坂田旅館
「三時の方向に敵!」
ゾンビが右側の通りからこのコンビニに向けて、歩いてきていた。
「30分か・・・・よくここまで耐えたな」
「横沢、行くぞ!」
「分かった!」
コンビニから総一郎、葵以外のメンバーが出てきた。
「葵!そっちはどうだ?」
「ゾンビはいない・・・」
「よし、そっちだ!GOGOGO!」
「わかった!」
「待って!この車使えるんじゃない?」
千咲は軽トラックの前にいた。
死体は車内にいた。
脇には動かなくなっているゾンビがいた。
「鍵はあったか?」
「ああ、ほらよっ」
横沢に鍵を投げる。
「運転は任せろ!」
横沢は運転席に乗り込む。
他は助手席と後ろの積載箇所に荷物と一緒に乗り込んだ。
「振り落されるなよ!」
横沢は言った。
「安全運転しろ!」
「分かった」
「前からゾンビが・・・・」
助手席の千咲が言った。
「どうするのよ!?」
美月が心配そうに言った。
「道に鹿がいたら?」
「突進!!!」
「正解!」
総一郎が言うと横沢が返した。
これはある映画の台詞だ。
ガタンと揺れるとゾンビが轢かれたのがわかる。
「進む方向はどっちだ!?」
横沢が聞いてくる。
「森!!!」
「ああ、え~っと、こっちだ!右!右だ!」
「了解!!!」
ゾンビはまた現れなくなった。
「こんな光景なのにさ~、なんでゾンビが居ないのかしら?」
美月が言う。
「・・・確かに・・・・総一郎、どう思う?」
「オレに聞くなよ。検討もつかないよ」
「私たちのいた方向に行ったからじゃない?」
千咲が後ろを向いて言った。
「けどホームセンターのあとは正面から鉢合わせることはなかったよね?」
「いろんなとこでゾンビは発生しているんじゃないか?」
「今は考えてもどうしようもないことだ。各自、周囲に目を凝らすんだ!」
総一郎は注意する。
「美月、皆のリュックに食料とかを詰めてくれ」
「分かった」
リュックはホームセンターで取ってきたもので登山用の物だから収納もばっちりである。
十分ほど経って、美月も人数分のリュックに物資を積み終わった頃。
トラックは急ブレーキを掛けた。
「キャッ!!!」「うおっ」
停車したので辺りを見ると道をバスが塞いで通れなかった。
今はトラックに積んである物資は捨て難かった。
「ゾンビだぁー!!!」
森が叫ぶ。
「仕方ない・・・・このリュックを背負って行くぞ」
「どうやって通るの?バスの下?」
「バス内に侵入して、向こう側に行くのは?」
「名案だ!それで行こう!」
森の案で行くことになった。
横沢は窓を金属バットで割り、中に侵入した。
「こっちは大丈夫だ!来い!」
総一郎は別の窓を割って、中に侵入し、こちら側にはゾンビが来ないかを見た。
横沢は美月などが登ってくるのに手を貸した。
「急げ!もう10mもないぞ!」
最後に残ったのは葵だった。
「キャァァ!!」
ゾンビが葵の脚を掴んだ。
「クソッ放せ!化けもんがぁ!」
総一郎は美月から作った槍を奪うと葵の脚を掴んでいるゾンビの頭を突いた。
「ギュゥルルルゥ・・・・・・・・・」
ゾンビは声を上げると動かなくなった。
総一郎も葵の手を引いて、バスの中に引き上げた。
「大丈夫か!?噛まれていないか!?」
「・・・・大丈夫・・・・」
「ふぅ、よかった!」
「総一郎・・・・ありがとう」
「当然だろ!急ぐぞ!」
ゾンビはバスの下を這いずり、こちら側に向っていた。
「クソッ!」
総一郎は借りていた槍でバスの下を潜っていたゾンビを刺す。
「進め!森!ライターを貸してくれ!ロケット花火もあったな?」
「ほらよ!!何をするつもりだ!?」
「ここを燃やしてやる。先に行け!」
総一郎は花火の先をゾンビの方に向け、ゾンビの死体にアルコールを垂らし、火を放った。
そのまま、走るとロケット花火が破裂した。
そのまま、別な死体にも燃え移ったりする。火は広がっている。
「フハハハ!!!燃えるがよい!!!」
その時、何処かの車のガソリンタンクにでも引火したのか爆発を引き起こした。
「ワオワオ!すげぇぇぇ!!!」
「これで奴らもおしまいね!」
千咲が言う。
「天罰・・・・」
葵が脚を掴まれたことで恨んでいるのかそう言った。
「まだ総一郎にも触らせたことがなのに・・・」
「触らないから!」
総一郎はツッコミを入れた。
「仲がいいのも良いけど・・・移動をしようか」
森が言った。
「わかってる!行くぞ!」
時間は午後3時を過ぎた。
「疲れた・・・」
「なんだ?美月もう休憩か?皆!休むぞ!」
