第24話「特許収入を狙って盗賊団がやってきた。〜防弾ガラスと高圧電流(オール電化)の前に、全滅して黒焦げになっていた件〜」
迷宮都市の裏社会を牛耳る『暗闇の牙』盗賊団の頭領、ザックは暗夜の空でほくそ笑んでいた。
「くっくっく。まさかあの新人冒険者が、ガスマスクの特許で金貨数万枚の権利を手に入れたとはな。ギルドマスターも脇が甘いぜ」
彼らは高価な『浮遊の魔道具』を使い、高度数千メートルに浮かぶレンの空中要塞へと忍び寄っていた。
狙うは、若き富豪の命と、莫大な金銀財宝だ。
「頭領、見えました! あれが奴の家です!」
「馬鹿なガキだ。こんな空の上なら安全だとでも思ったか? 結界の魔具も張られてねえ。ただの白い箱じゃねえか」
ザックたちは音もなく要塞の庭(先日フェンリルを倒して綺麗に直した芝生)に着地した。
要塞の窓からは微かに明かりが漏れているが、中の住人は熟睡しているようだ。
「よし、まずはあの透明な窓を『魔力カッター』で切り裂いて侵入するぞ。ミスリルも切断する業物だ、音も立てずに――」
ザックの部下が、窓ガラスに魔力カッターの刃を押し当て、力を込めた。
ガキィィィィィンッ!!!
「痛ぇぇぇっ!?」
暗闇に鈍い音が響き、部下が手首を押さえてうずくまった。
見れば、絶対に折れないはずの魔力カッターの刃先が無惨に砕け散っている。
「な、なんだこの硬さは!? ただのガラスじゃねえ! 刃が完全に弾かれたぞ!?」
「馬鹿野郎、静かにしろ! ……チッ、魔石でコーティングでもしてやがるのか。ええい、なら壁だ! 俺の『強酸ポーション』で壁をドロドロに溶かしてやる!」
ザックは懐から危険なポーションを取り出し、白い外壁(鉄筋コンクリート)にぶちまけた。
シュワァァ……と少しだけ泡が立ったが、それだけだ。穴が開くどころか、表面の汚れが落ちてピカピカになっている。
「な、なぜだ!? 鉄の扉すら数秒で溶かす酸だぞ!?」
(※コンクリートは強アルカリ性のため、酸を中和してしまう上に、レンの家は耐酸性のセラミック加工済みである)
「ええい、こうなったら正面突破だ! あの玄関の金属扉をバールでこじ開けろ!」
焦ったザックたちは、数人がかりで重厚な玄関扉のノブに手をかけた。
その瞬間。
『ピピッ。不法侵入者を検知。防衛システム(オール電化・スタンモード)を起動します』
どこからか、無機質な音声が流れた。
そして、Sランク魔獣(雷獣)の魔石を動力源とする、要塞の配電システムが火を噴いた。
バチィィィィィィンッ!!!!
「「「ぎゃあああああああああっ!?」」」
数万ボルトの強烈な高圧電流が、金属のドアノブから盗賊たちの全身を駆け巡った。
致死量には達しないように調整された「スタンガン」の特大版である。盗賊たちは感電して痙攣し、カエルのように庭へ弾き飛ばされた。
「あばばばばばっ! な、なんだこの雷魔法はぁぁぁっ!?」
「ひぃぃっ! も、もう嫌だ! 帰るぅぅっ!」
「た、助けてくれぇ……体が痺れて動けねえ……」
白目を剥いて泡を吹く部下たち。
ザックは恐怖に顔を引き攣らせ、這いつくばって逃げようとした。
だが、そこは先日レンが【摩擦係数操作】を施したままの、ツルツルの庭の端だ。
「あ、あれ? 滑る……!? ぎゃあっ!?」
ザックはツルンと足を滑らせ、要塞の縁から真っ逆さまに――数千メートルの空へと落ちていった。
(※後日、木に引っかかっているところをギルドの警備隊に逮捕された)
◆ ◆ ◆
翌朝。
「ふぁ〜あ。よく寝た」
俺はふかふかのベッドから起き上がり、大きく伸びをした。
隣の部屋から、ベーコンを焼くいい匂いが漂ってくる。クレアが朝食を作ってくれているらしい。
「おはようございます、レン様! 今朝は新作のチーズオムレツですよ!」
「最高だな。……ん? なんか庭の方で変な音がしないか?」
俺はパジャマのまま玄関の扉を開けた。
「…………」
「あ、れぇ〜……。か、勘弁してくだせぇ……」
そこには、全身を真っ黒に焦がし、アフロヘアーのようになってピクピクと痙攣している黒ずくめの男たちが数人、折り重なるように倒れていた。
「なんだこいつら。……ああ、防犯システム(高圧電流)が作動したのか」
「ひぃぃ……悪魔の、家だぁ……」
泣きながら命乞いをする盗賊たちを見て、俺はため息をついた。
「クレア、朝飯の前にちょっとギルドに行ってくるわ。ゴミ出し(盗賊の引き渡し)してこないとな」
「はいっ! いってらっしゃいませ、レン様!」
こうして、迷宮都市の裏社会を震え上がらせていた凶悪な盗賊団は、俺が寝ている間に「ただのドアノブ」に全滅させられた。
特許収入と絶対防壁。
俺の天空スローライフを脅かせる者など、この世界にはもう存在しないのだ。
お読みいただきありがとうございます!
「盗賊団? 寝ている間に全滅してました」
鉄筋コンクリート、強化ガラス、そしてSランク魔石による防犯システム(超強力スタンガン)。
もはや要塞を通り越して、難攻不落の現代要塞です。
ザック団長、ツルツルの床に引っかかってくれて良いオチになりました(笑)。
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▼次回予告
盗賊をギルドに引き渡したレン。
一生分の富も得たし、そろそろ「アレ」が欲しくなってきました。
そう、日本人なら絶対に欠かせない『超巨大な天空・露天風呂』の錬成です!




