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中二病の山井君が無双し過ぎてカオス  作者: 猫都299


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2/2

2 思い描いていた展開との誤差


 小逆支君たちに見付かった。


 コンビニの駐車場から、元いた公園へと連れて行かれる。

 多分……コンビニの駐車場には、人目があるからだろう。比べて、家の近所の公園は。夕方以降には利用者が、ぐっと少なくなる。


 鳥蒔君が耳打ちしてくる。


「逃げようと思うなよ。お前が……この辺りの野良猫にエサをやってんの、知ってんだぞ? もしも今、逃げたら。猫がどうなっても、知らねーぞ?」


「くっ……!」


 猫に何かするつもりなのか? 卑怯者めっ!

 何も抵抗できないオレを見て、優越感に浸っているのかもしれない。鳥蒔君がニヤリと、昏い目をして笑う。


 それにしても。


 彼らに促されるまま、公園へと続く坂を上っている間も……考えていた。さっきの猫について。


 何だったんだ? 「特殊能力を与えてやろう」と、言っていた。


 ネットで読んだ小説に、似たような話があったのを思い出す。

 物語の序盤に登場し、主人公にスキルを付与したり。異世界転生させたりする役割を担う、登場人物。……つまり。


「神様の類だったのか……?」


 呟く。いやいや。小説と現実を、混同してはいけない。普通、あり得ないだろ。ここが小説の世界ならば、いざ知らず。紛れもない現実で、ファンタジーな出来事が起こる訳がない。


 オレだって「間違い」を起こさないように気を付けている。

 これまでだって。「普通の」人間に見えるように「漆黒の黒幕」だった事実を隠している。


 もし、隠さずに。ありのままのオレを出したら。


 考えて、冷や汗をかく。期待と不安に、背中がゾクッとする。

 ひたすらに続けてきた「我慢」をやめて、本来の自分を出してもいいのなら。


 しかし同時に。それは日常生活を揺るがす「危険」を孕んでいる。「漆黒の黒幕」であった頃の能力を、調節できるのか分からない。今は地球人になりすましているのもあるし。


 ……そろそろ。試してみるのもアリかもしれない。


 顎に手を当て、思考しながら歩いている内に。先程の公園へと戻って来た。

 小逆支君が言う。


「よォし。さっきの続きといこうじゃねーか」


 指をポキポキと鳴らして、近付いてくる。凶悪な顔で。


「俺も鬼じゃねぇ。条件さえ呑めば、同居の件は目を瞑ってやってもいい」


 小逆支君の言い分に、眉をひそめて聞き返す。


「条件?」


「ああ」


 小逆支君がニヤリと笑み、要求してくる。


「花憐ちゃんか、アヤメさん。どっちかと俺が、付き合えるように協力しろ」


 ……!


 花憐かアヤメと、小逆支君が付き合う——?


 ドクンと。己の奥底から、不気味な心音がする。

 何だろう。今までに感じた事のない嫌悪が、胸を支配する。これは……!


「ダメだ」


 はっきりと断る。


「妹たちに、手は出させない!」


 強く言い切って、目の前の小逆支君を睨み付ける。


「あん?」


 小逆支君が、不機嫌な雰囲気で反応する。相手の瞳に、凶悪な気配が灯る。


「学年でも屈指の美少女二人を、独り占めする気か? ますます気に食わねぇ!」


 殴ろうとしてきたので、横へ躱す。そのまま走って、距離を取ろうとした。——直前。視界が乱れる。

 何かに躓いて、地面に手をついて倒れた。


「同じ手は食わねぇよ」


 頭の上から声を掛けられる。鳥蒔君だ。彼は「ひっひっひっ」と笑いながら、ひょこひょことした足取りで小逆支君の側へ戻って行く。

 オレはどうやら、鳥蒔君に足を引っ掛けられて転んだようだ。


「大人しく、妹を差し出せば済むだろ? 妹に特別な感情がなければ……ね」


 鳥蒔君が、どこか意味深に目を細める。


「くっ……!」


 焦る。昨日まで考えた事もなかった。妹なんて、ウザいとさえ思っていた。だが。こんな状況に陥って、気付いてしまった。


 妹に彼氏ができるの、何か嫌だ。

 オレより先に恋人ができるの、許せねぇ。


 何より。妹たちには、まだ早い。

 中二だぞ? 十年くらい早くないか?


