人の襲撃 (人が重要!)
県庁の建物内では死体が大量に転がっていた。
「うっぷ・・・・」
「大丈夫?篠崎さん」
美月が部屋の脇でしゃがむ篠崎に声を掛ける。
「大丈夫・・・・・戻してないよ」
「これは酷い、何より臭いな」
総一郎もこの臭いの中では吐き気がして堪らなかった。
おびただしい量の血、それが引き摺った跡、血生臭い臭い。
どれをとっても最悪であった。
中を歩いていくと『化け物対策室』という張り紙の部屋があったので中を覗く。
中央の大きなテーブルの周りに椅子が置いてあり、テーブルには地図やらいろいろな書類が乱雑に置いてあった。
ホワイトボードには自衛隊の部隊名らしきものが書かれていて赤くバツが書かれていたりしていた。
バツの数は圧倒的に多かった。
「これって自衛隊がやられてるって意味か?」
「バカか。あんな奴らにやられるのは初めだけだろ」
横沢が自衛隊がゾンビにやられるというありえないことを言うが総一郎は否定した。
「奴らがそんなに強かったら俺らじゃ一日すらもたねーよ」
「けど・・・最近の内閣とかダメっぽいじゃん。震災のときは電力会社を怒鳴ったりしてまるで自分が悪いように見せるだけの対応しかしてなかったと聞いたが」
「やめろ、ぶっちゃけ、俺は知識がないからわからん」
「総一郎・・・」
「なんだ?」
いつの間にか総一郎の背後に回り込み、総一郎の袖を引いていた葵が言う。
「物音がする」
「どこだ?」
「あっち」
部屋の外に出て葵の言う方を見るが何もいない。
「よし、俺と葵で見てくる。他はここで待機してくれ」
そう言うと総一郎はM60を手に構え、『化け物対策室』から出て、歩いていく。
ゾンビを警戒し、角には気をつけて、歩く。
突き当たりにはドアがあり、他には道はなかった。
「来るならこっちだけだな」
「・・・・・・うん」
そして、ドアの前に来る。
そのまま、ドアを開けて、中に侵入する。
M60を辺りに向け、何かが居ないか探す。するとテーブルの下から人が三人出てきた。
「人間か?・・・・撃たないでくれ」
一人の男が話すので其方に注意が向いた。すると別な男が現れ、M60を向けられた。もう一人の男がトカレフを此方に向けた。
「動くな!お前らは何者だ?」
今度は向こうが総一郎たちに聞いてきた。
「あの暴力団の仲間か?」
「暴力団?知らないな・・・・てかお前らじゃないか?ソレ。それに俺らは只の高校生だ。」
「なに?我らが暴力団だと?」
「だってトカレフ拳銃とか日本の暴力団の標準装備と云ってもいいよな」
トカレフを片手で指差しながら総一郎が言う。
「俺らは違う、一般市民だ。」
「本当か?信用ならないな・・・」
「本当だ」
一見、工事現場とかにいそうなオッサンだ。コワモテでもない。本当に暴力団関係ではなさそうだ。何より、自分たちの正体がばれない様に振舞うだろう。身分証も見せ合ったし、安全とは互いに一応だが分かった。
総一郎は銃を下ろした。
「ホラッ、お互いに一般市民だと分かりましたし・・・・私は中村 総一郎と申します。」
「・・・・・葵」
二人は相手の警戒を解くために紹介をした。しかし、未だに警戒は怠らなかった。
一般人だから安全?・・・そんなの馬鹿らしい!
「ふむ、俺らはこの近くの工事現場で働いていた・・・私は幸田 俊之」
真ん中の銃を構えていない人が言う。そして、トカレフのオッサン、M60のオッサンもそれぞれ自己紹介をしてトカレフが中島 健、M60が狩野 正志だということだ。
「此方、総一郎、民間人の三人と合流した。其方に戻る」
無線が鳴ったのでそう返すとと仲間が居ることを伝えて『化け物対策室』へ戻る。安々と別な仲間がいることを知られてしまったことに苛立ちながらも仕方なく連れて行く。
彼らと話すと今朝まではここは安全地帯であって食料が配給制でそれまでは安全そのものだった。しかし、それが不満だった暴力団の奴が食料を奪おうと暴れたお陰で化け物に完全に気取られ、バリケードも破壊された。ということらしい。
「もしかして・・・・そいつは逃げたのですか?」
総一郎は尋ねた。
「ええ・・・・拳銃を持ってました。やむを得ずに一人は殺しましたが」
「そうですか・・・」
総一郎は苦笑いをしながら言った。そして、警戒心も引き立てた。
―――この男たちはできると。
仮に裏切られでもしたら高校生など簡単に制圧されるだろう。
そのように考えるとぶわっと冷や汗がだらだらと垂れてきた。
そうなると彼らの銃も意識する。
彼らの銃は腰に収まっていた。
「―――――――」
「―――う一郎」
<総一郎!!!>
「――!!!・・・どうした?」
「お前、酷い顔してるぞ?」
横沢が心配そうに言う。
「だ、大丈夫だ」
「俺たちも君たちに付いていく事にしたわ」
「へ?」
「大歓迎です!戦力は大きい方がいいですから!」
美月が言う。
「うん」「そうだな」「・・・・賛成」「はい」
横沢、葵、篠崎、麻美が言う。
その時、外から車の音が聞こえた。
凄く古そうな車が数台やってきた。
そこからはグラサンを掛けたオッサンが数人出てきた。
武器を全員が所持していた。
「おい、奴らか!?」
「まずい!」
「逃げられそうにないな・・・・何で戻ってきたんだ?」
「お前らは隠れとけ!」
総一郎は美月らに言った。
「ゾンビは来てねぇだろーな」
