第13話「空中要塞で隣国へ。極上のスローライフに足りない『スパイス』を求めて」
空飛ぶ要塞での生活が始まってから数日が経過した。
眼下に広がる雲海を眺めながら、俺は自作のシステムキッチンで淹れた熱いお湯をマグカップに注ぐ。
「……うん、白湯だな」
美味い野菜と極上の塩、そして肉を柔らかくする果汁はある。
だが、俺の前世の記憶が『何か足りない』と訴えかけていた。
「レン様? どうかされましたか?」
俺の隣で、相変わらず透き通るような肌をしたクレアが小首を傾げる。彼女はすっかりこの天空のマイホームに馴染み、俺の作ったフリフリのメイド服(カーボンファイバー製・完全防刃仕様)を嬉しそうに着こなしていた。
「いや、飯は最高に美味いんだが……ちょっと『刺激』が欲しくてな。例えば、胡椒のようなスパイスや、食後のコーヒーの代わりになるような嗜好品が」
「あ! スパイスですね。王城にいた頃、隣国の『迷宮都市』から輸入された香辛料を舐めたことがあります。とても高価ですが、お肉料理に合う素晴らしい香りでした!」
迷宮都市。
ファンタジーのお約束とも言える単語に、俺は少しテンションが上がった。
「なるほど、ダンジョン産の素材か。それに、俺がこれから作ろうとしている『魔石駆動式の大型冷蔵庫』や『エアコン』には、ホーンボア程度の魔石じゃ出力が足りないんだ。もっと強力な魔物の魔石が要る」
俺は決断した。
スローライフの質をさらに爆上げするためには、新たな素材集め(お買い物)が必要だ。
「よし、クレア。ちょっと隣国の迷宮都市まで『お出かけ』するか」
「お出かけ、ですか? ですが、ここから隣国までは馬車で二週間はかかりますよ……?」
「馬車なんて乗らないさ。俺たちの『家』ごと移動するんだよ」
俺は床に手をかざし、空中要塞の土台となっている岩盤の磁力を操作した。
地磁気との反発角を調整し、推進力を生み出す。
ゴゴゴゴ……!
俺たちのマイホームは、雲を切り裂きながら、あっという間に隣国の上空へと滑るように移動を始めた。
「ひゃああっ! お、お家が飛んでる……じゃなくて、進んでますぅぅ!」
「時速300キロくらい出てるからな。……おっ、見えてきたぞ。あれが迷宮都市か」
眼下の雲の切れ間から、巨大なクレーターのような地形と、それを囲むように発展した活気ある巨大都市が見えた。
「よっと」
俺は迷宮都市から少し離れた森の上空、雲の中にマイホームを固定した。下からは完全に見えない高度だ。
そして、土魔法で空中に見えない『足場(空中に固定された石の階段)』を錬成し、クレアと共に地上へと降り立った。
「……信じられません。数十分で隣国に着いてしまうなんて」
「俺はただの旅行者(お忍び)ってことにしといてくれ。元の国の連中に絡まれるのは面倒だからな」
俺たちは森を抜け、迷宮都市の門をくぐった。
活気に満ちた大通りには、様々な種族の冒険者たちが歩いている。
「クレアはCランク冒険者だったよな? 俺はギルドカードも持ってない無所属なんだが、やっぱり登録した方がいいか?」
「はい! ダンジョンに入るには冒険者ギルドへの登録が必須です。それに、ランクを上げれば貴重な素材の買い取りや、特別な施設の利用もできるようになりますよ!」
「なるほど。じゃあ、まずはギルドで『新人登録』といくか」
極上のスパイスと魔石を求めて。
俺とクレア(ポンコツ元令嬢、現・最強のメイド)は、迷宮都市の中央にそびえ立つ大きな冒険者ギルドの扉を叩いた。
俺の【土魔法】が、隣国の常識すらも根底から覆すことになるとは、この時の俺はまだ深く考えていなかった。
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ここからは【冒険者ギルド編】です!
スローライフを充実させるための「お買い物(ダンジョン探索)」が始まります。
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▼次回予告
ギルドといえば「魔力測定」ですよね?
規格外のレンが水晶に触れたらどうなるか……お約束の展開が待っています!




