第2話「その辺の土で作った剣が、伝説の国宝級アーティファクト扱いされる件」
ホーンボアを一刀両断した後、俺は死体から角と魔石(どうやら心臓のあたりにあるらしい)だけを剥ぎ取り、草原を歩き続けた。
麻の服一丁で途方に暮れるかと思ったが、遠くに城壁に囲まれた街が見えたため、迷わずそこを目指した。王都からどれくらい離れているかは分からないが、とりあえずの活動拠点は必要だ。
「冒険者ギルド、か。本当にテンプレ通りだな」
街の入り口で衛兵にホーンボアの角を見せると、あっさりと中に入ることができた。どうやら身分証代わりになるらしい。
そのまま案内されたのは、剣と盾の看板が掲げられた大きな建物だった。
ギルドの中は、粗暴な空気に満ちていた。
武装した男女が酒を飲み交わし、依頼書が貼られたボードの前でたむろしている。
俺はカウンターへ向かい、受付の女性に声をかけた。
「すいません。素材の買い取りと……武器の鑑定をお願いしたいんですが」
「はい、承ります。素材はこちらへ……ひっ!?」
受付嬢が、俺がドンッとカウンターに置いたホーンボアの角を見て息を呑んだ。
「こ、これ、ホーンボアの角ですよね? 討伐推奨レベルは最低でもパーティーでLv10以上……。あなた、一人でこれを?」
「ええ、まあ。たまたま急所に入ったので」
「そ、そうですか……。では、こちらの武器の鑑定ですね。少々お待ちください。ギルド専属の鑑定士を呼んでまいります」
受付嬢は慌てた様子で奥へと消えていった。
しばらくして、筋骨隆々で髭もじゃの小柄な老人――いかにもドワーフといった風貌の男が、不機嫌そうに現れた。
「ちぃっ、俺様は忙しいんだ。ただのナマクラなら叩き返すぞ。どれだ?」
ドワーフの老人は、俺がカウンターに置いた『無骨な暗灰色の剣』を手に取った。
その瞬間。
「…………は?」
老人の目が、限界まで見開かれた。
彼は懐からモノクル(鑑定の魔道具だろう)を取り出し、震える手で目に装着する。そして、顔を剣に擦り付けるようにして刀身を凝視し始めた。
「な、なんだこれは……ッ!? 表面に一切の凹凸がない!? 刀身に魔力の乱れすらねえ! 不純物が……ゼロだと!?」
「あ、いや、それは炭素を微量に混ぜて硬度を――」
「炭素? 何を言っているか分からんが、こんな均一な組成の鋼、俺様は四百年の人生で一度も見たことがねえッ!!」
老人の叫び声に、ギルド内の空気がピタリと止まった。
周囲の冒険者たちが、何事かとこちらに注目している。
「おい、にーちゃん! この剣を打ったのは誰だ!? 伝説の鍛冶神か!? それともエルフの秘伝か!? 一体どこの古代遺跡から発掘した!!」
「……えっと」
俺は少し言い淀んだ。
まさか「さっき街の外の土から3秒で錬成しました」とは言いづらい空気だ。
「いや、俺が自分で作ったんですけど」
「はぁ!? お前が!? 嘘をつけ! お前みたいなヒョロガリに、こんな『神の剣』が打てるわけねえだろうが!」
「打ったというか、魔法で作ったというか。土魔法で」
「土魔法だと……ッ!?」
老人は絶句し、剣と俺の顔を交互に見比べた。
そして、ワナワナと震える声で言った。
「に、にーちゃん。この剣、ギルドで買い取らせてくれ……。金貨百枚……いや、三百枚出す!!」
「「「なっ!?」」」
周囲の冒険者たちから、一斉に驚愕の声が上がった。
金貨三百枚。それがどれほどの価値かは分からないが、周囲の反応を見るに、遊んで暮らせるほどの額なのだろう。
「いや、売らないですよ。俺の護身用なんで」
「そこをなんとか! 頼む、この通りだ! この剣の構造を研究させてくれえええっ!」
「ちょっ、お爺さん、足に縋り付かないでください!」
最底辺のハズレ枠だと追放された俺の【土魔法(元素操作)】は。
どうやらこの世界において、完全に規格外のバランスブレイカーだったらしい。
お読みいただきありがとうございます!
ついにギルドで実力の一端がバレてしまいました。
でもレン本人は「ただの土魔法だし」と無自覚です(笑)。
「鑑定ざまぁ気持ちいい!」「もっと評価されろ!」
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▼次回予告
宿屋が汚すぎるので、土魔法で「鉄筋コンクリートの豪邸」を建てちゃいます。
異世界人の度肝を抜く、現代建築チートの開幕です!




