新しい相棒?
随分、おそくなってしまった。
一際、立派な部屋の前に来る。
見張りはいなかった。人数が不足しているのか、それとも、総一郎たちが来るわけがないと思ったのか。
とにかく、ツメが甘い。そう考えた。
横沢と扉の両側で突入準備をする。
「3カウントだ」
「横沢、了解。」
「3・・・・2・・・・1・・・GO!」
横沢は扉を蹴り壊し、中に侵入する。
中では葵と美月が空気銃を構え、バイカーギャングと睨み合っていた。
そこに横沢が突入した。更に、総一郎が続く。
横沢がバイカーギャングの肩を撃つ。
総一郎は隣の奴の右腕を撃ちぬくが男は葵たちの方へ行く。葵と美月は空気銃を撃つ。しかし、男は篠崎を捕まえ、首にナイフを当てる。
「ひっ―――!!」
「舞!」
美月が男に勇敢にも殴りかかるが腹を蹴られる。
そのまま、倒れ、痛みに苦しむ。
葵が介抱する。
「その人を放せ・・・」
総一郎は静かに言った。
男は何も言わない。しかし、此方を睨んでいる。
「落ち着け・・・・」
「・・・・・・・・・・」
狂気の目、総一郎はそのように思った。ようは異常者の目だ。
男はナイフを握る力を込める。
「い、嫌!!」
篠崎は悲鳴を上げる。
一筋の血が流れる。
「落ち着け・・・落ち着くんだ。そんな事は誰も望んでいない・・・。
これでやめておけば、危害は加えない・・・・。」
総一郎は説得をする。どんなに、無駄であったとしても話を続ける。
このときはコレが正しいと思っていた。ほかに出来ることもなかった。
撃つまでの踏ん切りをつけることができなかった。
ゆっくり、歩を進める。
ゆっくり、ゆっくり、慎重に近づく。
銃を降ろしていた。
相手を落ち着かせる為とはいえ、此方は気が気ではない。
すると葵が動いた。
男はナイフを振りかざした。その時、総一郎は男の腕にむかって、突っ込んで、ナイフを持つ手を引っ張り、壁際まで引っ張り、その腕を壁に叩き付けた。
ナイフを取り落とすと総一郎は男の脚の後ろに自分の足を置き、思いっきり、足を払う。同時に倒れるように上半身を掴み、力を込めた。
馬乗りになって、顔面を殴り続ける。男は耐え切れずに気絶した。
「無事か?」
篠崎に聞きながら鼻血やらで汚れた手を男の服で拭く。
「だ、大丈夫。」
「後で中島さんに見てもらいな。」
その時、中島たちの三人が来た。
「噂をすればか・・・」
「皆、無事か!?」
「はい、全員無事です。」
総一郎が答える。
幸田が話す。
「ゾンビが全滅しているが防火扉は破壊されている!今、脱出する!急げ!!」
「了解、全員、荷物をまとめて、三分後に1階に集合しろ!」
それぞれ、準備に入る。
総一郎はリュックを背負い、先ほどのバイカーギャングたちから銃を奪う。
銃はそれぞれが別の種類であった。
銃弾はどれも9mmパラベラム弾を使う銃だがバラバラである。
例えば、H&K VP70、これは史上初のポリマー製フレームを使用している。
ベレッタM8000 通称『クーガー』、随分、肉厚な設計をしている。
92式拳銃、これは人民解放軍に配備されている拳銃である。by ウィキペディ娘(葵)、総一郎が命名。本人はこれを聞くとご立腹のようであった。
これらが発見された。バイカーギャングの人数も大して居なかったので奪えたのはこれらの種類が2,3丁位ずつである。
銃の入手先が気になったが時間がないので生かしておいた奴に問う時間はなかった。
連れて行くという選択もあったが不安な要素は皆、御免だった。
皆が集まると総一郎、幸田、狩野、中島は一人、一人に銃を渡した。
「皆、下手に撃つな。状況によっては銃は最高の武器ではなくなることを忘れないでくれ。」
みんなはそれぞれ、頷いた。
そして、葵の知識の元、説明を手短にする。
麻美、篠崎は飲み込みに多少、時間は掛かったが分かったようだ。
「じゃ、いきましょ」
美月が言う。腰にはグロック拳銃を持っている。
総一郎が渡したものだ。
総一郎、本人はVP70を持っている。
こちらの方がなんとなく、しっくりきた。実射は、まだだが、これから決めようと考えた。
葵は背中に空気銃を背負っている。ステルスキルもかなり重要な事だ。とくに音や臭いに敏感なゾンビが相手なら尚更である。
横沢は銃に対して、あまり、いいイメージは持っていないようだ。
総一郎の木刀を持っていた。
幸田さん達は仲良く、クーガーを三人とも装備していた。
後、二丁、92式拳銃とグロック拳銃が余っていた。
「よし、行くぞ。」
総一郎の掛け声でビルの外へ出た。
先ほどの騒動でゾンビの爆死した死体が転がっていた。
大通りの道路のど真ん中を歩く。
放置車両が大量にある。
道路を塞いでいて、車が影で見えないところもある。
総一郎は車の前から上に上がった。
辺りを見るが特に敵は居ないようだ。
車の上で見ていると車のフロントガラスを突き破って、腕が伸びてきた。
総一郎の足を掴む。
「なっ!」
総一郎は振り払おうとしたが離れなかった。
葵が走ってやってきて、車の中のゾンビを撃ち抜く。
総一郎、腕を放し、車から降りる。
「びっくりした。ありがとな、葵」
「・・・どういたしまして」
葵はちょっぴり、顔をうつむけながら言った。
ゾンビが一体現れた・・・・総一郎は考える。コレまでの経験も考えて。
・・・ゾンビが現れる・・・・一匹居ると三十匹はいる。
これまでも一体出てくると周りを囲まれることがあった気がする。
そう考えると背中から汗が吹き出てくる。
「どうしたんだ?総一郎」
横沢が総一郎の様子を見て話しかけてくる。
「いや、これまでって・・・一体、ゾンビが現れると大量に現れてきたことが沢山あったような気がしたから・・・」
その場が凍りつく。
ガタッと音がした。そっちを見ると数体のゾンビが居た。
全員は走り出した。
「てか、ゾンビなんかゴキブリみたいな物だからこんなフラグも成り立ってしまうのでは?」
横沢が言う。
「いや、もう何を言ってるかわかんないよ」
美月が言う。
「はぁはぁ、皆、体力ありすぎ・・・・」
篠崎が辛そうに言う。
「もう、うっさい、疲れてると聞くともっと、疲れるわ!」
麻美が言う。
「待ってろ!片付けてくる。」
総一郎が振り返ってみると付いてきているのはたったの三体であった。
VP70を構え、ゾンビに照準を合わせて撃った。
ゾンビはあっという間に片付いた。
VP70の感想は・・・・やっぱり、グロックの方がしっくりきたのであった。
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