わたしといっしょにうたおうよ!⑥
★ クロ編 ★
『私は飛びたい あの鳥のように 空を舞いたい』
母の膝の上で、母の歌声に耳を傾ける。『ライジング・バード』というこの歌を、母はよく歌っていた。
父――いや、『あの男』はろくでなしで支配的だった。口癖は「俺の言う通りにしろ」。何か気に入らないことがあると、すぐに母や私に暴力をふるった。今にして思えば、自由に空を舞う鳥への憧れのこもったこの歌は、母の気持ちを代弁していたのかもしれない。
ほどなくして二人は別れ、私は母に引き取られた。あの男は街から出て行ったと、風の噂に聞いた。とりあえず、それ以来会っていないのは確かだ。
そんな親を持った私は、友達も作らずぽつんと一人で『ライジング・バード』を日がな一日歌ってばかりいる子供だった。
ある日、母の勧めで私は夜会に出ることにした。
初めてのステージも、大勢の聴衆も、私にはプレッシャーにならなかった。むしろこのステージが、私のいるべき場所だという確信があった。
私は常日頃母から聴かされ、また自分でも数えきれない回数歌ってきた『ライジング・バード』を歌った。伸びやかに。自由に。
結果は一〇〇点。幼い少女が満点を取ったということで、会場は割れんばかりの拍手喝采に満ち溢れた。他方、私は会場の熱気と真逆に、ものすごく冷静に、ごく当然の結果と受け止めて落ち着き払っていた。私は高慢と陰口をよく叩かれるが、否定はしない。欠点も含めて私は私なのだ。
そして、私はそれ以降も一〇〇点を常に叩き出した。いつしか、私は歌姫と呼ばれ、熱狂的なファンが多数付くようになっていた。
人気が出ると、過剰な信仰心や下心を持った者が近づいてくるようになる。私と組みたいと言う者があまりに多いので鬱陶しくなって、夜会で九九点を取ることという無理難題を吹っかけて追い払うのが習慣になった。この条件が口づてに広まると、自然とこういう手合いはいなくなっていった。
それなのに、久方ぶりに一緒に歌いたいと言う者が現れた。アメリだ。
アメリは一度失敗したが、二度目に私に並ぶ一〇〇点を取った。私は内心嬉しかった。ついに一緒に並んで歌える、対等な仲間ができたのだ。
アメリはいいやつだ。私心がなくて真っ直ぐ。私と正反対で情熱的。
アメリと初の練習中、何曲目かでアメリの連れ合いであるカンナが待ったをかけてきた。私たちのための新譜を創らせて欲しいという。
私は最初、『ライジング・バード』で十分だと断ったが、私がアメリの歌を拒否したことを指摘された。そう言われると、私も立場が弱い。頭の回る娘だ。
「気に入らなければ没にしていい」とまで言うので、結局、その話を受けることにした。
そして、何週間かぶりにカンナが新譜を手にして現れた。『シング・ウィズ・ミー』というその新しい歌は、歌いやすさを重視したものだった。そのようにした意図を問うと、私たちに憧れた子供たちやファンが、歌真似をしやすいようにそうしたということだった。
私が他者と一緒に歌うのを好まないのは、実力の伴わない者と一緒に歌いたくないからだ。だから、各自で勝手に歌真似する分にはどうこう言う気はない。
ただ、『ライジング・バード』を捨てることには葛藤があった。母との絆の歌。子供の頃から歌ってきた、想い出の歌。でも、この新しい歌は、もっと高い次元で、網のような絆を創ろうという歌だった。
少し悩んだ末に、私は夜会での『ライジング・バード』を一時手放すことにした。歌える場は、夜会だけではないのだから。
私は、カンナを対等な仲間として認めた。
私たちは、今日、この夜会で『シング・ウィズ・ミー』を初披露する。歌手用控室に向かう途中、ばったり出会ったミケが癇癪を起し、アメリが何事か説得して、ミケの癇癪は収まり、彼女は礼をして去って行った。
