第15話「Fランクの初仕事。雑草(薬草)の成分を抽出・濃縮したら、伝説の万能薬(エリクサー)ができてしまった」
「水晶を割った弁償代は、初回の依頼報酬から天引きしておきますにゃ……」
涙目の受付嬢に見送られ、俺とクレアは迷宮都市の近くにある「初心者の森」へとやってきた。
Fランク冒険者としての初仕事。依頼内容は『ヒールグラスの採取』だ。
「レン様、あそこに生えているのがヒールグラスです! 傷薬の原料になる、最もポピュラーな薬草ですね」
クレアが指差した先には、道端の雑草と見分けがつかないような緑の草が生い茂っていた。
「なるほど。これがヒールグラスか」
俺は一本引き抜き、しげしげと観察する。
(……成分分析。主成分は細胞活性化を促すアルカロイドの一種か。だが、茎や葉脈に含まれる繊維質と、微量の毒素(不純物)が邪魔をして、薬効成分の吸収を阻害しているな)
この世界のポーション作りは、この草をすり潰して煮込むだけらしい。
それじゃあ、草の苦味やエグみが残る上に、傷の治りも遅いはずだ。
「非効率だな。よし、ちょっと加工するか」
「加工、ですか? そのまま袋に詰めるのではないのですか?」
「かさばるからな。それに、不純物がない方が高く売れるかもしれない」
俺は足元の砂に手をかざした。
「【土魔法・物質生成】」
ジャリッ。
砂に含まれるケイ素を結合させ、数秒で手のひらサイズの透明な「ガラス瓶」を十本ほど作り出した。
「ええっ!? い、今度はガラス瓶を一瞬で……!?」
「器はこれでいい。次は中身だ」
俺は群生しているヒールグラスの山に手をかざした。
イメージするのは、不要な繊維質と毒素の排除。そして、有効成分のみの抽出と濃縮だ。
「【土魔法・成分抽出】」
フワッ……。
ヒールグラスの群生が光に包まれる。
次の瞬間、草そのものは枯れて土に還り、代わりにキラキラと黄金色に輝く液体だけが空中に浮かび上がった。
俺はその液体を、空中に待機させていたガラス瓶へと次々に誘導し、密封していく。
「よし、完了だ。ヒールグラス百本分の薬効成分を、この小瓶に凝縮した。これなら持ち運びも楽だし、効き目も段違いだろ」
俺は黄金色に透き通る小瓶を太陽にかざして満足げに頷いた。
これなら、あの不味いポーションのような青臭さもないはずだ。
「…………」
「ん? どうしたクレア、そんなに固まって」
隣を見ると、クレアがわなわなと震えながら、俺の持っている小瓶を凝視していた。
「レ、レン様……。その、黄金色に輝く液体……まさか……」
「ただの薬草の濃縮液だぞ?」
「ち、違います!! その神々しい輝き、そして溢れ出る魔力……それは伝説の『万能薬』そのものです!!」
「……は?」
「部位欠損すら瞬時に再生し、あらゆる病を治癒すると言われる神の薬……! 国宝級どころか、小瓶一つで小さなお城が買えるほどの値段がつく代物ですよ!?」
「マジで?」
俺は小瓶を見つめ直した。
どうやら、成分を純度100%で抽出した結果、この世界の常識を遥かに超える回復薬になってしまったらしい。
「うーん……。城が買えるのは魅力的だが、Fランクの初仕事でこれを出すのはマズイな。目立ちすぎる」
「そ、そうですね……。こんなものを大量に持ち込んだら、国中が大騒ぎになります」
「これは俺たちの非常用ポーチに入れておこう。ギルドには、成分抽出を『弱め』にして乾燥させた、高品質なドライハーブとして納品するか」
俺は再び土魔法を使い、今度はヒールグラスを適度に乾燥させ、不純物を抜いた「最高級茶葉」のような状態に加工して麻袋に詰めた。これでも十分すぎる品質だが、エリクサーよりはマシだろう。
「さあ、ちゃっちゃと終わらせて街に戻ろうぜ。早く報酬をもらって、スパイスと肉を買いに行かないとな」
「は、はい……! (レン様にとっては、伝説のエリクサーよりも今夜のお肉の方が重要なのですね……流石です!)」
俺たちは麻袋(高品質ハーブ)と、懐に隠した国宝級アイテム(エリクサー)を抱え、意気揚々とギルドへの帰路についた。
たかが薬草採取で、ギルドの鑑定士が再び度肝を抜かれることになるのを、俺はまだ知らなかった。
お読みいただきありがとうございます!
「雑草を抜くだけ」の依頼だったはずが、気づけば懐に国宝が入っていました。
レンの辞書に「加減」という言葉はありません(笑)。
「ポーション作り楽しそう!」「エリクサーを自作とか反則w」
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▼次回予告
採取した薬草をギルドへ納品。
「なんだこの最高品質は!?」と鑑定士が驚愕。
そして、そのハーブの香りに釣られて、ある人物がレンたちに接触してきます。