 小逆支君たちが立ち上がろうとするオレを見て、ゲラゲラと笑っている。奥歯を噛み締める。


「妹たちは渡さない……!」


 低く、決意を口にする。


「はっ? 負け犬は負け犬らしく、四つん這いになったまま震えてろよ。ちびりながらな!」


 小逆支君が言うと、ほかの二人も笑い出す。


 好い加減に。オレも、ブチ切れ寸前だった。

 こいつらで「試す」と、決めた。


 ボソボソと、小声で合図を送る。


『あんれれ、久しいな。今回は何の用だ?』


 頭の中に声が響く。懐かしい。彼はちょっとした友人だ。「山井過推」になってから、コンタクトを取るのは初めてだった。彼へ依頼する。


『威力を最小にしたスターキャノンを一発。オレの目の前に、落として欲しい。合図は「スターキャノン」で』


『了解。今度、地球の酒を奢れよ』


 通信は終わった。


 立ち上がって、小逆支君、鳥蒔君、越銀君と向き合う。彼らとオレの間には、数メートルの距離がある。

 オレは、閉じていた瞼を開く。


「オレには、異星人の友達がいるんだ」


 話し出すと、三人が笑うのをやめた。

 静かになってくれたので、そのまま説明を続ける。


「異星人の中には。地球人に見付からないように、宇宙船を隕石にカモフラージュしている奴らもいる。宇宙船から発射される攻撃は、地球を一瞬で消し去れる程に強力なものなんだ。だから威力を最小にして、この場に落とす。……受けてみるか?」


「ちょ」


 鳥蒔君がうろたえている。


「さすがに……」


 越銀君が怯んでいる。


「やべー! お前、ヤバ過ぎるだろ。中二病も、ここまで進行すると。憐れに思えてくるな。目ぇ覚ませよ。現実を見ろよ」


 小逆支君がゲラゲラと笑う。鳥蒔君と越銀君も涙目で、腹を押さえながら笑っている。

 馬鹿にされるだろうと、分かっていたけど。実際にされるのは、嫌な気分になる。


 今回の件が、うまく彼らに響いてくれればいいのだが。



 この時のオレは。大馬鹿野郎だった。軽く考えていた。


 彼らとオレの間に、威力を最小にした『スターキャノン』を落として。相手がビビッて、大人しくなってくれれば。丸く収まると……本気で考えていたのだ。



「早くやって見せろよ。山井過推!」


 小逆支君が挑発してくる。

 一呼吸置いて、応じる。


「行くぞ!」


 右手を挙げて、彼らの方へ振り下ろす。「合図」を、唱える。


「スターキャノン!」



 何も起きない……。


 『あれ、もしかして。異星人と友達なのは、ただの思い込みで。オレは本当は、中二病なだけだったのか?』と、疑いそうになる一瞬の後。


 キュインッ。


 高周波のような耳鳴りがする。眼前に白く、光の柱が落ちたように思う。

 目を閉じている間、暫く。音が聞こえなくなる。


 次に瞼を上げると。


 大惨事だった。


 オレの履いているスニーカーより先の地面に、クレーターができている。多分……直径、五メートルくらいの。


「あ……あわ……あわわばばばば」


 顎がガクガク震え、舌を噛みそうになる。

 黒い……何かが焦げた跡が、クレーターの中央の土に付いて……。


「越銀君!」


 呼びながら、辺りを見回す。


「鳥蒔君!」


 まさか……まさかな。


「小逆支君!」


 公園にはオレのほかに、誰もいない。


 もう一度。クレーターの、中央の染みを見る。

 震えが強くなり、地面に両膝をつく。四つん這いに、クレーターを覗き込む。


 うっ!

 股間が生温かい。少し……漏らしてしまっている。


 立つ事もできないまま、負け犬のように震えていた。


 ただ、ちょっと。脅かすだけのつもりだったのに。

 スターキャノンの「最小」の威力が、思っていたよりも大きかった。オレが連絡しなかった間に、改良されたのかもしれない。


 小逆支君、越銀君、鳥蒔君を。跡形もない程に。

 この世から、消し去ってしまった……。


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