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第19話「空中要塞に伝説の魔狼(Sランク)が強襲。〜庭のトマトを踏まれたので、電磁投射砲(レールガン)で消し飛ばした〜」

「くぅ〜っ! 冷えた果実水が染みるな!」

「はいっ! 氷牙竜の魔石のおかげで、いつでもキンキンの飲み物が飲めますね!」


オークションから帰還した俺とクレアは、空中要塞のテラスで優雅な時間を過ごしていた。

高度数千メートル。雲海を見下ろしながらの冷たい一杯は格別だ。


と、その時だった。


ドォォォォン!!!


「きゃあぁっ!?」

「っ!? なんだ!?」


要塞全体が激しく揺れた。

地震ではない。何かが凄まじい速度で物理的に衝突した衝撃だ。

俺とクレアはテラスから身を乗り出し、庭を見下ろした。


「レ、レン様! あそこ! 庭の方です!」


クレアが震える指で差した先――俺が丹精込めて育てている「極上野菜畑」のど真ん中に、巨大な銀色の影が降り立っていた。

体長は5メートルを優に超える。白銀の毛並みに、バチバチと青い稲妻を纏った巨大な狼だ。


「グルルルルゥ……ッ!!」


狼が黄金の瞳でこちらを睨み、咆哮を上げる。

その圧力だけで、テラスの強化ガラスがビリビリと震え、上空の雲が円形に吹き飛んだ。


「う、嘘……!? あれは『天狼スター・フェンリル』!? 神話にしか出てこないSランク魔獣ですよ!? まさか、この要塞の強大な魔力に惹かれて空を登ってきたのですか!?」

「Sランクだか何だか知らないが……」


俺の視線は、フェンリルの足元に釘付けになっていた。

そこには、今朝実ったばかりの真っ赤なトマトの苗が、無惨にも踏み荒らされ、ペシャンコになっていた。


「俺の、トマトを……」


俺の中で、何かがプツンと切れた。

スローライフを脅かす敵。それは害虫と同じだ。駆除対象でしかない。


「ガアアアアアッ!!」


俺の殺気を感知したフェンリルが、瞬動した。

巨体からは想像もつかない、音速を超える突進。鋼鉄の城門すら紙くずのように引き裂くであろう前足の爪が、テラスにいる俺の首めがけて振り下ろされる。


「レン様!!」

「遅い」


俺は一歩も動かず、床を指先で叩いた。


「【土魔法・摩擦係数操作ゼロ・フリクション】」


フェンリルの足元、要塞の庭の土の表面構造を分子レベルで瞬時に組み替える。

摩擦力ゼロ。氷の上よりも滑る、完全なツルツルの地面だ。


「ギュンッ!?」


踏み込みの力を完全に逃がされたフェンリルは、無様な声を上げて足を滑らせ、俺の数メートル手前で顔面から盛大に転倒した。

ズササササッ! と勢い余って庭の端まで滑っていく。


「悪いが、俺の庭は土足厳禁だ。……いや、魔獣なら足拭きマットがあっても入れないか」

「ガ……、ガァァァァァァッ!!」


完全にプライドを傷つけられた伝説の魔狼は、激怒に満ちた咆哮を上げた。

物理攻撃が駄目なら魔法だと言わんばかりに、全身の毛を逆立て、周囲の大気中の魔力を急速に収束させていく。


パチ……バリバリバリッ!!

フェンリルの頭上に、真っ黒な雷雲が局地的に発生した。

数億ボルトに達する極大の雷撃魔法。直撃すれば、この空中要塞ごと炭化しかねないエネルギーだ。


「消えろ、虫ケラ!!」と、フェンリルの目が語っていた。


「レン様! 雷が来ます! 防御魔法を――」

「騒ぐな。ただの電気だ。電気ってのはな、『通りやすい場所』に流れるんだよ」


俺は右手をかざし、同時に二つの土魔法を行使した。


「【土魔法・絶縁障壁インシュレーション・ウォール】」

俺たちの目の前に、真っ白な壁が隆起する。土からアルミニウムとケイ素を抽出し結合させた、超高純度ファインセラミックスの壁。電気を一切通さない最強の絶縁体だ。


「【土魔法・強制接地アース・ロッド】」

さらに、フェンリルの足元から黒い金属の杭――純度99.9%の「銅の棒」を何本も突き出させ、要塞の底(岩盤の裏側)へと真っ直ぐに貫通させる。


ズガガガガガガァァァンッ!!!!


