犠牲
「こっちだ!」
森が窓の前にいた。
「よし、ここで引き付けてから降りるぞ!」
扉を机などで塞ぐ。
「はぁはぁ、流石に筋肉痛でこんなのを運ぶのは疲れるな」
「そうだな、腕が千切れそうだな」
「ゾンビはどうだ?」
「うん、随分入ってきているわ」
「よし、ロープで降りろ!横沢!先導しろ!」
そして、横沢は下りて行き、安全であると知らせる。
「早く、降りろ!」
残っている奴に言う。
総一郎は扉が先ほどからガタガタいってるのでゾンビが入ってもいいようにM60を扉に向けていた。
葵が総一郎以外の最後で残っていた。
「葵、その段ボールをそこに置いてくれ」
「「もう、いいわよー!!!」」
下で美月が叫ぶ。
「よし、行け!」
「総一郎・・・」
「さっさとしろ!」
総一郎が叫んだので葵は黙って降りて行った。
ダンボールの中には虫除けスプレーや花火と一緒に紙などを入れた。
そして、アルコールをダンボールに入れたところで下から声が掛かった。
するとゾンビがドアを破ってきた。
「くそっ!」
まだダンボールを燃やしていなかったが仕方がない。
ライターを点けて、ダンボールに投げ入れた。
そして、ロープで降りて行った。
降りると皆が待っていた。
「全員、いるな?」
「勿論よ」
「・・・・これからどうするか。だな・・・・」
森が言う。
「ああ・・・他の避難場所は?」
「学校か・・・?あんな所はダメだろ。ウチは全滅だったろ」
「そうわね」
ゾンビが今いる駐車場にも溢れてきた。
「とにかく、移動しよう!」
車なんかを調達する時間はなかったので徒歩の移動になった。
「見て!警察署から煙が!!!」
「ゾンビがやったの!?」
千咲が疑問の声を上げる。
「え?いやいや、俺俺、やったの俺だよ」
「はぁ!?」
その場に居た総一郎以外が驚きの声を上げた。
「何体、燃えたかね~?」
「・・・・・・」
皆はなにも言わない。
(やべっ!何か引かれた・・・)
話を切り替える。
「と、とととととにかく、逃げないとね」
「そうだな」
横沢が言ったので移動する。
ラジオを取り出して、イヤホンで聴く。
流れている情報は不利なことばかりだった。
「おいおい、やべーな。日本・・・・。壊滅じゃね?」
今は東北の85パーセントがゾンビになったと報道されていた。何で分かったのかは分からんがえらいこっちゃ。
「連絡が取れる地域はこの県にはないようだ・・・・」
「日本海側はユーラシア大陸から人が流れてきているようだ・・・」
「うわ~、怖いね。拉致とか」
(大丈夫だよ・・・美月は胸がないから。誰も攫おうとしないよ。)
「大丈夫だよ!美月は胸がないから狙われないよ!」
総一郎が考えていたことを横沢が言った。
美月の目に黒い光が宿った。
「ヒッ!!!」
森が怯えて声に出した。
「コロス・・・・この女たらしめ」
美月は横沢に近づく。
「待って、お願い!最後のお願い!!!」
「はぁ?何ソレ?おいしいの?」
「ヴぁぁあああああああ!!!」
横沢は悲鳴を上げ、倒れた。
「おい、何やってんだ?さっさと行かないとマジで死ぬぞ~」
「ああ、分かってる・・・」
横沢はフラフラと立ち上がった。
だから移動を再開する。
「どこに行く?」
「わからん!」
「アイディアは募集中だろうな」
「勿論!」
その時、脇の路地からゾンビが出てきた。
背後からもゾンビが迫って来た。
「無理なく殲滅しろ!」
「わかった!」
森と横沢がバットを手に殴りに走った。
総一郎は木刀を構えた。
「いくぞぉぉぉぉ!」
声を上げて、恐怖を紛らわせる。
木刀を振り回すが長くはもたない。
アニメで疲れなど気にせずに暴れまわってるのが凄いと思う。某学園黙O録の高校生とか・・・同じ高校生なのに凄い違いである。しかも、女性に負けてるよ私。
今の状況はやらないと死んでしまうので仕方ないが辛い。
考えていると背後を取られてしまった。
「あ・・・・」
するとゾンビが倒れた。やったのは葵のようだ。
「総一郎・・・・・・・危なかったね」
葵は落ち着き払った静かな声で言う。
「サンキュ、助かった」
「馬鹿な男共だけにまかせてはいられないわ!」
美月が言う。
「そーよ、女の底力を見せてあげるわ!」
千咲が言った。
「ムリすんなよ!」
「そのセリフ、そのまま、返すわ!」
美月はそう言って、鉄パイプと包丁を合わせた槍を振り回す。
腕はもう、筋肉痛で動かなくなっていた。
「ちっ!」
ゾンビを蹴り倒す。
此方の形勢が悪くなってきているのが目に見えて分かった。
そして、『あのようなこと』が起こってしまった。
「やばいぞ!数が多すぎる!」
「ああ、だが逃げ道なんか・・・・」
「こっちよ!」
美月が槍で飲食店の窓ガラスを割って、中に侵入した。
「その手があったか!」
次々と中に逃げていく。
「千咲!早く来い!」
「うん!」
千咲はゾンビを力で押し返して、窓に行こうと振り返ったとき、脚を掴まれ、転倒する。
「千咲ー!!!」
助けに行こうと森は走った。が一度は立ち上がった千咲も再び、転倒して数秒も掛からないうちにゾンビに噛み付かれた。
「森!戻れ!もうムリだ!」
「あきらめない!絶対に!千咲!!!気をしっかり持て!!!」
森はゾンビを倒しながら近づいたが千咲と同じように脚を掴まれて、引っ張られていく。
「うぁぁぁああああ!!!」
「森っ!!!」
「待て!」
「でも!」
横沢が行こうとするのを総一郎は止めた。
横沢と千咲は立ち上がった。
「よかった!生きてい・・・た・・・」
そう思ったが違った。
ゾンビとなっていた。
「嘘だろ?」「森・・・千咲・・・・」
「行くぞ!諦めろ。」
総一郎は残ろうとする美月と横沢を強引に店の奥に連れて行った。
総一郎を除く二人は泣いていた。
「総一郎は平気なの!?二人が死んで・・・」
美月が言ったのに返す。
「平気なものか!?ふざけるなよ!?折角、生き残ったのにこんな所で死ぬなんてよ!」
「くそっくそっくそっ!!!」
横沢は床を殴りつけていた。
その時、ゾンビが店内に侵入してきた。
「敵討ちだ!」
「待て!消耗してる。奴らの二の舞になるつもりか?」
横沢を押さえつけ、裏口から外に出た。
「まだ、終わってない!泣くのは終わってからにしろ!」
皆に言った。
「―――っくああ、わかったよ・・・・」
「逃げるぞ!この県は危険だ!県外までいこう!」
裏口の路地から出てもゾンビは追いかけてきた。
「しつこい奴らめ!」
ゾンビが執拗に追ってきている。
(ここら辺の生き残りは俺らだけか?)
「人間はそう簡単には滅びない!」
鼓舞するためにそう叫んだが自身はなかった。そんな不安を見抜いたのか葵が話し出す。
「大丈夫・・・生き残りは他にもいるわ」
「そうだ・・・な。ありがとう」
「ううん、どうってことはないわ」
「さっさといきましょ!安全な場所へ」
「行くぞ!」
四人は走り出した。
どんな闇の中でも希望は失ってはいけない。
この言葉を思い出した。
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