第10話「王国の精鋭騎士団 vs 鉄筋コンクリートのマイホーム。〜剣が折れ、魔法が弾かれる絶対防壁〜」
「……団長。見えました。あれが報告にあった『処刑の草原』です」
土埃を巻き上げ、グランツ王国の精鋭騎士団数十名が草原に到着した。
彼らの目的はただ一つ。数日前にこの死地に廃棄された『土魔法の少年』を捜索し、王城へ連れ戻すことだ。
「チッ、死体でも残っていれば御の字だがな。……ん? おい、あそこを見ろ。なんだあの奇妙な建物は?」
騎士団長が馬上で目を細め、指を差した。
荒涼とした草原のど真ん中に、不自然なほど真っ白で、直線的な立方体の建造物がポツンと建っている。窓には氷のように透き通った板がはめ込まれ、その裏手には不気味なほど青々とした畑が広がっていた。
「魔物の巣でしょうか? いや、人の気配がします!」
「構わん、囲め! もしあのハズレ枠のガキが隠れているなら、引きずり出してでも連行するぞ!」
騎士たちは馬から降り、白亜の建造物――レンが土魔法で錬成した『鉄筋コンクリートのマイホーム』を取り囲んだ。
「おい! 中にいるのは分かっている! 王命により貴様を保護しに来た! さっさと扉を開けろ!」
騎士団長が玄関らしき重厚な扉をガンガンと叩くが、返事はない。
「……チッ、反抗的だな。おい、窓を割って中に入れ! 脅しに火魔法も撃ち込んでやれ!」
団長の命令を受け、数人の騎士が剣を引き抜き、透明な窓ガラスへと全力で斬りかかった。
中世の薄いガラスしか知らない彼らにとって、それは容易く粉砕できる標的のはずだった。
ガキィィィィィンッ!!!
「「「……は?」」」
草原に、甲高い金属の破断音が響き渡った。
騎士たちの手から衝撃で剣が弾け飛び、刀身が根元からポッキリと折れて宙を舞う。
「な、なんだこれは!? 剣が……王城の鍛冶師が打った業物が、ただの透明な板に弾き返されただと!?」
「傷一つついていません! 壁の方も駄目です、石でも鉄でもない異常に硬い材質で、刃が立ちません!」
彼らが斬りつけたのは、レンが砂のケイ素から生成した『防弾仕様の強化ガラス』と、外壁に施された『ファインセラミックスのコーティング』だ。中世レベルのナマクラ剣など、何百回叩きつけようが傷一つ付くはずがない。
「ええい、どけ! 私が魔法で焼き払ってくれる!」
部隊の後方にいた火魔法使いの副団長が前に進み出た。
彼は杖を掲げ、強力な爆炎の魔法【ファイヤーボール】を白い壁に向けて放った。
ドゴォォォォン!!
凄まじい爆発と黒煙が建物を包み込む。
「ふん、やりすぎたか? まあ、少し火傷を負わせた方が大人しく――」
副団長が勝ち誇った笑みを浮かべた、次の瞬間。
煙が晴れたそこには、煤一つ付いていない真っ白な壁が、悠然とそびえ立っていた。
「なっ……馬鹿な!? 私の全力の火魔法が、完全に無効化されたというのか!?」
副団長は膝から崩れ落ちた。
レンが壁の内部に組み込んだ『断熱材』とセラミック装甲は、数千度の熱すら完全に遮断する。彼らにとっての絶対的な魔法は、このマイホームの前ではただの「ぬるい温風」でしかなかった。
◆ ◆ ◆
その頃、家の中では。
「ふぁ〜あ。よく寝た」
俺はふかふかのベッドの上で、気持ちよく伸びをした。
「おはようございます、レン様。朝食の準備ができておりますよ」
エプロン姿のクレアが、キッチンから極上の匂いを漂わせて微笑んでいる。
「お、今日のスープも美味そうだな。……ん? なんか外でパラパラ音がしなかったか? 小石でも飛んできたのかな」
「そうですね。でも、このお家は防音性も完璧ですから、外が嵐でも全く気になりませんね」
「違いない。じゃあ、冷めないうちにメシにするか」
俺は外で王国の精鋭騎士団が絶望の淵に立たされていることなど露知らず、クレアの淹れてくれたスープに舌鼓を打っていた。
「……美味い。やっぱり塩の純度と野菜の甘みが最高だ」
「ふふっ、レン様のおかげです」
――外壁を叩き折り、魔法を無効化する『絶対防壁』の要塞。
そこで行われていたのは、世界一平和で、世界一美味しい朝食の風景だった。
お読みいただきありがとうございます!
外では必死に攻撃しているのに、中では優雅に朝食。
この温度差こそが、最強の防壁(鉄筋コンクリート)の証です。
「騎士団ざまぁw」「コンクリート最強!」
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▼次回予告
ついにレンが玄関を開けます。
ボロボロになった騎士団に対し、レンとクレアが言い放った言葉とは……?