フェンリルから放たれた極太の雷の柱が、俺たちを飲み込もうと殺到する。

だが。


「……え?」

クレアが間の抜けた声を上げた。


凄まじい雷撃は、俺の張ったセラミックスの壁に触れる直前で「ぐにゃり」と不自然に軌道を曲げた。そして、フェンリルの足元にある「銅の棒」に吸い込まれるように直撃し、そのまま要塞の底から空の彼方へと、綺麗に素通りして放電されていったのだ。


「グルァッ!?」

フェンリルが驚愕に目を見開いている。


「電流は抵抗の少ない道を選ぶ。空間(空気)の抵抗を越えて絶縁体セラミックスを破るより、俺が用意した超電導の銅線を通って逃げる方が圧倒的に楽だからな。……お前の雷魔法は、俺の庭の避雷針アースには勝てない」


「ガ……、ア……ッ!?」

自身の最強の攻撃を、欠伸が出るような手品で無効化され、天狼の巨体が初めて恐怖に震えた。逃げようと後退るが、摩擦ゼロの地面のせいで足が空回りしている。


「さて。防御は終わりだ。トマトの代償は高くつくぞ」


俺はポケットから、オークションの支払いで使った余りのコイン(鉄貨)を一枚取り出し、親指と人差し指で挟んだ。

フェンリルが致命的な危機を察知し、悲鳴のような鳴き声を上げる。


「土魔法の本質は鉱物操作。そして、電気と磁力は表裏一体だ。お前が残してくれた雷(電気エネルギー)の残滓、有難く使わせてもらう」


俺はフェンリルに向かって右手を突き出す。

イメージするのは、二本の超伝導レール。

そこへ、要塞の動力源である地磁気と、フェンリルから奪った電気エネルギーを極限まで圧縮して流し込む。

ローレンツ力による強烈な電磁加速。現代兵器における、物理攻撃の頂点。


「消し飛べ。【土魔法・超電磁投射砲レールガン】」


俺の指先から弾かれたコインが、音速の数倍――マッハ7に達する速度へと一瞬で加速する。

空気との凄まじい摩擦により、ただの鉄のコインはオレンジ色の『プラズマの槍』へと変貌した。


ドォォォォンッ!!!


大気が引き裂かれる轟音。

閃光が一直線に走り、フェンリルの巨体を貫いた。

いや、貫くなどという生易しいものではない。極超音速の運動エネルギーは着弾の瞬間に大爆発を起こし、Sランク魔獣の上半身を文字通り『蒸発』させたのだ。


強烈な衝撃波で上空の雲が真っ二つに割れ、空に青い道筋が刻まれた。


「…………」


静寂が戻った庭。

そこには、フェンリルの下半身と、焼け焦げた見事な毛皮の切れ端だけが残っていた。

伝説の魔狼、瞬殺。


「ふぅ。……あーあ、庭が汚れちまったな」

俺は瓦礫を避けながら、生き残ったトマトの無事を確認した。


「レ、レン様……。今のは、土魔法……なんですか? 雷魔法の最上位、いえ、勇者様の光魔法よりも速くて、破壊力が……あまりにも……」


クレアがテラスにへたり込み、魂が抜けたような顔をしている。

まあ、異世界人に「フレミングの左手の法則」と「ローレンツ力」を説明しても分からないだろう。


「ただの石つぶてだよ。ちょっと速く投げただけだ」

「そ、そうですか……(絶対に、絶対に違います……!)」


俺はフェンリルの残骸(極上の毛皮と肉、そして巨大な魔石)を土魔法で回収し、穴の空いた庭を元通りに修復した。

トマトの仇は取った。そして、最高級の肉と素材も手に入った。結果オーライだ。


「よし、クレア。今夜は『フェンリルのステーキ』だ。Sランクの肉なら、ガラムマサラと絶対合うはずだぞ」


こうして、俺の空中要塞に攻め込んできた絶望の化身は、哀れ、俺たちの豪勢な夕食のメインディッシュとして処理されたのだった。

お読みいただきありがとうございます!

フェンリルを一撃で消し飛ばす、理系チート炸裂回でした。


さて、本作から大事なお知らせです!

現在開催中の「ネトコン14」と「春チャレンジ」に参加することになりました!


レンの無双劇をさらに多くの人に届けるため、ぜひ皆様の力を貸してください!

「応援してやろう!」と思っていただけましたら、ページ下部の【☆☆☆☆☆】から【★★★★★】の評価と、ブックマーク登録をお願いいたします!

(皆様のポチッという一手間が、コンテストを戦う最強の武器になります!)


▼次回予告

Sランク魔獣の素材を余すことなく有効活用!

フェンリルの白銀の毛皮を使って、クレアに「最強のモフモフ防具」を作ります。

さらに、規格外の魔石で空中要塞がとんでもないことに……?

お楽しみに!

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