界とは異なる世界?


 魔力の存在を感じるということは、元いた世界と同様に魔法は存在するはず。

しかし、あんなに溢れていた精霊の気配が全くしない。


 ……情報が少なすぎる。


ともかく、自分の身体が縮んでいる事だけははっきりと理解した。




 俺は父親によって別室に運ばれた。


そこには落下防止の柵で囲われた小さな寝台が置かれており、俺はそこに寝かされた。


ああ。俺はこんなに小さな赤子用の寝台に収まってしまうのか……。


 父親は、何やら慌てた様子のウサギに呼ばれて部屋を出ていってしまい、俺はしばらく寝台に放置された。

外が騒がしいのが気になるが、一人になれるのはチャンスだ。


 まずは転生前と同じように魔法が使えるかの確認。

意識を集中させ、魔力を集め、爪の先に小さな火を灯す。

……どうやら魔法の原理は同じようだ。

魔法が使えると分かっただけで、かなり安心した。


 それからしばらくは、人がきそうに無かったので他の魔法も試してみる事にした。


雷、水、風……闇、光。

木と土はこの部屋で確認はできなさそうだ。

 試していて、闇が異常に扱いにくく、光が一番扱いやすいと思った。 光属性に転生したのか? もしくはそういう……光が使いやすく闇が使いにくい世界なのだろうか?


 …………やはり情報が足りない。自由に動き回れるようになるまでは、情報収集に徹しよう。



 そう決め、人の気配がしたので灯していた光を消す。



 入ってきたのは父親とウサギで、俺の隣に一人の赤ん坊が横たえられた。


「リオネル。お前の妹のユリアだ」


 父親はそう言って俺と彼女の頭を交互に撫でた。


リオネル。

それが俺の新しい名前で、隣の彼女は妹のユリア。


という事は、俺は双子に転生したのか。

前の人生で俺は双子ではなかったし、男の兄弟しかいなかったので、かなり新鮮だった。

母親があれだけ美人なんだ。この子も美人になるだろうな。


 真っ直ぐみつめてくるユリアの蒼い瞳の中には、リオネルになった俺がいた。




 それからしばらく、俺は赤ん坊の振りをした。

ユリアの真似をしていれば良いのだから、難しくはなかった。

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