帰還
いいネタが学校で思いついては家に帰ると消えてしまう今日この頃。
ドアからガンガン音がする。
思い当たる原因は一つ。ゾンビが我らを食そうとドアを打ち破ろうとしている。
「っく・・・どうするか・・・」
ドアを叩く音に恐れてるように狩野さんが言う。
「まったくですね・・・幸田さんから連絡はこないですしね・・・・」
「ああ、そろそろ、一時間も経過するしな・・・」
「しかし・・・突破できますかね?」
「運だな・・・的確に心臓のところを狙うのが難しいな。現場をみていないから」
「ええ、残弾もありませんしね」
トカレフを腰に戻し、包丁と木刀を何時でも構えられるようにする。
ちょうど、無線が鳴る。
「あ、もしもし」
総一郎が出る。
「総一郎・・・無事?」
「ああ、お前か・・・さっき、引っ掛かれたところが痛いです」
実は大して痛くもなんともないが少し言ってみる。
「・・・・・」
スルーですか!?
「ちょっと、退いてね・・・。
あーあー、幸田だ。ゾンビが起き上がる様子がない。さっきの位置を狙えば、殺せる」
「そうですか・・・・狩野さんに代わります」
「変わる必要はないだろ・・・・幸田、救援とかは・・・」
「ムリだな・・・お前らが来るまで防火扉を守るので精一杯だ。」
「分かった、三分後に出る。」
「了解、中島!準備しろ!」
そして、幸田は無線から離れたようだ。
再び、葵が話す。
「総一郎・・・死なないで」
「ふっ、当然だ。」
「そう・・・・」
「あー、お惚気なら後で頼むわ。総一郎、すぐに時間になるぞ」
横沢が横槍を入れて来た。
「お惚気って・・・違うからな」
「さー、お終いだ!」
横沢はそう言うと無線を切った。
「十秒前・・・・三、二、壱、GO!」
狩野のカウントと共に二人はドアを開けて出た。
総一郎は包丁を手に心臓の右上を刺す。ゾンビは叫ぶと動かなくなった。
「やったか?」
「後で確かめるぞ!」
狩野はそう言うと総一郎の木刀でゾンビを殴っていった。
総一郎、包丁を逆手に持ち、背後で起き上がったゾンビの頭を一回転して刺す。
ソレをすぐに抜き、例の弱点を刺す。同様に倒れた。
総一郎、マグライトで照らしながら包丁を構え、進む。
地下のゾンビは増えていた。
それらを上手く、投げたり、転ばせたりしながら進む。
そして、地上へ出る。
十体は超えるであろうゾンビがそこでは待ち構えていた。
総一郎たちは先ほどまで居なかったのに居たことに驚きながらも武器を構えた。
「どこから湧いてきたんだ!?」
「急ぎましょう!」
ゾンビにトドメを刺しながら言う。
肉の壁が地下からも沸いて出てきていた。
ゾンビとの交戦を避けながらも階段へと向かい。
急いで登っていく。
階段の邪魔なゾンビを掴み、階段の下へと落す。
「グッナイ」
すると空気銃を構えた葵と中島、横沢が、待っていた。
「狩野!急げ!」
中島が一発撃つと言う。
「分かってる!」
総一郎は振り向いてみる。二人の背後ではゾンビが上がってきていた。
緑のゾンビが此方を指差して叫んでいた。
しかし、葵の空気銃がしっかり、仕事をして、ゾンビは倒れていった。起き上がるゾンビもいたが・・・。
「よし、閉めろ!」
二人が入ったのを確認すると中島は防火扉を閉めた。
「無事か?怪我は!?」
「ないです。大丈夫。」
「総一郎!アンタ、どこ行ってたの!?心配させやがって!」
美月が走ってきて騒ぐ。二発ぐらい重いパンチを貰った。コレだけで済んでよかったと思う。
「ああ、電気を点けにな。任務は完了だ」
「ああ、お陰で近くの避難所の位置も分かった。今も無事らしいな」
「ま、ちかくでもないけどね」
幸田の言葉を中島が訂正する。
「この避難所がないかも知れない状況で隣の隣の県にあるのは近いだろ!東京とかに行くのは不可能だぞ!」
「そうなのですか、よかった。どうします?」
「近いうちに出発だ」
「分かりました。」
「お前らは休んで良いぞ」
「あり難いです。じゃ、やすみますね」
更に上の階のオフィスに上がる。
横沢がこの上の階をしっかり調べてくれたらしい。
そして、眠ろうとすると外からエンジンの大きな音が聞こえた。
窓に駆け寄り、見てみる。
するとバイクの一団が走って行った。
黒い髑髏の旗が見えた。クラクションなどを派手に鳴らしていたのでゾンビも其方へ進んで行く。
「暴走族・・・バイカーギャングか?」
その過ぎ去って行った賊を見たりして。治安が悪化しているのが目に見て取れる。今まで長年かけて生み出された日本の平和が音を立てて、崩れている。しかし、そんな中でも自分は闇に堕ちたりしないのが大切だと思う。
絶望してそのように悪い方向へ進むのは弱い人間のすることだ。
力ではない、心の持ち方が大切だ。
最後までソクラテスの言葉だが『善く生きる』コレを大切にしていきたい。すでに略奪を繰り返してる奴が思うことではないが。
人間としての誇りを最後まで・・・・。
その後、総一郎が起き上がると隣で葵がいた。
「何をしている?」
「・・・・・寝顔」
そう言うとケータイを取り出し、カメラで取った画像を見せてくる。
そこには涎を垂らして眠っている総一郎が映っていた。
てか、ケータイを持っていたのか。
「消せ・・・」
「・・・・嫌だ。」
そう言うと葵は逃げていった。
その後、追いかけっこがあったのは言うまでもない。
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