わたしといっしょにうたおうよ!⑩
★ アメリ編 ★
「とうとう今日、行ってしまうのね。寂しくなるわ」
翌日の夕方、いつもの教会で、私とカンナはキャリーバッグを手に、まりあさんと最後の挨拶をしていた。
「はい。あ、これクロから返すように頼まれました。とても感謝していると伝えてほしいって」
「ありがとう」
ハーモニカを差し出すと、まりあさんは妹の形見を愛おしそうに受け取った。
「お花のこと、お願いします」
「ええ、任せてちょうだい」
カンナの育てていた花は、植え替えてまりあさんたちが面倒を見てくれることになった。植え替えはもう済ませてある。
「他のみんなには挨拶はしたの?」
「いいえ。クロとまりあさんだけです。寂しくなってしまうので。本当はクロにも黙って行きたかったんですけど、それでは迷惑をかけてしまうので」
「そう」
「じゃあ、まりあさん。私たちはこれで」
「待って」
踵を返して旅立とうとしたところに、まりあさんが待ったをかけてきた。
「あなたたちに祝福を。あなたたちの旅が幸多からんことを、アーメン」
まりあさんが十字を切る。
「ありがとうございます。それではまた、いつか会いましょう」
私たちはまりあさんに会釈して、教会を去った。
「ね、アメリ。どこへ行く?」
「南へ! 暖かいところに行こう!」
二人で歩きながら、ノリと勢いで行先を決める。
私たちは、様々な街を巡り歩いた。色んな人《猫》々と出会い、そして別れた。
あの街のように、歌の大会を開いている街がいくつかあった。その中には、ミケのような振り付けを重視する街もあった。あるいは、楽器の演奏も自分でやらなければいけないところや、歌ではなく、ダンスの腕前を競っている街もあった。
そういった街に入る度に、イベントに参加して、行きずりの友人を増やした。歌オンリーのイベントでは、高い評価を得たけど、動きが入ると途端に厳しい。
世界は広い。学ぶ事だらけだ。
そんな放浪のある日、私は「あっ」と叫んだ。
「どうしたの、アメリ?」
「あ、ううん。何でもないよ、行こう」
それは、とても良く見知った、懐かしい人間だった。
でも、私はカンナと共に生きると決めたんだ。
さようなら、ご主人様。私は、心の中で決別を告げた。首輪と首の鈴、ご主人様との絆はこれだけでいい。
「私と一緒に歌おうよ!」
今日もどこかの街で、私の歌声が響き渡る――。




