第23話「一方その頃、主人公を追放した王国では。〜防壁は崩れ、魔物が市街地に溢れ、王様が泣き叫んでいた〜」
グランツ王国の王都は、かつてないパニックに陥っていた。
「ぎゃあああっ!! オークだ! オークの群れが市街地に!!」
「逃げろ! 城門の防壁が完全に崩落したぞ!!」
悲鳴と怒号が飛び交い、火の手が上がる王都の街並み。
豪華絢爛だった王城のバルコニーからその惨状を見下ろし、太った国王は顔面を蒼白にして震えていた。
「ば、馬鹿な……。我が国の誇る絶対防壁が、たかがオークやゴブリンの群れに突破されるだと……!?」
「陛下! 危険です、早く奥へ!」
宰相が半泣きで国王を引っ張る。
「離せ! ええい、宮廷魔術師団は何をしている! 何百人もいる土魔法使いに、一刻も早く壁を修復させんか!」
「で、ですから! 何度も申し上げておりますが、現在の魔術師たちの魔力では、分子レベルでの岩の錬成ができず、ただの泥壁しか作れないのです! オークが棍棒で叩いただけで崩れてしまいます!」
宰相の悲痛な叫びに、国王はギリッと歯を噛み締めた。
土魔法なんて、ただの泥遊びだと思っていた。地味で攻撃力のない、ハズレ枠だと。
しかし、国家という巨大なインフラを維持するためには、高純度の物質を錬成できる「規格外の土魔法使い」が絶対に必要だったのだ。
「勇者! 光の勇者はどうした! 奴の聖剣で魔物を一掃させろ!」
「それが……」
宰相が言い淀んだその時、バルコニーの扉がバンッと開き、ボロボロの鎧を着た勇者が転がり込んできた。
「クソッ! クソがぁぁぁっ!!」
勇者は手にした剣を床に叩きつけた。その刀身は無惨にもひび割れ、刃こぼれだらけのナマクラと化している。
「俺の光魔法の出力に、このゴミみたいな剣が耐えきれねえ! ドワーフの鍛冶師のジジイも逃げ出しやがって、高純度の鉄鉱石を精製できる土魔法使いがいなきゃ、新しい剣は打てねえってよ! これじゃあ俺のチートが使えねえじゃねえか!!」
「ゆ、勇者様まで……っ」
防壁も直せず、最強の武力も失った。
国王が絶望の淵に立たされたその時、王城の階段を駆け上がってくる足音が響いた。
「へ、陛下!! 戻りました……っ!!」
現れたのは、数日前に『処刑の草原』へと派遣した精鋭騎士団の団長だった。
しかし、彼の鎧は煤で汚れ、腰に下げているはずの騎士剣は根元からポッキリと折れている。
「おお! 騎士団長! 例のガキ……土魔法適性『極大』を持つレンは連れ帰ったか!? 奴に防壁を直させ、至急、最高級の鉄鉱石を錬成させるのだ!」
国王がすがるように身を乗り出す。
だが、騎士団長は床に膝をつき、ガタガタと震えながら首を横に振った。
「も、申し訳ありません……。保護、できませんでした」
「なに!? 死の草原で魔物に食われていたか!?」
「いえ……その、平野のど真ん中に、石でも鉄でもない、あり得ないほど硬い『白い要塞』を建てておりまして……」
「要塞だと?」
「は、はい。我々の剣は、その要塞の『透明な窓』に傷一つつけられず全て折れ、副団長の全力の火魔法も、白い壁に完全に無効化されました……。おまけに、行方不明だったクレア公爵令嬢が、我々のミスリルの剣をナマクラと見下し、軽くへし折りまして……」
騎士団長の報告に、国王も勇者も、そして宰相も、完全に言葉を失った。
「その……レン本人は、『自分専用の家が超快適なので、間に合ってます』と……」
「な、なんだと……ッ!?」
国王はフラフラと後ずさり、バルコニーの柱に崩れ落ちた。
自分たちが「ハズレのゴミ」として捨てた少年は、死ぬどころか、国家の総力を挙げても傷一つつけられない最強の要塞を築き、悠々自適に暮らしているというのか。
「あ……あああ……。我々は、なんという取り返しのつかないことを……っ!」
王都に響き渡る魔物の咆哮と、民衆の悲鳴。
グランツ王国は今、一人の土魔法使いを追放した代償を、国家の存亡という形で支払わされていた。
◆ ◆ ◆
一方、その頃。
隣国の上空、高度数千メートルの『空中要塞』にて。
「レン様! この『A5ランク・霜降りミノル牛のステーキ』、お口の中でとろけますぅ〜っ!!」
「だろ? 特許収入で市場の最高級食材を買い占めて大正解だったな。冷蔵庫もあるから保存も完璧だし」
俺とクレアは、ふかふかのソファに沈み込みながら、豪華絢爛なフルコースディナーに舌鼓を打っていた。
エアコン(魔石駆動)の効いた快適な室温。極上のスパイスと最高級の肉。
「元の国で配給されてた硬いパンと泥水みたいなスープ、今思い出してもゾッとするよな」
「はいっ。あんな国、もうどうでもいいです! 私、レン様とこの空のお城で、一生美味しいものを食べて生きていきます!」
眼下の地上で、元の王国が魔物の群れに蹂躙され、王様が泣き叫んでいることなど、俺たちは知る由もなかった。
防音完璧、標高数千メートル。
最強で最高の引きこもりスローライフは、今日も平和そのものだった。
お読みいただきありがとうございます!
お待ちかねの「王国ざまぁ」回でした。
片や魔物に蹂躙されて泣き叫ぶ王様と勇者、片やエアコンの効いた要塞で最高級ステーキを食べる主人公たち。
この温度差こそが、追放スローライフの醍醐味ですね!
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▼次回予告
資金も無限になり、スローライフを満喫するレン。
しかし、特許収入で大金持ちになった彼を嗅ぎつけて、迷宮都市の「裏社会(盗賊ギルド)」が空中要塞を狙って動き出す!?
……もちろん、彼らが物理法則の前に絶望するのは言うまでもありません。