「調整は完璧ね」
戻って来たアメリに言う。もともと歌いやすさを重視した歌だけあって、数日で完璧にマスターできた。
「うん、あとは歌うだけだね」
アメリは楽しそうだ。恋人であるカンナの歌をこの大舞台で歌えるのだから、嬉しくてしょうがないのだろう。
控室で最後の打ち合わせをしていると、出場を促すアナウンスが聞こえてきた。私たちはステージに上がる。
今まで数えきれないぐらい登ったステージ。聞き慣れた聴衆の大歓声。輝くスポットライト。私たちの紹介がアナウンスされ終わると、前奏が始まり、心地よい緊張感に包まれる。
『ねえ手を取って 私と一緒に歌おうよ みんなで歌おうよ あなたの優しさが好き みんなの笑顔が好き。
手を合わせて 顔見合わせて 一緒に歌おう さあ伸びやかに さあ高らかに。
顔上げて 空を見よう 私たちの歌が響いてる 素敵なハーモニー。
歌おうよ この歌を 歌声が輝いてる シング・ウィズ・ミー』
新曲を高らかに歌い上げる。観客からの拍手喝采。上気した体を風に冷やしてもらいながら採点を待つ。
一〇〇点.
この歌はみなに受け入れられたようだ。
「やったね、クロ!」
アメリが抱きついて来る。参ったな、スキンシップはあまり得意ではないのに。でも、アメリの喜びが大きいのは私でも理解できる。アメリとカンナにとっては、三人でステージに立って一〇〇点を取った気分だろうから。
私たちは、鳴り止まない拍手を受けながらステージを降りた。
ステージ施設を出ると、毎回握手やサインを求められるが、誰か一人に応じたら全員にやらなければならなくなるから、悪いけど取り合わないようにしてる。これは、アメリにもきちんと言い聞かせてある。
「アメリー! クロー! やったねー!!」
「カンナー!!」
群衆の中から出てきたカンナにアメリが飛びついてキスを交わす。カンナがアメリの恋人なのはもう有名な話なので、これは特別。それにしても、人前だというのに遠慮がない。一部から、ひゅうとか、きゃあとか声が上がる。
「ねえ、二人とも。これから私の家に来ない?」
「え、いいの!? いつもはいくら遊びに行きたいって言っても駄目だったのに」
アメリが驚く。
「私だって気紛れなときぐらいあるわ」
今日の私は機嫌がいいらしい。我ながら意外な提案だ。
「そうと決まれば、クロの気が変わらないうちに行こうよカンナ!」
「ええ」
アメリとカンナは、隣町の四人組と別れの挨拶を済ませる。こうして、私は人生で初めて友人を自宅に招くこととなった。
「着いたわ」
お世辞にも、歌姫というご大層な称号の持ち主が住むには似つかわしくない、おんぼろアパートの二階が私の住まい。私は複雑な家庭事情に加え。この家をからかわれるのが嫌で、誰かを招いたことがない。でも、アメリとカンナなら信頼がおける。
「あれ? 中から歌が聞こえる……『ライジング・バード』だ!」
アメリが耳を澄ます。
「母よ。もともと『ライジング・バード』は母から教わった歌なの」
「へー」
感心するアメリたちを横に、玄関の鍵を開ける。
「ただいま、お母さん。今日は友達を連れてきたの」
「あら、クロがお友達を連れてくるなんて初めてね。ちょっと待っててね」
母が布団から出て、こちらへ来ようとする。
「母は脚が少し悪いの」
母の移動を手伝いに向かう。
「あ、私たちも手伝うよ!」
アメリとカンナも上がってきて手伝ってくれた。
「ごめんなさい。普段猫なんて呼ばないから、座布団が足りなくて」
狭い和室に四人が座る。家具らしい家具といえば、タンスと食器棚とちゃぶ台と冷蔵庫ぐらい。ところどころから隙間風が入ってくる。二つある座布団は、脚の悪い母がまず一つ。残り一つはアメリとカンナの激しい譲り合いの末に、じゃんけんでカンナが使うことになった。
