ゾンビの司令塔
「コイツぁ、すげーな!」
横沢が銃をまじまじと見ながら言う。
「ああ、これで形成はかなり変わるはずだ」
「そうね・・・・もっと早く手に入っていたらな」
美月が言う。森と千咲も犠牲にならなかったかもしれないということだろう。
「ああ、もう過ぎたし・・・ソレばかりは気にしていられない。」
「・・・・・・・・・」
雰囲気が悪くなってきた。沈黙。
その張り詰めた空気を破ったのは横沢だった。
「とりあえず、悪いが腹が減ったし、早く休みたい」
「ああ・・・・そうだな」
そう言うと総一郎はキッチンに行った。
そして、調理を始めた。
作ったのはホットケーキ。
「―――・・・ホットケーキ?」
葵がホットケーキが出てくるのが以外だったようでそう言った。
「フフフ・・・・我が力作だ!」
「確かに美味しいが・・・・・ホットケーキだから美味しいんじゃない?」
「え!?」
高速で美月のほうを見て、驚きの声を総一郎は上げた。
「―――・・・たしかにな。数もたりねぇし」
「!?」
横沢を見る。見事に皿にあったホットケーキを全て食い尽くしていた。
「・・・・・・総一郎。罰ゲームで私と付き合う」
「・・・・断る。」
すると葵が総一郎の腕を掴んだと思ったら関節をきめてきた。
「あだだだだ!!!いったぁぁぁ!」
「叫ぶな、馬鹿」
「ちょっだって・・・・イタタタ・・・」
美月に言おうとすると葵が力を込める。
「ごめん、ごめん!!!」
とりあえずは謝っておく。
「なら・・・・今晩は一緒に」
「たすけてくれぇぇぇ!!!」
その時、総一郎の悲鳴が響き、更にゾンビが近づいて来たそうな。
翌日
「―――・・・どうやって逃げるんだ?」
横沢が窓から外の様子を見ながら言う。
総一郎も外を見てみる。
「うわぁ~」
外にはゾンビが道を埋め尽くしていた。
幸い、庭などには侵入されていなかった。門よありがたや~!!!
「とりあえず、食事だ」
総一郎が言う。今度は折角いるのだから女子に作ってもらう。
僅か、小説内で数行前にしたがもう一度(朝)飯を食う。
そして、出発する。
銃は一丁だけ置いていくことにした。
叔父さんの消息は不明だが生きている可能性も否定できない。かつガス式はガスを必要とするので置いていくことにしたのだ。
「総一郎・・・皆の準備はできたって・・・」
葵が着替えているときに知らせに来た。
「ああ、え――・・・ありがとう」
なんとかズボンは穿いた後でよかったと心底思った総一郎であった。
葵が舌打ちをして部屋を出て行った気がしたが気のせいであると願い、リビングに降りて行った。
裏口から外に出て、塀を越え、隣の家に侵入してを繰り返し、なんとか、ゾンビの密集地を切り抜けた一行は隣の県に向って、歩き出した。
岩手なんかは気温が低くて良いかもしれないと思った。
しかし、たどり着くのは容易ではないだろう。なにせ、三つほど県を跨がないとならない。
「これからどうするの?」
先陣を切って、歩いていた総一郎に美月が聞いた。
「ああ・・・・できれば北の方の他県を目指してみたいね・・・気温が低いと感染しずらいといいけど」
「この県は壊滅状態だしね・・・」
「おっと・・・・美月、安心しな、家族の安否は確かめてから移動だ。とにかく、今は県庁に行ってみよう。全体の情報が手に入るだろう」
美月が家族を気遣っている様子が以前から見られたのでそう言った。
総一郎も叔父を初めとする親類の安否を知りたかった。
歩いているとゾンビに遭遇する。
筋肉痛も昨日よりはマシになってきていたのでほんの三体ぐらいなら今の彼らには朝飯前であった。
勿論、油断はしない。
「ほりゃ!!!」
総一郎は木刀でゾンビの頭を殴り、潰した。
それでこのときの戦闘は済んだ。
「はぁはぁ、やはり、多少は疲れてくるな」
「そ、総一郎!」
「何だ!?なっ!!!」
横沢が名前を呼んだので横沢の方を向くと横沢はあるものを見ていた。
それは全身が緑色の人型の形をした生き物であった。
「ピ、ピッコロさん?」
「ボケてる場合か!」
鋭いチョップと共に美月がツッコム。チョップは総一郎の首に直撃したので総一郎はヒーヒー言っていた。
