第14話「ギルドで新人登録。魔力測定の水晶にちょっと触れただけなのに、なぜか粉々に砕け散った件」
迷宮都市の冒険者ギルドは、元の国のギルドよりも遥かに巨大で、熱気に満ちていた。
様々な装備に身を包んだ冒険者たちが酒を飲み交わし、壁一面の巨大な掲示板には無数の依頼書が貼り出されている。
「クレアはCランクだったよな。俺は全くの素人なんだけど、どうすればいいんだ?」
「はい! あちらの受付で『新規登録』と伝えれば大丈夫です。私のギルドカードも、ここで更新手続きをしておきますね」
俺たちはカウンターに向かい、犬の耳と尻尾を生やした獣人族の受付嬢に声をかけた。
「すみません、新規の冒険者登録をお願いしたいんですが」
「はい、歓迎いたしますにゃ! ええと……お兄さんが新規登録で、お隣の綺麗なお姉さんは……ひゃっ!? ク、クレア様!? Cランクの『剛腕のクレア』様ですにゃ!?」
「えっ、私、そんな二つ名で呼ばれてたの……?」
クレアがショックを受けたように呟くが、どうやら彼女は前の国でも(色んな意味で)有名人だったらしい。市販の剣を次々とへし折る怪力令嬢として。
「ゴホン。ええと、お兄さんの登録ですね。こちらの用紙に名前をご記入ください。それと、初期ランク(Fランク)の適性を図るため、こちらの『魔力測定水晶』に手を触れて、少しだけ魔力を流していただけますかにゃ?」
受付嬢がカウンターの下から、ソフトボールほどの大きさの透明な水晶玉を取り出した。
「魔力測定か。なるほど」
「この水晶は、魔力量に応じて光の強さが変わりますにゃ。普通の新人さんなら、ホタルの光くらいですね。さあ、どうぞ!」
俺は水晶玉に右手を乗せた。
(なるほど。ただの光る石じゃない。内部に魔力を溜め込み、それを可視光線に変換する魔道具の構造か……。ケイ素の純度が甘いな、これじゃあ変換効率が悪い)
理系の癖で、つい材質の分析をしてしまう。
まあいい。あまり目立ちたくないし、ここは「ホタルの光」程度に抑えておくか。俺はほんの少し、本当に爪の先程度の魔力を指先から流し込んだ。
その瞬間だった。
カッ……!!!
「「「――っ!?」」」
ギルド内が、真昼の太陽を直接叩きつけられたような、暴力的なまでの閃光に包まれた。
「め、目がぁぁぁっ!?」「なんだ!? 閃光魔法か!?」と、周囲の冒険者たちが悲鳴を上げて目を覆う。
ピシッ……ピキキキキキキッ!!
そして、俺の手元から嫌な音が響いた。
「あっ」
パァンッ!!!
強烈な破裂音と共に、魔力測定水晶が粉々に砕け散り、キラキラと光る粉となってカウンターに降り注いだのだ。
ギルドの中が、水を打ったように静まり返った。
全員の視線が、俺と、砕け散った水晶の残骸に突き刺さっている。
「…………あ、あわわわわわ」
犬耳の受付嬢は、腰を抜かしてカウンターの奥でへたり込んでいた。
「や、やっちまった……」
魔力のコントロールは完璧だったはずだが、俺の【土魔法(元素操作)】の魔力密度は、どうやらこの世界の一般的な魔力とは桁が違ったらしい。例えるなら、乾電池用の豆電球に、発電所の高圧電流を流し込んでしまったようなものだ。
「ええと……すいません。これ、不良品だったみたいですね? 弁償しますよ」
俺は極めて冷静な顔で(内心は冷や汗をかきながら)すっとぼけた。
「ふ、不良品なわけないですにゃーっ!! こ、これは迷宮都市の工房が国宝級の魔石で作った、測定限界値1万の超高級水晶ですにゃよ!? それが、一瞬でオーバーフローして砕けるなんて……ッ!」
受付嬢は涙目で叫びながら、震える手で真新しい銅色のギルドカードを差し出してきた。
「お、お兄さんの魔力は……そ、測定不能ですにゃ……。ぞ、属性は……えっ? 『土魔法』だけ!? 火も水もなくて、土だけ……?」
その言葉に、周囲の冒険者たちがざわめき始めた。
「おいおい、水晶をぶっ壊すほどの魔力なのに、魔法適性が『土』だけだってよ」
「なんだよ、ただの農民志望か。魔力ばかり多くても、土いじりしかできなきゃ宝の持ち腐れだな」
彼らの反応に、俺はホッと胸をなでおろした。
どうやらこの国でも「土魔法=ハズレ・地味」という認識は共通らしい。水晶を割ってしまったのは目立ったが、これで変に警戒されることはないだろう。
「ふふん。レン様の土魔法をただの土いじりだなんて……後で後悔しても知りませんよ?」
俺の隣で、クレアがなぜか自分のことのように得意げに胸を張っていた。
「まあまあ、クレア。Fランクからのスタートでちょうどいいよ。目立たず、のんびりいこう」
「はいっ! レン様と一緒なら、Fランクの薬草採取でも最高に楽しい冒険になります!」
こうして、国宝級の水晶を木っ端微塵に粉砕するというド派手なデビューを飾りながらも、俺とクレアの『底辺Fランク冒険者生活』がのんびりと幕を開けたのだった。
お読みいただきありがとうございます!
やっちゃいました。
「ちょっと触っただけなのに」は、なろう系主人公の嗜みですね(笑)。
これでFランク認定ですが、実力はバレバレです。
「この展開待ってた!」「水晶かわいそうw」
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▼次回予告
Fランク冒険者として、いよいよ初仕事へ。
たかが薬草採取? いえいえ、レンにかかれば「万能薬」の素材集めです。




