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追跡者 敵は身内にいる!

「うがぁぁぁぁ!」





「はぁはぁ、こ、殺される!」


追跡者が叫ぶのが聞える。

総一郎は階段を上がっていく。今は追われていた。

踊り場に出て、背後を振り向くと追ってくるのをあきらめるつもりはないのか総一郎を追ってきていた。


汗で背中が濡れているのを感じる。

ゾンビがそのフロアに居ないかを確かめながら進まないとならない。

ライトで照らすがいないようだ。このビルは本当に日が差し込んでこない。


オフィスに侵入する。

PCがたくさん並んでいる。デスクもあるのでその下に隠れようかとも考えたがやめた。それよりも端に部署のトップがいる部屋のようなガラス張り的な小部屋を発見したのでそこに入り、その部屋のデスクの下に隠れた。

すぐに追跡者こと葵も入ってきた。



「―――・・・・そ~いちろー?」


声の主は女性。しかも知り合いで親しい中ではあるがかつてこんな声を聞いたことがない。

間延びをした声だが静かで冷たく気温が夏だというのに冬山を錯覚させるような。

話し方からもかなり自分が危険な立ち位置にあることを思い知らされた。

皆はこんな感じなのにふざけていると思ったようだが。


葵の今の目が赤く光ってるようにも錯覚させるほどの睨みを利かせる葵はふざけているようには見えなかった。

―――くっそ、こんな事態でこんな目に遭ってるのは絶対、世界で俺が初めてだな・・・・。



~発端は10分前~


「あのな、総一郎」


話しているのは横沢だ。総一郎がSMセットを持ち帰ってから30分後のことだ。

横沢はSMセットの入った箱を一通り見ながら言う。


「確かに、俺は紳士だ」

「変態と云う名のね・・・・」

氷のような視線を総一郎と横沢にぶつけながら美月が冷ややかに言った。


「ああ、そうだ・・・けどな。流石にSMは・・・」

「へ?前にあんな美少女に踏まれたいZEと言ってたじゃん」

「わっバカ、誤解を招くことを言うな。お前が使えや!バカ!」

「いや、俺はMじゃねーし!」

「葵につかってもらえよ!」

「ふざけんな!そんなことになったら死んじまうだろーが!」

横沢と口論になり、掴み合いにまでなる。

傍から見たら二人とも変態で馬鹿丸出しだ。


「お前は前に彼女が出来ないから。この際、彼女にするなら美月でもいいやとか言ってたろ」

「そーゆうお前は葵よりも篠崎さんの方が何かした時に怖くなさそうだからいいなと寝言で言ってるの聞いたぞ!」

「ハッ、あの時の夢か!」

「マジだったのかよ!」

その時、背後で何かが起き上がる音がした。

振り返ると葵が起き上がっていた。その背後では美月がゆらりと立ち上がった。

とびっきりの笑顔で葵は言った。


「篠崎さんのほうが・・・・いいって?」


「いや、あの・・・・」

「そう言ってたぜ!スタイルもそっちのがいいって」

横沢がここぞとばかりに言う。美月には気がついていないようだ。

「わっバカ、横沢ぁ~」

「仕返しじゃ!」

「ふん、返り討ちにしてくれる!」

第二ラウンドが始まるかと思われたがそうはいかなかった。


「・・・・・・・そう」


すると葵は凄い速さで近づいて来た。そして、引っ搔いてきた。

女性の伸びた爪。形は美しいの一言に尽きる。これを武器に転用するとは。

総一郎は慌てて、首を逸らすと爪が頬を掠めた。頬が熱くなるのを感じる。手で触れてみると少しだが血が出ていた。葵の爪が赤く染まる。


「退散!」


総一郎は走って、階段を登っていった。

葵も追いかけてきて、今に至っている。

その僅か数秒も経たないうちに横沢の断末魔のような叫びも聞えた。


葵がこの部屋に入ってきた。

総一郎は口に手を当て、音を出さないようにする。





「―――…総一郎。おとなしく…出てきたら……許す」


「―――!?」


突然の申し出に総一郎は驚く。そして、本当かを疑う。

陰から見ると葵はそういいながらも辺りを見渡している。赤い目があちこちに行き来する。

―――恐らく、まだ居場所は割れていない!・・・・ならば出て行かなければバレない。


すると総一郎のモミアゲから出た一滴の汗が床に落ちた。

ポトっと微妙に音が出た。

流石にバレないと考えたが葵の足音が近づいて来ていた。


デスクの前まで来たと感じたときには既に時は遅し。

細く冷たい手にガッと足を掴まれデスクの下から引きずり出された。

腕の細さとは思えない力だ。


「わっ!」


葵は此方を無機質な目で見つめた。



全てを悟った。

終わりだ。今、目の前にいるのはゾンビなんかよりも恐ろしい。


総一郎は決めた。プライドなどは捨て去り、一つの行為をする。


「すいませーん!」


土下座である。それも手のひらを上に向ける。

これは害意のないことを示す精一杯の所為である。


葵はそれを知っていたようだ。

それを見て、総一郎に言う。


「―――…葵は世界一の美人……言え」


「葵さまは世界一の美人でございます!はい、これが正直な気持ちでございます!」


「私…嬉しいわ」


―――……脅迫だ!

葵は満足したのか戻っていった。

―――なんやかんや、あいつは単純だよな。

思わず笑みが零れる。

再び、横沢の悲鳴が聞えたので総一郎もビクビクしながら戻る。







「総一郎君、無事のようだね。よかったよ」

「危険だと分かってたなら止めてくださいよ」

狩野さんに言う。


「わるいわるい、人の恋路は邪魔しちゃわるいだろ。ははは…」

「それは必要のない気配りですよ……はぁ、そもそも、葵とはそういう関係ではないですよ」


「お疲れのところ悪いが総一郎君、このビルの地下に行ってくれないか?」

幸田さんが地図を渡しながら言う。





「地下ですか?一人で?」

「ああ、狩野もだ。地下に非常時の発電設備があるみたいなんだ。君は臨機応変に動けるだろうから適任だろ。」

「発電設備ですか。わかりました」


「ああ、そいつを頼む。監視カメラも使えるし情報を早く集めたい。出来れば入り口も辺りのもので塞いで欲しい。」

「分かりました」


「総一郎君、行こう!」


「はい、狩野さん」


そして、階段へ行く。



「中島さん、戻ってきたら三回ずつ叩きますから」

「分かった。テンポ良く頼むよ」

「ああ、はい(テンポ?)」


そして、非常扉を開く。ゾンビは侵入してきていないようだ。

マカロフを構えながら歩いていく。


入り口を見るとゾンビはよって来てない。横沢の撒いたブツは効果覿面であった。

とりあえず、狩野さんと協力して付近にあったベンチや自動販売機を扉の前に置いた。


「これで良しだな」


狩野さんと地下への階段へ向った。

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