第25話「天空の要塞に『絶景の露天風呂』を増築した。〜雲海を見下ろす極上温泉で、元公爵令嬢がとろけてしまう〜」
朝イチで黒焦げの盗賊たちをギルドへ引き渡し(ついでに懸賞金まで貰ってしまった)、俺たちは空中要塞へと帰還した。
「はぁ……なんか朝からドタバタして汗かいちゃったな」
「レン様、お疲れ様です! すぐにシャワーのお湯を沸かしましょうか?」
クレアがいそいそとシステムキッチンに向かおうとするが、俺はそれを手で制した。
巨万の富を得て、食事も寝床も完璧になった。だが、日本人として「究極のスローライフ」を名乗るなら、絶対に欠かせないピースが一つ残っている。
「いや、今日はシャワーじゃない。……『露天風呂』を作ろう」
「ろてんぶろ、ですか?」
俺は要塞のテラス側の庭(フェンリルとの戦いで余ったスペース)に立ち、大地……もとい、要塞の岩盤に魔力を流し込んだ。
「【土魔法・構造拡張】」
ゴゴゴゴ……!
岩盤がせり出し、テラスのさらに外側へと数十畳ほどの新たな空間が形成される。
俺はその空間を、土から抽出した最高級の『御影石』や『檜に似た香木』で囲い、巨大な湯船を二つ(男湯と女湯)錬成した。間にしっかりとした壁を設けるのも忘れない。
「すごい……! お庭の先に、大きなお風呂ができました!」
「器は完成だ。次は『お湯』だな」
俺は空中要塞の周囲に漂う「雲」に目を向けた。
雲の正体は水蒸気だ。俺は先日手に入れたフェンリルの『雷の魔石』の電力と、『氷牙竜の魔石』の冷気を組み合わせ、雲の水分を一気に結露させて大量の「純水」を生み出し、湯船に注ぎ込んだ。
さらに電熱線の要領で一気に適温まで加熱する。
「ただの白湯じゃ味気ない。せっかくなら『温泉』にするか」
俺は土魔法で、岩盤からナトリウム、カルシウム、硫酸イオンなどのミネラル成分を抽出し、お湯に完璧な比率で溶かし込んだ。
白濁したお湯から、ふわりと硫黄の香りが漂う。前世で何度も通った、日本最高峰の名湯の完全再現だ。
「よし、完成だ。天空のスーパー銭湯『レンの湯』一番風呂、クレア、入ってこい」
「は、はいっ! ありがとうございます、レン様!」
クレアは目を輝かせて脱衣所(という名目で増築したログハウス風の小部屋)へと駆け込んでいった。
◆ ◆ ◆
数分後。
俺は男湯の湯船に肩まで浸かり、極楽気分を味わっていた。
「〜〜〜ッ……。これだ、これだよ……!」
眼下に広がるのは、夕日に赤く染まった一面の雲海。
見上げれば、手が届きそうなほど近くで一番星が瞬き始めている。
適温の温泉成分が全身の筋肉をほぐし、毛穴の奥から疲れが溶け出していく感覚。まさに神々の遊びだ。
『れ、レン様ぁ……』
仕切りの壁の向こう側(女湯)から、クレアのとろけきった声が聞こえてきた。
「どうだ、クレア。お湯の温度は熱くないか?」
『は、はいぃ……。ちょうどいいですぅ。なんだか、お湯がトロトロしていて、お肌がすっごくスベスベになります……っ』
バシャッ、とお湯が跳ねる音。
壁の向こうで、白銀の髪をアップにまとめたクレアが、その透き通るような白い肌を上気させている姿が容易に想像できた。
(いかんいかん、煩悩を捨てろ俺)
『それに……景色が、本当に綺麗です。王城の窮屈なお風呂とは比べ物になりません。私、もうこのお風呂から一生出たくないですぅ……』
「一生出なかったらのぼせるぞ。上がったら、冷蔵庫にキンキンに冷えた『フルーツ牛乳(似の飲み物)』を作ってあるから、それ飲もうぜ」
『フルーツ、牛乳……!? あああっ、レン様、私、やっぱり世界で一番幸せ者ですぅぅ!』
パチャパチャとお湯で遊ぶクレアの楽しそうな声を聞きながら、俺は大きく息を吐いた。
資金は無限。美味い飯に、絶景の露天風呂。
元の国を追放された時はどうなることかと思ったが……俺の異世界スローライフは、これにて一旦の「完全クリア」を迎えたと言っていいだろう。
「さて、明日は何を食うかな」
夕闇に包まれる雲海を眺めながら、俺は一人ごちた。
最強の土魔法(理系チート)と、ポンコツ可愛い元令嬢との天空同居生活。
俺たちの快適すぎる日常は、まだまだ終わらない――。
お読みいただきありがとうございます!
最高の絶景露天風呂(名湯の成分完全再現つき)が完成しました!
湯上がりのフルーツ牛乳まで完備。もはや異世界にいることを忘れそうな快適さです。
クレアもすっかりお風呂の虜になってしまいました(笑)。
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本当にありがとうございます。
▼次回予告
お風呂も完成し、一生遊んで暮らせる状態になったレン。
しかし、噂を聞きつけた「とある大物」が空中要塞を訪ねてきて……?
ここから、スローライフは新たなフェーズ(国造り?)へと突入します!
お楽しみに!