「今、お湯を沸かすから」
コンロに水の入ったやかんを置いて、火を点ける。
「ごめんなさい、お茶だけで。もてなしにお菓子も出せなくて」
「大丈夫だよ。ていうか、クロ謝りすぎ。別に謝らなくていいからさ、いつもみたいなかっこいいクロでいてよ、ね?」
「うんうん」
アメリたちが気を使ってくれる。普段は高慢と陰口を叩かれる私も、どうも家庭のことになると気が弱い。
「あなたがアメリちゃんで、あなたがカンナちゃんね。お話はいつもクロから聞いてるわ。元気でいい子たちね。クロもやっとお友達ができたのね」
母が嬉しそうだ。私も嬉しくなってつい尻尾が立ってしまう。この、バカ正直な尻尾め。恥ずかしい。
「よかったら、いろいろとお話を聞かせてちょうだい。この脚だと、外出もままならなくて」
私たちの共通の話題といえば、歌。歌について、私たちは語り合った。また、外の出来事が知りたいという母に、まりあという、アメリの師匠である聖職者のことや隣町の四人組の話。またたびや日向ぼっこスポットの情報なども話題に上がった。
ありがたいことに、二人は家庭の事情については訊かないでくれた。
「あ、朝が近いわ。ちょっと長居しすぎたかも。お暇しましょう、アメリ」
カンナの言う通り、朝が近づいていた。もうすぐ寝る時間だ。
「あらまあ。時間がたつのが早いわね。ありがとう、楽しかったわ」
「いえ、こちらこそ」
母の言葉に、アメリとカンナがぺこりと頭を下げる。
「道分かる? 途中まで送った方がいい?」
「大丈夫だよ。私、土地勘いいから」
「そう。ならいいのだけど」
三人で再び母を布団に戻すと、私と母はアメリとカンナに別れを告げた。
私は座布団と湯呑を片付け、母の隣に布団を敷いた。
「こんなに楽しい一日は初めてだわ、お母さん」
私は母にそう言って、床に就いた。私は、『シング・ウィズ・ミー』のことを思い出しながら眠りに落ちた。
一週間が経った。夜会の日だ。今日は月が出ていない。月がないと何だか陰鬱な気分になる。
いつものようにステージに上がり、歌を歌っていると、ステージ下の最前列に、見覚えのある、そして見たくもないし二度と見ることもないと思っていたあの男――父の姿があった。黒いスーツに身を包み、くわえ煙草と、完全にチンピラの風体だ。私と目が合うと、不敵ににやりと笑った。
なぜ、今頃この街に戻って来たのか。何が目的なのか。私は過去の虐待経験を思い出して、軽くパニックになりかけ、一瞬声が裏返ってしまった。
なんという凡ミス! 私の尻尾の先が、が苛立たしげに振れる。
しかし、(今はとにかく歌わなければ)という思いが、何とか調子が完全に狂うのを踏み留まらせた。
歌が終わった。先ほどあの男の居たところを見ると、いつの間にかいなくなっていた。幻とか見間違いならいいのだけれど……。
そして、採点結果が出た。
九〇点。
やはり、私のミスが減点を招いた。観客も、今までなかった事態に騒然となっている。
ともかく、今はステージを降りる。痛恨のミスを犯した自分が、許せなかった。
「ねえ、クロ。さっきのミス、らしくないよ。何かあったの?」
「何でもないわ。私だってミスする時ぐらいある、それだけよ。ごめんなさい」
心配して声をかけてくるアメリに心配をかけまいと努めて平静に応える。
ステージ施設を出ると、いつものように観客が押し寄せてくる。しかし、今日は何があったのかと心配する様子だ。
そんな群衆の中から、あの男が姿を現す。
「久しぶりだな、クロ。父さんだ、憶えてるか?」
あの男は鷹揚に言う。忘れたくても忘れられるものか。父親という発言に、場がざわつく。一番知られたくない存在を大勢に知られてしまった。
「クロ、お父さんって……」
「……今更何の用? 私は二度と顔も見たくないんだけど」