「総一郎!複数人の男が玄関から入ってきてるぞ!」
横沢が総一郎の不安な声を打ち消した。もう、侵入してきたようだ。
「幸田さん、注意を逸らしてください!横沢!ついて来い!」
「分かった!任せろ!」
この男・・・・幸田さんか・・・・あっさり信用したな・・・ホントに善人なのかもな
幸田さん、狩野さんの2人は玄関へ向った。
中島さんは『化け物対策室』に残り、拠点の防衛に。
総一郎はトイレに入り、洗剤を取って、廊下にばら撒いた。
〔総一郎くん、敵が侵入、君たちの方へ行った〕
篠崎の声が無線から聞こえた。
すると足音が聞こえたので角に隠れた。
暫くすると複数人が走ってきて、滑って転ぶ音が聞こえた。
総一郎は出て行き、木刀で殴った。もう一人、敵がいたが横沢が殴りかかっていた。
総一郎の相手は殴ってきた、防ぐことができずに怯むとナイフを取り出し、切りかかって来たが脇で相手の腕を押さえつけるとその腕を壁に叩きつけて、ナイフを落した。
鼻血が総一郎の鼻から滴り落ちてきていた。
頭突きをして、フックして、金的に蹴りをいれた。
そして、倒れたところを蹴りまくる。相手は倒れて気絶したようだ。
横沢も相手を倒したようだ。
相手が持っていた銃を奪うとそいつらを縛り付けた。
「こいつら、どうする?」
「今は後だ!」
「しっかし、また銃が手にはいるとは・・・運がいいな。ボーさん、万歳だね。」
「ご都合主義ってやつだ。急ぐぞ。万歳も全員無事ならの話だ。」
別なところから銃声が聞こえていたのでそこを別な地点から攻撃することにした。
窓を開け、外に出て様子を覗うと玄関付近で銃撃戦を繰広げていた。
「総一郎くん、我々は玄関から撃っている」
その時、幸田の声が無線機から聞こえた。
いつの間にか森のものを渡していたようだ。
「分かりました、奴らを背後から撃ちます」
「私たちも窓から撃ちます」
美月が言う。
「よし、行くぞ!」
総一郎は号令をかけ、マカロフを持って、暴力団たちの背後へと近づき、狙いを定めて、撃った。
頭部を狙ったはずなのに胴体に命中したが一人は倒れた。
その時、目の前に瓶が飛んできて、割れると燃え出した。
「火炎瓶か!」
「総一郎・・・・・・任せて」
葵の声が聞こえた。車の影から覗くと男が火炎瓶に火をつけてるのが見えた。
「やばいぞ!」
横沢が言う。
すると男が持って、高く掲げていたビンは割れた。
瓶の中の液体が男に降り注ぎ、あっという間に火が降り注ぐ形となった。
もがき、地面をゴロゴロ回って火を消そうとしていた。
「!?」
総一郎は驚き、凝視した。
「・・・・・どう?」
「どう?と聞かれてもな。とりあえず、ありがとな」
無線で葵に礼を言う。
炎は二人の男を巻き込んでいった。
「ふははは!」
総一郎は高笑いをする。それは悪魔の笑い。主人公らしからぬ顔だ。
そして、残った敵へとマカロフ拳銃を連発で撃つ。
横沢も撃ち始める。
敵は勢いに押されたのか倒れていった。
しかし、残った敵も窮鼠猫を噛むように反撃をしてきていた。
最上階からの美月の援護、幸田たちの反撃などで次第に暴力団のグループを押していって、激しい反撃の隙も与えなくなった。
その時、総一郎の所への銃撃が止んだ、総一郎は遮蔽物から出て、撃った。
此方を狙おうと出てきた男が胸に着弾して倒れた。
「総一郎、あっちに・・・・」
「なんだ?」
総一郎は横沢の言う方を見るとゾンビが歩いてきていた。
「ゾンビだ!!!美月!外に出て来い!逃げるぞ!幸田さんも!中島さんも!」
無線で皆に伝えると美月はすぐに出てきて、総一郎と合流をする。
しかし、幸田さんたちと合流した中島と幸田さんたちは玄関で釘付けになっていた。
総一郎は移動をする。
そして、撃つ。が車が邪魔で当たらない。
「くっそ!美月!あの車を横沢と動かして持ってきてくれ!」
近くにあったマイクロバスを指差して、美月と横沢に頼んだ。
「篠崎、お前はここで奴らの気を逸らしてくれ!」
「分かったわ!」
そういうと走って、別な場所へ移動した。
そして、ポストに隠れて、狙った。がなかなか出てこなかった。
するとマイクロバスが走ってきた。
「よくやった!篠崎たちは乗り込め!援護する。」
総一郎は暴力団の隠れているところを撃ちまくって、出てこれないようにした。
その隙に篠崎たちは乗り込んだ。
そして、マイクロバスは幸田たちと暴力団の間に割り込み、停車した。
その隙に幸田たちはマイクロバスに乗り込んだ。
バスは総一郎の所へやってくる。
ゾンビはもう10mもないところへ来ていた。
暴力団の攻撃もあったがバス内からの援護により、窓から手を借りて乗り込んだ。
そのまま、バスが発車した。
残った暴力団の方が美味しく食べられているのが見えた。
そのゾンビの表情を見て、一言。
「星一つかな?」
「何がだよ!?」
「星ゼロね・・・・顔的に」
美月が酷いことを言う。
「ハハハ、そんなこといわれたら、オジサンだったらショック死しちゃうよ。」
中島さんが笑いながら言った。
「お前だって似たような顔だろ」
中島さんは狩野さんに言われてショックで体育すわりを始めた。
「そこらへんにしとけよ」
幸田さんが言う。
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