第28話「ドワーフと協力して『空飛ぶキャンピングカー』を作ってみた。〜サスペンションとモーター駆動で、お尻が痛くならない快適な空の旅へ〜」
「……というわけで、ちょっと遠出の観光に行きたいんだが、いちいちこの巨大な要塞ごと動かすのも目立つだろ?」
テラスでの極上バーベキューから数日後。
俺はクレアとガンダルを集め、羊皮紙に描いた一枚の設計図を見せた。
「ほほう……車輪が四つに、箱型の車体。馬車のようじゃが、馬を繋ぐ場所がありませんな?」
ガンダルが髭を撫でながら首を傾げる。
「ああ。馬車なんて遅いし、何より揺れてお尻が痛くなるからな。俺たちが作るのは、馬がいらない自走式の『キャンピングカー』だ」
「じそうしき……キャンピング、かー?」
「要するに、快適なベッドとキッチンが付いた『動く高級ホテル』だと思ってくれ」
俺は地面に手をかざし、【土魔法・素材錬成】を発動させた。
生み出すのは、航空機にも使われる軽量かつ超高強度の「ジュラルミン(アルミニウム合金)」と、車体の骨組みとなる「カーボンナノチューブ(炭素繊維)」。
「ガンダル。俺が素材を出すから、この設計図通りの寸法で外装とシャーシ(車台)を打ってくれ。ミリ単位の狂いも許されないぞ」
「お任せくだされ! レン殿の出す未知の金属を打てるなど、職人冥利に尽きますわい!」
ガンダルは鼻息を荒くしてIH炉に向かい、俺の錬成したジュラルミンを魔法のような手持ちのハンマーでガンガンと成形していく。ドワーフの熟練技術は、現代のNC旋盤(工作機械)にも引けを取らない精度だ。
その間に、俺は心臓部である「モーター」の作成に取り掛かった。
「土魔法の本質は鉱物操作、そして磁力だ」
銅線を幾重にも巻きつけたコイルと、強力な永久磁石を組み合わせる。
動力源には、フェンリルの『雷の魔石』から電力を引っ張ってきた小型の蓄電池を使用。電磁誘導の力で回転エネルギーを生み出す、異世界初のEV(電気自動車)エンジンの完成である。
さらに、快適な乗り心地を実現するため、車軸にはバネと「磁力の反発」を利用した電磁サスペンションを組み込んだ。これでどんな悪路でも(あるいは空を飛んでも)揺れを完全に吸収できる。
数時間後――。
「完成じゃあぁぁっ!!」
「よし、内装も完璧だ」
テラスの端に鎮座していたのは、流線型の美しいシルバーボディを持つ、全長6メートルほどの『超特装車』だった。
屋根には浮遊の魔道具(オークションの余り金で大量購入した)が組み込まれており、タイヤを格納すれば空も飛べるホバーモードを搭載している。
「す、すごいですレン様! 外はピカピカの銀色なのに、中はまるで要塞のお部屋をそのまま小さくしたみたいです!」
クレアがキャンピングカーのドアを開け、歓声を上げた。
車内にはフカフカのダブルベッド、氷の魔石を使った小型冷蔵庫、IHコンロ付きのミニキッチン、さらには冷暖房まで完備されている。床には最高級の絨毯が敷き詰められ、土足厳禁だ。
「よし、さっそくテストドライブだ。ガンダルは留守番(工房で鍛冶)を頼む。冷蔵庫の肉と酒は好きに飲み食いしていいぞ」
「おおっ! 行ってらっしゃいませ、レン様! ワシは思う存分、鉄を打ち続けますぞーっ!」
(すっかり引きこもり鍛冶職人と化したガンダルに見送られ、俺とクレアは車に乗り込んだ)
「クレア、シートベルトを締めて。いくぞ」
「はいっ!」
俺が運転席の魔力ペダル(アクセル)を踏み込むと、モーターが『キュィィィン!』と小気味良い音を立てて回転を始めた。
浮遊の魔具が起動し、車体がふわりと宙に浮く。
「……っ! 全然揺れません! 王城の馬車は、少し動いただけでガタガタと胃がひっくり返りそうだったのに!」
「電磁サスペンションが振動を殺してるからな。これなら、車の中で紅茶を淹れても一滴もこぼれないぞ」
俺はハンドルを切り、空中要塞のテラスから大空へと車を発進させた。
窓の外を、真っ白な雲と青空が飛ぶように流れていく。
車内はエアコンが効いて涼しく、クレアが淹れてくれた紅茶の良い香りが漂っている。
「最高だな、空のドライブ」
「はいっ! まるで夢を見ているみたいです!」
最強の要塞に、最高の移動手段まで手に入れた。
俺たちの行き先を阻むものなど、もうこの世界のどこにも存在しない。
「よしクレア。とりあえず海でも見に行くか。新鮮な魚介類で『海鮮丼』でも食べようぜ」
「海鮮丼! わぁぁっ、楽しみです!」
俺たちは銀色の車体を輝かせながら、新たな食材(とスローライフの充実)を求めて、はるか南の港町へとアクセルを踏み込んだ。
お読みいただきありがとうございます!
馬車は遅いしお尻が痛くなる! ということで、モーター駆動&電磁サス搭載の「キャンピングカー」を作ってしまいました。
冷暖房完備の動くホテルで、いざ快適な空の旅へ!
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▼次回予告
キャンピングカーで向かった先は、南の港町。
目的はもちろん、新鮮な海の幸(海鮮丼)!
しかし、その海では「とある巨大な魔物」が漁に出る船を襲っていて……?
レンの理系魔法が、今度は海で火を噴きます!