問いかけてくるアメリを制し、あの男に睨みを利かせた。耳が後ろに向き、尻尾がアーチ状に曲がり、毛が逆立つ。激しい憎悪が体現される。
「お前は、今日から父さんと暮らすんだ。さあ、来い。お前の歌と名声は父さんの力になる。子供は親の言うことを素直に聞くもんだ!」
あの男が、私の腕を鷲掴む。
「痛っ!」
力任せの引っ張りに、思わず悲鳴を上げる。周囲がざわついたり、きゃあと悲鳴が上がったりするが、誰も助けてはくれない。それが他人だ。他人は当てにならない。
「おじさんやめなよ! クロが痛がってるじゃない!」
そんな他人の中に、お人好しがいた。アメリがあの男に掴みかかって、引き剥がそうとしてくれている。
「邪魔するな、餓鬼!」
アメリが顔を拳で殴られて吹っ飛ぶ。この男、よくも私のパートナーを! 絶対許さない! 歌姫? そんな名声、もうどうでもいい!
私はあの男の手に噛みついた。「ぐあっ」という悲鳴とともに掴む力が緩む。私は、掴まれた手を逃れ、あの男に飛び掛かった。
「やっと前に出れた!」
「何が起こってるの!?」
「クロ様!」
「お願い、クロを助けてあげて!」
群衆の中から、カンナ、隣町の四人組、ミケが姿を現す。アメリが私を助けるように言うと、乱闘中の私に加勢してくれた。ああ、こんなにもお人好しがいるなんて。
大人の男が相手でも、さすがに一対七では分が悪い。さらに追い打ちのように、見物人の中からも、数人加勢が現れた。
「くそっ、離せ! クロ、父さんは諦めないからな!」
「二度と私の前に出てくるな!」
「クロ! もうやめときなよ!」
あの男は、押さえつけようとするみんなを振り払い、逃げて行った。石を投げつけようとする私を、今度はアメリが制止する。
「こんなに感情的なクロを見るのは初めてだわ。良ければ事情を説明してちょうだい」
カンナに問い詰められる。私は荒れた息を鎮めながら、平静を取り戻す。あの男が父だということが大勢に知れ渡ってしまった。もう、隠しだてはできない。
「あの男は、とうの昔に家を出て行った私の父よ。性格は、傲慢で小物」
衣服の土埃を払う。私の言葉に、みなが声を失う。そして、私は雷に打たれたように自分の言葉にハッとした。
あの男が、魔手を私だけに留めておくだろうか? みるみる血の気が引いていく。
気付くと、私は走り出していた。
「待って、クロ!」
後ろでアメリの声が聞こえたが、私の足は止まらない。
後方をちらっと確認すると、アメリ追ってきている。さらに、少し遅れてカンナも続いているようだ。
私は再び前を向くと、弾丸のような勢いで走り続けた。
自宅に戻った私が、ドアノブに鍵を差し込み捻ると、空転して手応えがなかった。逆に鍵をかける方向にひねってみると、ロックされる。つまり、鍵が開いたままになっていた事に気付いた。いつも、戸締りはきちんとしているし、母はまず出歩かない、訪問者もごく稀なので、普段ありえないことだ。嫌な予感に背筋が寒くなる。再び鍵を開け、中に入る。
「お母さん、いる? 大丈夫!?」
電灯のスイッチを入れると、ひっくり返ったちゃぶ台と。部屋の隅にうずくまって震える母の姿が目に入った。すすり泣く声も聞こえる。
「お母さん!」
慌てて母に駆け寄る。
「クロ! あの人が、あの人が戻って来て、クロを引き渡せって……」
「どうして、ドアを開けてしまったの!?」
「母さんは開けてないわ! ドアをカチャカチャやる音が聞こえたと思ったら、いきなりドアが開いて!」
震える声で応える母が、私にすがりついてくる。顔に、腫れがあった。ひっくり返ったちゃぶ台と併せれば、大体何が起こったのか想像がつく。あの男、私だけじゃなく、母まで! 怒りで尻尾の毛が逆立つ。許さない! 許さない! 許さない!!
