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第3話「異世界の宿屋が不衛生すぎたので、土魔法で鉄筋コンクリートのマイホームを建ててみた」

ギルドでの騒動は、なんとかホーンボアの素材を高値で買い取ってもらうことで誤魔化して逃げてきた。あのドワーフの爺さん、最後は涙目で俺の足にすがりついていたな……。


ともかく、当面の資金は手に入った。

俺は街で一番マシだという宿屋を紹介してもらい、部屋の扉を開けた。


「……うっ」


鼻をつく、カビと汗が混ざったような酸っぱい匂い。

部屋の隅には蜘蛛の巣が張り、ベッドのシーツはいつ洗ったのか分からないほど黄ばんでいる。よく見ると、南京虫のような小さな虫が這っていた。


「……無理だ」


前世で研究室に寝泊まりしていた俺でも、最低限の清潔さは保っていた。

こんな不衛生な場所で寝たら、一晩で病気になりそうだ。


俺はそっと部屋の扉を閉め、宿代を諦めて足早に街を出た。

日が沈みかけているが、こんなことなら外で野宿した方がマシだ。


街から少し離れた、見晴らしの良い平原。

周囲に魔物の気配がないことを確認し、俺は立ち止まった。


「さて。宿がないなら、自分で作るまでだ」


俺の【土魔法】は、「元素操作」だ。

土を捏ねて泥のアドベを作るような真似はしない。もっと堅牢で、清潔で、快適なものを作る。


俺は足元の土に両手をかざし、大地深くへと魔力を浸透させた。


(石灰石、粘土、石膏……それらを分子レベルで結合。現代建築の要、ポルトランドセメントを錬成する。さらに地中の鉄分を抽出し、骨組みとなる鉄筋を形成)


基礎工事から棟上げまで、頭の中の設計図を現実の物質へと強制的に変換していく。


(壁は厚く、断熱性と防音性を完璧に。床は滑らかに磨き上げ、窓枠には……砂から抽出したケイシリカで、透明度100%の強化ガラスを生成!)


「【土魔法・構造物建築クリエイト・ストラクチャー】!」


ズゴゴゴゴゴッ!!


大地が鳴動し、俺の目の前の地面が隆起する。

数秒の間に組み上がったのは、中世ファンタジーの世界にはおよそ似つかわしくない、直線的でスタイリッシュな白い立方体。

広さ約二十畳。巨大なガラス窓を備えた、堅牢無比な『鉄筋コンクリート造のワンルーム』だった。


「よし、完璧だ」


中に入ると、外の風音は完全に遮断されていた。

土を極限まで滑らかに固めた床は、大理石のようにピカピカに光っている。

ベッドフレームも土魔法で生成し、街で買ってきたばかりの清潔な獣毛の布を敷き詰めた。


「あとは……これだな」


部屋の奥に作ったのは、なめらかな曲線を描くバスタブだ。

俺は川まで行き、買ってきた水魔法の魔石を使ってお湯を張り、久しぶりの風呂に浸かった。


「……はぁぁぁぁぁ、生き返る……」


温かいお湯が、過労で死んだ前世の疲れまで溶かしていくようだ。


王様に「ハズレ枠のゴミ」と罵られ、理不尽に追放されたあの日(といっても数時間前だが)。

だが、今の俺は最高に自由で、最高に快適だ。

面倒な人間関係も、徹夜の実験もない。


「しばらくは、ここで気ままにスローライフを満喫するとしよう」


俺はピカピカのマイホームで、ふかふかのベッドにダイブした。

自分が作ったこの家が、物理的にも魔法的にも、王城よりも遥かに頑丈な要塞になっていることなど、この時の俺はまだ知る由もなかった。

お読みいただきありがとうございます!


異世界なのに「鉄筋コンクリートのワンルーム」が爆誕しました。

王城より頑丈です。


面白い!と思ったら、下の【☆☆☆☆☆】から評価をいただけると嬉しいです!


▼次回予告

快適な家には、可愛い同居人が必要ですよね?

次回、訳ありの「元・公爵令嬢」が登場!

彼女もまた、レンと同じく追放された身で……?

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