涙目になりながらもそのゾンビを見てみると明らかにゾンビの進化系のようだった。詳しいことは分からないがその緑色のゾンビには近づかない方がよいと総一郎の第八感辺りが告げていた。
「逃げるぞ・・・」
「え?」
銃を美月がゾンビに向けながら聞き返した。
<逃げるぞぉぉぉ!!!>
そして、走り出した。
緑のゾンビ以外は声に反応して此方に向ってきた。
それらから走って逃げた。
走っていると先にゾンビの団体が見えた。
総一郎は舌打ちをして、戻ろうとするが背後にもゾンビの団体がいた。
このままでは昨日の森や千咲の二の舞になることはすぐに分かった。
「どうする?」
「こっちしかないだろ!」
そして、3mはある塀を自身を土台にして登らせる。
美月、葵、横沢と登り、後に残ったのは総一郎だった。
「早く!」
横沢が手を伸ばしたので捕まる。
ゾンビは僅か1mに迫ってきていたが危機一髪で登りきる。
その時、緑のゾンビが指で複雑に何かを支持するように他の普通のゾンビをジェスチャーしてるのが見えた。
総一郎は咄嗟に判断した。
「葵!美月!あの緑の奴を殺れ!!!」
一瞬、間が空いたが二人は空気銃を構える、発射準備を整えると二人は引き金を引き、銃弾は発射された。
美月の弾は緑のゾンビの足元に当たっただけだが葵の弾は見事、緑のゾンビの頭部を撃ちぬいた。
するとゾンビの動きが全体的に乱れてきた。
そして、先ほど、緑のゾンビが指差していたところからゾンビが現れた。
総一郎はとりあえず、塀を降り、隣の民家に侵入して、全員いるのを確かめて言う。
「さっきのピッコロ・・・間違えなく司令塔のような役割をしていた。」
「ああ、そうだな・・・どうする?」
「奴を優先的に殺すことにしよう」
「けど・・・どうして、現れたのかしら?」
「亜種かな?」
美月の疑問に横沢が答えた。それが色々考えたが有力な説となった。
この民家の周りにもゾンビが集まってきていた。
「どこまで追ってくるのかね?」
「さぁな・・・下手したら一生ものかもな」
「・・・・勘弁」
「まったくね。気がどうかしちゃうわ」
「とにかく、抜け出せなくなる前に出るか・・・・横沢、二階に上がって、抜け出せそうなところを探してくれ、他は使えそうなものを探せ」
「わかった」「りょーかい」「・・・・わかった」
「よし、散会!十分後には動けるようにな!」
そして、家の中を調べていく。
所詮、民家なので使えそうなのは食料が手に入ったぐらいだ。
十分後、集まって、横沢の話を聞く。ソレによると表の玄関の方はゾンビが少なく、そちらの道の方が道も大きいのでゾンビに囲まれても退路があるかつ、ちょうど、市に向うにもそっちの方が良いということでそこから出ることになった。
「3・・・2・・・1・・・GO!!!」
カウントをして、玄関を開けると5体のゾンビが元気に襲い掛かってくるのを葵のう槍、横沢の金属バットで片付け、外に出る。
思ったよりもゾンビの数は少なくなっていた。
「妙だな・・・・・あんなにいたのに・・・生存者でもいるのか?」
「なら探して助けましょう!」
美月が提案するも総一郎はすぐに蹴った。
「ダメだ。俺らも決して、物資に余裕があるわけでもないし・・・・いるかもわからない。友好的かさえもだ。このまま、いるならいるで囮になってもらっている方が此方には好都合だ」
「でもでも――――」
「ダメだ、さっき、言ったとおりだ。なあ、横沢?」
横沢も方を見ると横沢は目を見開いていた。
総一郎はゾンビ化の予兆かもと心配したが違った。
「女だ・・・」
「は?」
「生存者は間違えなく女性だ!」
「しらねーよ!てか、騒ぐな」
総一郎は声を低くして注意する。
「男なら女性は助けるべきだ!」
横沢は断固として諦めるつもりはないようだ。
そして、一つの提案をする。
「じゃ、多数決で助けに行くかを決めよう!」
そして、結果は・・・・・。
助けに行く方が三票、助けに行かないのが一票、言うまでもなく総一郎の一票だけであった。
「よーし、決まりだ、決まり、いっくぞぉぉぉ!!!」
横沢は鼻息を荒くしながら走り出したので総一郎たちは追って行った。
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