「クロ、何があったの!」
アメリの声だ。ドアを激しく叩く音がする。
「――――!」
アメリに応えようとして声を出そうとしたが、声が出ない。どれだけ振り絞ってみても声が出ない! 私はどうしてしまったの!?
「お邪魔します……クロ、おばさん、何があったの!?」
その時、アメリがそっと家に入ってきた。ひっくり返ったちゃぶ台と様子がおかしい私と母に驚く。私は喉を指差し、必死にアピールした。
「何、クロ。喉がどうしたの!?」
伝わらなない、このもどかしさ! どうしたらいいのだろう!
「ねえアメリ、クロとおばさんがどうかしたの!?」
外からカンナの声も聞こえてくる。
「あの、クロ。私、勝手に入っちゃって申し訳ないんだけど、カンナも中に入れていい?」
首をこくこくと縦に振って応える。
「カンナも入って!」
アメリが、外にいるカンナに呼びかける。カンナも中に入って来た。
「何があったの?」
「私も分かんない。クロ、喉をどうかしたらしいんだけど……」
「これ、使って」
喉を必死でアピールする私に、カンナが五線譜とペンを貸してくれた。私は早速、五線譜の裏に『こえがでない』と書いた。
「え!!」
アメリとカンナが、耳を立て、尻尾を膨らませて驚く。私の声が出ない。それは、歌姫クロの死活問題だ。
『アイツがハハなぐった。いかりがバクハツしたら、きゅうにこえでなくなった』
私は書き続ける。
「アイツってさっきのおじさん? おばさん怪我したの!? カンナ、打ち身の薬とか持ってない?」
「さすがに手元にはないわ。クロは薬持ってないの?」
私は首を横に振る。
「じゃあ、水でとりあえず冷やしましょう」
そう言って、カンナがハンカチを水道で濡らして戻って来た。アメリは、母の様子を見る。
「どこ?」
「左のほっぺた。腫れちゃってる」
「ごめんね、アメリちゃん、カンナちゃん。手間かけさせちゃって」
アメリの言葉に従い、カンナが幹部を冷やす。アメリとカンナの尻尾が振れている。内心、父の行いに腹を立てているようだ。
「クロ、やっぱり声はまだ出ない?」
私は、アメリの言葉に、首を横に振る。
「どうしたらいいのかしら」
「まりあさんに相談してみる? ねえクロ、クロの今の状態のこと、私のお師匠さんに相談してみてもいいかな。どうしても嫌だったらやめるけど」
私はまりあという人物をほとんど良く知らない。アメリとカンナが慕っている猫なので悪い人柄ではないのだろうが、自分の与り知らない相手に相談されるのもあまり気分のいいものではない。かといって、打つ手もないのは事実だ。あの男が舞い戻ってくる可能性がある以上、ここを離れるわけにもいかない。
『なまえださなくていいなら』
悩んだ末に、私はこう書いた。
「わかった、行ってくる! カンナはクロとおばさんに付いててあげてくれる?」
「ええ、いいわ。いってらっしゃい」
「クロのことをお願いね」
カンナと母の言葉を背後に受けて、アメリが家を飛び出して行った。
歌を失った私に存在価値はあるのだろうか。私は、母を抱きしめた――。