「うっさい!もうって2時間近くは歩いてるじゃない」
「仕方ないだろ。休まるところもないし」
「私ももう限界・・・」
「ええ?」
「てかオレも脚がガクガク。別に休んでもいいんじゃね?ゾンビが俺たちだけを狙っているわけではないし・・・。」
「森!近くに休めそうなところは!?」
「ここから約500mの位置に温泉旅館がある。」
「温泉!そこがいい。」
女性陣はそこがいいと言い出した。
「総一郎!今日はそこでいいだろ!?」
「はぁ~、なら移動だ。」
そこから移動すること30分。
「ここか?」
「そのようだな」
森は旅館の看板を確認しながら言う。
「よし、横沢、ここに女子と残って、警戒を頼む。森は俺と来て、この旅館内の安全を確かめるぞ」
「分かった」
森が返事をして、ついてきた。
二人で自動ドアを無理やり開ける。
辺りはまだ明るかったので中ではライトとかは必要なかった。
取り回しやすい包丁を構えて進んだ。
「誰かいますか!?」
総一郎は叫んだ。
「総一郎・・・二階を頼む」
「I got it!!!」
「何故に英語?」
「気分だ」
総一郎は二階に向かった。
二階の階段には机などでバリケードが施されていた。
「森、一階には食料などはあったか?」
無線で話す。
「いや、全て持ち去られている。」
「そうか・・・続けてくれ」
「すいません!誰かいますか!?」
バリケードを崩しながら進む。
二階はカーテンなどが閉められていて暗かったのでライトを点けて進んだ。
一部屋目には誰も居なかった。
次の部屋を調べると鍵が掛かっていた。
「誰か居ますか!?」
総一郎は扉を叩きながら叫んだ。
「に、人間ですか?」
弱弱しい声が聞こえた。
「勿論です・・・ゾンビは居ません・・・出てきてください」
そういうと一人の男性(目測で40代)が包丁を此方に向けながら出てきた。
その後に女性と子供が出てきた。
「全員ですか?」
「一階は異常なし!」
無線から森の連絡が来る。
「横沢・・・外は?」
「異常なしだ」
総一郎は無線で聞く。
「ここより上の階に人はいませんよね?」
「はい、今日は居ません」
「この家は無事なようです・・・・」
「貴方は・・・何故、私の旅館に?」
「ああ、仲間が疲れたというので休憩で寄りました」
「なるほど・・・・」
男は納得したようだ。
「申し遅れました・・・私は上山学園一年 中村 総一郎です」
「どうもご丁寧に坂田です。こちらは妻の幸子と娘の由梨です。」
「こ、こんにちは~」
娘の由梨ちゃんが言った。小学校5年生らしい。
「とにかく、ここで休んでいいですか?」
「ああ、どうぞどうぞ。日も暮れますので。」
「ありがとうございます」
その後、1階に皆を招集して自己紹介をした。
「総一郎、店の正面入り口から三時の方向にゾンビが三体だ。」
森はその間に見張りの役をしていた。
「他にはいないな?」
「ああ」
やり取りを終えて、無線を切る。
「やっぱり、来た!隠れないと・・・」
坂田さんは嘆く。
「横沢、行くぞ!撃退できる数だ!」
「勿論だ!」
「おにーちゃん、危ないよ!」
由梨ちゃんは心配して言う。
「大丈夫、ちょっと行ってきます。もしものことがあったらこいつ等をよろしくお願いします。」
「ああ、気をつけるのだよ・・・」
そして、総一郎たちは外に出た。
「敵は?」
「向こうだ。隠れて見えないが距離は50ってとこだな。」
「了解。よし、俺が奴らを引きつけて、ここまで来る。このロープで転ばせてから倒せ」
「分かった。」
「散会!!!」
総一郎は事故車両の陰にいるゾンビに正面から石をぶつけた。
ゾンビは総一郎に気がつくと、ゆっくり歩いて近づいてくる。
総一郎、横沢、森が構えている地点を通過すると二人はロープを張る。
ゾンビはロープに躓いて、転んだ。
その後は西瓜割りの要領でトドメを刺す。
「す、すごい・・・」
いつの間にか坂田さんが外に出て、見ていた。
「意外と弱いのですよ」
「頭を狙うのがポイント!」
「そうなのですか・・・」
そこの入り口も塞ぎますか・・・。
見張りは立てるが夜に目視できるかが心配であった。
裏口にはマイクロバスを逃げられるように設置した。
マイクロバスは付近に駐車してあるのを美月が屋上から発見した。
鍵はさしたままであった。
一通り、ゾンビの対策をすると総一郎たちは休んだのであった。
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