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紛らわしいんだから・・・

掲載日:2026/02/15

短編

 目が合った、瞬間、その視線から目が離せなくなった。

 電車のホーム、彼は反対側。何気なく顔を上げた時、彼も顔を上げた。『あ、目が合ったなぁ』と思った瞬間、彼が柔らかく笑ったように見えた。すぐに電車が来て、見えなくなってしまったから、どんな顔をしていたかは、正直わからない。

 でも、なんだかイケメンで爽やかな笑顔の人だなと思ったのは覚えていた。なんだか良い気分だなぁと思いながら出社した。なんとなく、今日の仕事は調子が良い気がした。

 翌日の同じ時間、同じ場所で電車を待つ。視線が周囲を見回してしまう。探したって、彼が同じ電車に乗る保証はないんだけど、少しだけ前髪を整える。

 無情にも今日は、彼を見つけることはできなかった。

 さらに翌日、今日は会社近くのコンビニに寄った時、彼のような人を見かけた。視線の端でとらえた程度だけど、髪型や服装がなんとなく彼に見えた。慌てて追ったけど、結局見つけられなかった。残念、もしかして会社近いのかな?でも一昨日は反対側に行く電車のホームにいたし・・・。あの駅が最寄りなら、普通に生活していれば、今後も偶然、彼に会うことはできるかもしれない。

 そう思うと、なんだか少しだけ気分が上がる。出社の為の化粧だけど、少しだけ気合も入る。

 普段は長く着まわしている服を着ていくんだけど、最近は普段着よりも少し綺麗めの、クローゼットの奥にしまい込んでいた服を取り出してきた。

 会社に行くと、目ざとい同僚が「今日はおしゃれしてるじゃない」なんて声をかけてきたけど、「そんなんじゃないよ~」と返す。だって本当に、そんなんじゃないもん。ただ、変な格好で彼に会いたくないだけだ。

 しかしあれから、彼に会うことはなく、私のおしゃれな服装も、次第に尻窄んでいく。おしゃれに気を遣うのって、結構大変なんだからね。

 休日に、上下のスウェット姿で近所のスーパーに買い物に行った時、彼とばったり会ってしまった。

「・・・・あ」

「・・・・え?」

 私の声に、彼が振り向いた。がっつり目が合ってしまった。彼の顔が少し困惑したような表情を浮かべていたけど、すぐにあの時の笑顔になった。

「こんにちは」

「こ・・・こんにちは」

 挨拶をしてくれたから、挨拶を返したけど、どうして今日なんだ・・・。上下スウェットのすっぴん状態でしかもがっつり認識される距離感で出会ってしまうなんて・・・。最悪だ。

 何も買わずにスーパーを出て、慌てて家に帰った。買うつもりをしていた酒も、つまみも何もない。くぅぅ・・・踊らされてる気がする・・・。

 翌日、少し綺麗めな服を着て出社の為にホームに立っていると、何故か彼が隣にいた。

「おはようございます」

「え・・・あ、おはようございます」

 まさか彼から声をかけてくれるなんて。今日は少しおしゃれをしてきてよかった。

メイクもばっちりだし、どんと来いよ!

「あの、良かったら、連絡先とか聞いても良いですか?」

「え・・・」

 ま、まさかのナンパ!?朝から大胆ね!

「あ、え・・・」

 言葉にならない声をぽつぽつとつぶやきながらメッセージアプリの連絡先を交換した。連絡先ゲット!

「あぁ、良かった、ずっと聞こうと思ってて」

 え、何々?私に気があるの?まさか私にも春が来た!?

「○○さんですよね、□□課の」

「・・・・え、なんで」

 話を聞くと、彼も別の部署だが、同じ会社で働いているそうだ。気づいていなかったのは私だけの様で、彼はずっと以前から私を知っていたらしい。


——今度の会議の為に連絡とりたかったんだってサ——

ひぃぃん・・・( ; o ; )

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