第20話「Sランク魔獣の毛皮で、最強の『モフモフ防寒コート』を作ってみた。〜ついでに雷の魔石で要塞をオール電化します〜」
レールガンの一撃で下半身だけになった『天狼』の残骸を前に、俺は腕を組んだ。
「さて、解体するか」
「れ、レン様。魔獣の解体は専門のギルド職員でも丸一日かかる重労働ですよ? しかもSランクともなれば、皮を剥ぐだけでもミスリルのナイフが何本も折れると聞きますが……」
「ナイフなんて使わないさ」
俺はフェンリルの死体に手をかざした。
【土魔法・成分分離】の応用だ。
肉、骨、内臓、血液、そして毛皮。それぞれの組織の結合を分子レベルで解きほぐし、種類ごとに綺麗に分離していく。
「えいっ」
ボシュッ、という音と共に、フェンリルの残骸が宙に浮き、部位ごとに綺麗に分かれて地面に降り立った。
血の一滴すら無駄にしていない、完璧な解体だ。
「……ま、また常識が一つ壊れました」
クレアが遠い目をしているが、気にしない。
「まずはこれだな」
俺が手に取ったのは、青白い稲妻の残滓を纏った白銀の毛皮だ。
本来、毛皮は腐敗を防ぐために「なめし」という面倒な工程(薬品に漬け込んだり揉み込んだり)が必要になる。
だが、俺の【土魔法】でタンパク質の構造を直接変性させ、コラーゲン繊維を固定化してしまえば、一瞬で最高級のなめし革が完成する。
「よし、完璧だ。嫌な匂いもないし、信じられないくらい柔らかい」
俺は完成した白銀の毛皮を、鋏(土魔法で錬成した超硬度カッター)で手早く裁断し、クレアのサイズに合わせて縫製していく。縫い糸も、毛皮の一部から抽出した強靭な繊維だ。
数分後。
「クレア、ちょっと羽織ってみてくれ」
「えっ? わ、私にですか!?」
俺が差し出したのは、フェンリルの白銀の毛皮をふんだんに使った『フード付きのハーフコート』だ。
内側は極上の起毛になっており、外側は絹のように滑らか。そして何より、Sランク魔獣の魔力が宿っているため、絶対的な防刃性と「雷属性無効」「温度調節機能」まで備わっている。
クレアはおずおずと袖を通し、フードを被った。
「…………っ!!」
「どうだ? サイズは合ってるか?」
「レ、レン様……! なんですかこれ、すっごくモフモフです〜っ!! 軽くて、暖かくて、雲に包まれているみたいです……!」
クレアは自分の頬をコートの襟元にすりすりとおしつけ、とろけるような笑顔を見せた。
銀髪の美少女に、白銀のモフモフコート。控えめに言って、破壊力が高い。
「しかもこれ、国宝級のSランク素材ですよね!? そんな貴重なものを、私なんかのために……っ」
「俺は毛皮を着る趣味はないし、クレアが着てくれた方が要塞の防衛力も上がる。それに、よく似合ってるぞ」
「〜〜〜ッ!! い、一生脱ぎません!!」
クレアが顔を真っ赤にしてコートを抱きしめた。風呂の時以外は脱いでほしい。
「さて、次はこっちだな」
俺は解体した素材の山から、ソフトボールほどの大きさがある『青い魔石』を拾い上げた。
フェンリルの心臓部にあった魔石。莫大な雷(電気)エネルギーを内包している。
「冷蔵庫の動力はオークションで買った氷の魔石がある。なら、この電気エネルギーは……『オール電化』に使うか」
俺は空中要塞の制御システム(岩盤の深部)にアクセスし、フェンリルの魔石を主電源として組み込んだ。
さらに、土中から銅や半導体素材を錬成し、要塞中に配線を張り巡らせる。
「これで、魔石のエネルギーを電力に変換して、照明、空調、それにコンロの火力補助まで自動で賄える。いちいち火の魔石を買う必要もなくなるな」
指を鳴らすと、要塞の天井に取り付けた自作のLEDライトがパッと明るく灯り、部屋の隅に設置したエアコンの吹き出し口から、快適な温度の風が流れ始めた。
「……レン様のお家が、ますます神々の領域に近づいていきます」
「ただの現代的なマイホームだよ。さあ、作業も終わったし、メインイベントといくか」
俺は解体しておいたフェンリルの最高級霜降り肉(Sランク)をフライパンに乗せた。
ジュワァァァッ! と、極上の脂が溶け出し、ガラムマサラのスパイスと絡み合って暴力的な香りを放つ。
「最強の魔獣のステーキだ。冷えたエールと一緒に、腹いっぱい食おうぜ」
「はいっ! モフモフで、涼しくて、ご飯も美味しくて……私、レン様に拾われて本当に世界一幸せです!」
こうして、伝説の天狼は、俺たちの快適なスローライフをさらに一段階引き上げるための「極上の素材」として、その生涯を(美味しく)全うしたのだった。
お読みいただきありがとうございます!
最強の魔獣の毛皮で作った「モフモフ防寒コート」、クレアにとても似合っているようです。
さらに要塞はSランク魔石の力で「オール電化」へ。
これぞ理系主人公のスローライフ!
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▼次回予告
要塞の設備も整い、再び迷宮都市へ!
ところが、ギルド専属のエルフ薬剤師・エララから「ある深刻な相談」を持ちかけられます。
それは、レンの土魔法でしか解決できない「ダンジョン深層」の問題で……?




