第27話「ドワーフ特製のチタン合金グリルで『天空バーベキュー』を開催。〜Sランク魔獣の肉と冷えたエールで、職人の魂も胃袋も陥落した〜」
「レン殿! 出来上がりましたぞ!!」
翌日の夕方。
IH(電磁誘導加熱)炉の設置された真新しい工房から、ガンダルが興奮した様子で駆け出してきた。
その手には、鈍く銀色に輝く網目状の金属板と、頑丈な土台が握られている。
「おお、早いな。さすがは熟練のドワーフだ」
「レン殿が錬成してくだされた『チタン』とかいう金属……とんでもない代物ですじゃ! 鉄より遥かに軽く、それでいてミスリルより熱に強く、絶対に錆びない! ワシの職人人生で最高の傑作グリルが完成しましたぞ!」
俺は受け取ったBBQグリルをテラスに設置した。
チタンは熱伝導率こそ鉄に劣るが、その分熱容量が小さいため、火にかければ一瞬で高温になり、肉の表面を一気に焼き上げることができる。まさにバーベキューにうってつけの素材だ。
「よし、じゃあさっそく火入れも兼ねて『天空バーベキュー』といくか。クレア、冷蔵庫から肉とエールを出してきてくれ」
「はいっ! お待ちしておりました!」
エプロン姿のクレアが、氷牙竜の魔石でキンキンに冷えた冷蔵庫から、分厚くスライスされた肉の山を運んでくる。
先日倒したSランク魔獣『天狼』の極上霜降り肉と、ガルドと一緒に食べた『レッド・バイソン』のAランク肉だ。
「なっ……!? そ、その肉から放たれる凄まじい魔力は!? まさか、おとぎ話の神獣の肉ですかな!?」
ガンダルが目ん玉を飛び出させて肉を指差した。
「ああ、庭のトマトを踏まれたからちょっとレールガンで吹き飛ばした奴の肉だ。ガンダルも一緒に食うか?」
「トマトを踏まれたから神獣を……!? い、いや、ワシのようなしがない鍛冶師が、そのような国宝級の肉を口にするなど……」
遠慮するガンダルをテラスの椅子に無理やり座らせ、俺はチタン製グリルの下に火の魔石(出力弱め)をセットした。
熱せられたチタンの網に、牛脂(バイソンの脂)を薄く引く。
「じゃあ、焼くぞ」
ジュゥゥゥゥゥッ……!!
肉を乗せた瞬間、テラス中に暴力的なまでの焼ける音と、香ばしい匂いが爆発した。
俺が精製した純度100%の塩と、ブレンドした特製スパイス(ガラムマサラ)が、Sランク魔獣の肉汁と混ざり合い、化学反応(メイラード反応)を起こして極上の旨味成分へと変化していく。
「〜〜〜〜ッ!!」
ガンダルが鼻を押さえ、椅子から転げ落ちそうになっている。ドワーフの鋭い嗅覚には刺激が強すぎたらしい。
「よし、表面はカリッと、中はレアだ。食ってみてくれ」
俺は焼き上がったフェンリルの肉を、クレアとガンダルの皿に取り分けた。
「「いただきます(ですじゃ)!」」
二人が同時に肉を口に運ぶ。
その瞬間。
「…………っ!!」
「ほわぁぁぁぁ……っ」
ガンダルは目を見開き、クレアは両手で頬を押さえてとろけたような声を上げた。
「なんじゃこれは……!? 肉が、口の中で溶けた!? いや、それ以上にこの『塩』と『香辛料』の深み! 肉の脂の甘みを極限まで引き出し、噛めば噛むほど命の活力が全身にみなぎってくるわい!!」
ガンダルがボロボロと大粒の涙を流しながら叫ぶ。
「Sランクの肉は魔力そのものだからな。食えば体力も魔力も全回復する万能薬みたいなもんだ」
「バ、バカな……! 王城でワシが食わされていた、靴の裏のように硬い塩漬け肉は一体なんだったんじゃ! ワシは今まで、豚のエサを食って生きていたのか……ッ!?」
「ほら、泣いてないでこれも飲め」
俺は冷蔵庫から出した、ガラスのジョッキになみなみと注がれた『冷えたエール』をガンダルの前にドンッと置いた。
グラスの表面には、冷たさのあまり水滴がびっしりとついている。
ガンダルは震える手でジョッキを掴み、一気に喉へと流し込んだ。
「ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ……! ぷはぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
ドワーフの豪快な飲みっぷり。
そして、彼は夕焼けに染まる雲海に向かって、高らかに叫んだ。
「最高じゃあぁぁっ!! 神よ、ワシは死んだのか!? ここは天国なのかぁぁぁっ!!」
「ただのテラスだよ」
俺も冷えたエールを飲みながら、フェンリルの肉を頬張った。
……美味い。チタンで焼いたことで、余計な雑味が一切なく、肉本来のポテンシャルが120%引き出されている。
これぞスローライフの極み。最高の景色、最高の飯、そして冷えた酒。
「レン様、お口にソースがついてますよ。えいっ」
クレアが楽しそうに俺の口元を布で拭ってくれる。至れり尽くせりだ。
「レン殿……いや、レン様!!」
ガンダルが突然、ジョッキを持ったまま土下座の体勢に入った。
「ワシはもう、この要塞から一生出ませぬ! レン様とクレア様のために、最高のお鍋でも、包丁でも、何でも打ちますぞ! だから、どうか明日もこの肉と酒を……!」
「ああ、冷蔵庫に一生分くらいあるから、好きなだけ作って、好きなだけ食ってくれ」
こうして。
最強の生産職人であるドワーフの心臓(と胃袋)は、チタン合金のグリルとSランクの肉によって、完全に俺の要塞に縛り付けられた。
