第6話「元・公爵令嬢の手料理。だが、異世界の食材が絶望的すぎた」
「レン様、お待たせいたしました! 昼食の準備が整いました!」
システムキッチンの使い方をすぐに覚えたクレアが、自信満々の笑顔で料理をテーブルに運んできた。
メニューは、街で買ってきた固焼きパン、ホーンボアの肉の香草焼き、そして野菜のスープだ。見た目は非常に美味しそうで、元公爵令嬢とはいえ、冒険者生活で料理スキルもしっかり身につけていたことが窺える。
「おお、美味そうだな。いただきます」
俺は期待に胸を膨らませ、まずはスープを一口飲んだ。
「……ん?」
なんだこれ。
口の中に広がったのは、強烈な青臭さと、舌が痺れるような『エグみ』。そして、不自然なほどの塩辛さだ。
「ど、どうでしょうか……? お口に合いましたか?」
「いや、クレアの調理の腕は悪くないと思う。ただ……」
俺は次に、ホーンボアの肉をナイフで切り分け、口に運ぶ。
硬い。ゴムのようだ。血抜きが甘いのか獣臭く、それを誤魔化すために大量の香草と塩が塗られているが、根本的な解決になっていない。
極めつけはパンだ。保存性を高めるためとはいえ、ほとんど石のように硬く、噛めば噛むほど顎が疲れる。
(これが……中世レベルの異世界の食事情か……ッ!)
前世でレトルト食品やコンビニ弁当ばかり食べていた俺でも分かる。
素材そのものの質が、圧倒的に低いのだ。
「レン様……? あの、もしかして、お不味かったでしょうか……?」
「あ、いや! 泣きそうな顔をするな! クレアのせいじゃない。原因はこれだ」
俺はスープに使われている塩が入った小袋を指差した。
「この塩、街で買った岩塩だろう? これにはマグネシウムなどの不純物が大量に混ざっている。だから変な苦味やエグみが出るんだ。それに野菜も、栄養のない痩せた土地で育ったせいで、本来の甘味が引き出せていない」
「えっ……? お塩に不純物……? ですが、これは王都でも一般的に流通しているものと同じですよ?」
「マジか。王族もこんなの食ってんのか」
俺はため息をついた。
どんなに立派なシステムキッチンを作っても、素材がこれでは宝の持ち腐れだ。
このままでは、俺の快適なスローライフ(食生活)に重大な支障をきたす。
「クレア、少し外に出るぞ」
「はい? 食事の途中でどこへ……?」
「決まってる。美味い飯を食うために、『畑』を作るんだよ」
俺は立ち上がり、家の外――見渡す限りの荒野へと足を踏み出した。
「畑、ですか? ですが、この辺りの土は魔力を含んでおらず、作物が育たない『死の土地』だとギルドでも言われていますが……」
「この世界の連中にとってはな。だが、俺にとっては最高の『キャンバス』だ」
俺は足元の土を踏みしめ、口角を上げた。
美味い野菜とは何か。
それは、適切な「土壌」から生まれる。
「見てろ、クレア。現代の『農業チート』ってやつを教えてやる」
最高の食材を手に入れるため、俺は己の【土魔法】をかつてない規模で解放する準備を始めた。
お読みいただきありがとうございます!
せっかくの手料理も、素材が悪ければ台無しです。
ここからレンの「農業チート」が炸裂します!
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▼次回予告
死の土地? 関係ありません。
現代農業の知識(化学肥料)で、荒野を一瞬で「極上の農地」に変えてみせます!