俺たちの規格外で快適すぎる空の生活は、さらに賑やかさを増していくのだった。
「レン殿! 出来上がりましたぞ!!」
翌日の夕方。
IH(電磁誘導加熱)炉の設置された真新しい工房から、ガンダルが興奮した様子で駆け出してきた。
その手には、鈍く銀色に輝く網目状の金属板と、頑丈な土台が握られている。
「おお、早いな。さすがは熟練のドワーフだ」
「レン殿が錬成してくだされた『チタン』とかいう金属……とんでもない代物ですじゃ! 鉄より遥かに軽く、それでいてミスリルより熱に強く、絶対に錆びない! ワシの職人人生で最高の傑作グリルが完成しましたぞ!」
俺は受け取ったBBQグリルをテラスに設置した。
チタンは熱伝導率こそ鉄に劣るが、その分熱容量が小さいため、火にかければ一瞬で高温になり、肉の表面を一気に焼き上げることができる。まさにバーベキューにうってつけの素材だ。
「よし、じゃあさっそく火入れも兼ねて『天空バーベキュー』といくか。クレア、冷蔵庫から肉とエールを出してきてくれ」
「はいっ! お待ちしておりました!」
エプロン姿のクレアが、氷牙竜の魔石でキンキンに冷えた冷蔵庫から、分厚くスライスされた肉の山を運んでくる。
先日倒したSランク魔獣『天狼』の極上霜降り肉と、ガルドと一緒に食べた『レッド・バイソン』のAランク肉だ。
「なっ……!? そ、その肉から放たれる凄まじい魔力は!? まさか、おとぎ話の神獣の肉ですかな!?」
ガンダルが目ん玉を飛び出させて肉を指差した。
「ああ、庭のトマトを踏まれたからちょっとレールガンで吹き飛ばした奴の肉だ。ガンダルも一緒に食うか?」
「トマトを踏まれたから神獣を……!? い、いや、ワシのようなしがない鍛冶師が、そのような国宝級の肉を口にするなど……」
遠慮するガンダルをテラスの椅子に無理やり座らせ、俺はチタン製グリルの下に火の魔石(出力弱め)をセットした。
熱せられたチタンの網に、牛脂(バイソンの脂)を薄く引く。
「じゃあ、焼くぞ」
ジュゥゥゥゥゥッ……!!
肉を乗せた瞬間、テラス中に暴力的なまでの焼ける音と、香ばしい匂いが爆発した。
俺が精製した純度100%の塩と、ブレンドした特製スパイス(ガラムマサラ)が、Sランク魔獣の肉汁と混ざり合い、化学反応(メイラード反応)を起こして極上の旨味成分へと変化していく。
「〜〜〜〜ッ!!」
ガンダルが鼻を押さえ、椅子から転げ落ちそうになっている。ドワーフの鋭い嗅覚には刺激が強すぎたらしい。
「よし、表面はカリッと、中はレアだ。食ってみてくれ」
俺は焼き上がったフェンリルの肉を、クレアとガンダルの皿に取り分けた。
「「いただきます(ですじゃ)!」」
二人が同時に肉を口に運ぶ。
その瞬間。
「…………っ!!」
「ほわぁぁぁぁ……っ」
ガンダルは目を見開き、クレアは両手で頬を押さえてとろけたような声を上げた。
「なんじゃこれは……!? 肉が、口の中で溶けた!? いや、それ以上にこの『塩』と『香辛料』の深み! 肉の脂の甘みを極限まで引き出し、噛めば噛むほど命の活力が全身にみなぎってくるわい!!」
ガンダルがボロボロと大粒の涙を流しながら叫ぶ。
「Sランクの肉は魔力そのものだからな。食えば体力も魔力も全回復する万能薬みたいなもんだ」
「バ、バカな……! 王城でワシが食わされていた、靴の裏のように硬い塩漬け肉は一体なんだったんじゃ! ワシは今まで、豚のエサを食って生きていたのか……ッ!?」
「ほら、泣いてないでこれも飲め」
俺は冷蔵庫から出した、ガラスのジョッキになみなみと注がれた『冷えたエール』をガンダルの前にドンッと置いた。
グラスの表面には、冷たさのあまり水滴がびっしりとついている。
ガンダルは震える手でジョッキを掴み、一気に喉へと流し込んだ。
「ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ……! ぷはぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
ドワーフの豪快な飲みっぷり。
そして、彼は夕焼けに染まる雲海に向かって、高らかに叫んだ。
「最高じゃあぁぁっ!! 神よ、ワシは死んだのか!? ここは天国なのかぁぁぁっ!!」
「ただのテラスだよ」
俺も冷えたエールを飲みながら、フェンリルの肉を頬張った。
……美味い。チタンで焼いたことで、余計な雑味が一切なく、肉本来のポテンシャルが120%引き出されている。
これぞスローライフの極み。最高の景色、最高の飯、そして冷えた酒。
「レン様、お口にソースがついてますよ。えいっ」
クレアが楽しそうに俺の口元を布で拭ってくれる。至れり尽くせりだ。
「レン殿……いや、レン様!!」
ガンダルが突然、ジョッキを持ったまま土下座の体勢に入った。
「ワシはもう、この要塞から一生出ませぬ! レン様とクレア様のために、最高のお鍋でも、包丁でも、何でも打ちますぞ! だから、どうか明日もこの肉と酒を……!」
「ああ、冷蔵庫に一生分くらいあるから、好きなだけ作って、好きなだけ食ってくれ」
こうして。
最強の生産職人であるドワーフの心臓(と胃袋)は、チタン合金のグリルとSランクの肉によって、完全に俺の要塞に縛り付けられた。
俺たちの規格外で快適すぎる空の生活は、さらに賑やかさを増していくのだった。




